六章 宇宙体の成り立ち
第六章【宇宙体の成り立ち】
rsir uvâca
iti tâsâm sva-daktînâm
satînâm asametya sah
prasupta-loka-tantrânâm
nisâmya gatim îsvarah
6-1
マイトレーヤは述べられり
「主から生まれし神々(十柱の守護神)が 主の御力を如何様に
用いるべきか解らずに 困惑したる有り様を
ご覧になりし至上主は 宇宙創造進捗めんと
斯くのごとくに為されたり
kâla-sanjnâm tadâ devîm
bibhrac-chaktim urukramah
trayovimsati tattvânâm
ganam yugapad âvisat
6-2
最も強き御力(シャクティ)を 具えられたる至上主は
〔時〕の女神を伴いて 創造原理二十三(マハト・タットヴァ=大、
アハンカーラ=個我、マナス=心、タンマートラ=五種の微細体、
五大元素=五種の粗雑体、インドリヤ=五種の知覚器官と五種の行為器官)
それらに介入なされたり
so 'nupravisto bhagavâms
cestârûpena tam ganam
bhinnam samyojayâm âsa
suptam karma prabodhayan
6-3
御自らのシャクティで 主がその中に入らると
離散していた諸原素が まるで目覚めし者のごと
生き生きとして活動し 見事に順列したるなり
67
六章 宇宙体の成り立ち
prabuddha-karmâ daivena
trayovimsatiko ganah
prerito 'janayat svâbhir
mâtrâbhir adhipûrusam
6-4
斯くのごとくに目覚めたる 二十三個の諸要素は
主のシャクティに促され 個々の自分を組み合わせ
御主の御意思そのままに 大なる宇宙 創りたり
parena visatâ svasmin
mâtrayâ visva-srg-ganah
cuksobhânyonyam âsâdya
yasmin lokâs carâcarâh
6-5
物質宇宙創造の 役割を持つ諸要素は
介入されし主によりて 相互に変異 変容し
動かざるもの動くもの これらの世界 創りたり
hiranmayah sa purusah
sahasra-parivatsarân
ânda-kosa uvâsâpsu
sarva-sattvopabrmhitah
6-6
斯くの如くに物質を 創造されし至上主の
輝く黄金の宇宙卵 原初の水に囲まれて
一千年(神の時間)の長き間を 御主はそこに座しませり
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六章 宇宙体の成り立ち
sa vai visva-srjâm garbho
deva-karmâtma-saktimân
vibabhâjâtmanâtmânam
ekadhâ dasadhâ tridhâ
6-7
活力の基 至上主は 御自身の持つシャクティを
宇宙創始の諸原素に 自ら分配なされたり
そしてジーヴァ(アディヤートマ=個我)と守護の神(アディダイヴァ=十柱神)
インドリヤ持つ肉体(アディブータ)を 創りて顕現なされたり
esa hy asesa-sattvânâm
âtmâmsah paramâtmanah
âdyo 'vatâro yatrâsau
bhûta-grâmo vibhâvyate
6-8
これらすべては至上主の 本質であり部分にて
根本原主クリシュナが 最初に生みし化身なり
而して主の創造は 尽きることなく連綿と
物質界に具現され すべてを示現(救済)されるらん
sâdhyâtmah sâdhidaivas ca
sâdhibhûta iti tridhâ
virât prâno dasa-vidha
ekadhâ hrdayena ca
6-9
アディヤートマ(個我=ジーヴァ) アディダイヴァ(守護神)
アディブータ(個我の器=肉体)の三様に まず主は体を分けられて
五種のプラーナ(生命力) 五種の鞘(パンチャコーシャ)
純なマナス(インドリヤの司令塔)を創られり
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六章 宇宙体の成り立ち
smaran visva-srjâm îso
vijnâpitam adhoksajah
virâjam atapat svena
tejasaisâm vivrttaye
6-10
されども御主の御力を 知覚し得ない神々(アディダイヴァ=十柱神)の
切なる願い(職務遂行の手段)聞き入れて 彼等に理解させなんと
主は御自身の輝きで 巨大な宇宙 照らし出し
そを神々に見せられり
atha tasyâbhitaptasya
katidhâyatanâni ha
nirabhidyanta devânâm
tâni me gadatah srnu
6-11
さて至上主が神々に 照らしてお見せなされたる
主 御自身の宇宙から 如何に多くを分割し
如何に具象化されたかを これより吾が語るゆえ
ヴィドゥラよ とくと お聞きあれ
tasyâgnir âsyam nirbhinnam
loka-pâlo 'visat padam
vâcâ svâmsena vaktavyam
yayâsau pratipadyate
6-12
普遍相なる主の口は 声を発する源で
火神アグニ(ヴァフニ=十柱の守護神・2-5-30参照)の出生地(2-6-1参照)
主のお口から分けられし アグニは体(肉体)に入りこみ
個我(ジーヴァ)が言葉を出す為の 〔発声〕行為(行為器官)為し遂げり
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六章 宇宙体の成り立ち
nirbhinnam tâlu varuno
loka-pâlo 'visad dhareh
jihvayâmsena ca rasam
yayâsau pratipadyate
6-13
宇宙を統べる聖ハリの 口蓋を分け 生まれたる
十柱神のその一つ 舌と口蓋(上顎)護る神
ヴァルナが内(感覚器官)に入り込みて
ジーヴァに〔味覚〕与えたり
nirbhinne asvinau nâse
visnor âvisatâm padam
ghrânenâmsena gandhasya
pratipattir yato bhavet
6-14
内よりプラーナ 噴出し 生まれし御主の鼻孔より
分割されし一部分 アシュヴィンなる双神は
五大元素の〔風〕に乗り 感覚器官〔鼻〕に入り
ジーヴァに嗅覚与えたり
nirbhinne aksinî tvastâ
loka-pâlo 'visad vibhoh
caksusâmsena rûpânâm
pratipattir yato bhavet
6-15
全能の主に戴きし 二つの〔眼〕〔視覚〕とを
支配する神トヴァシュター(太陽神・2-1-30参照)
感覚器官(肉体) ジーヴァ(個我)とを 結びて機能させるべし
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六章 宇宙体の成り立ち
nirbhinnâny asya carmâni
loka-pâlo 'nilo 'visat
prânenâmsena samsparsam
yenâsau pratipadyate
6-16
純性意識サットヴァから 生みだされたる十柱の
神の一なるヴァーユ神(風) 巨大な御主の身体から
〔皮膚〕を分ちて与えられ 感覚器官に入りたり
斯くて〔触覚〕生まれ出で 個我と肉体繋ぐべし(3-5-33参照)
karnâv asya vinirbhinnau
dhisnyam svam vivisur disah
srotrenâmsena sabdasya
siddhim yena prapadyate
6-17
主の体にある一対の 〔耳〕の機能を分けられし
ディグデーヴァター方位神 音聞く知覚〔聴覚〕を
持ちて内へと入られて 個我と肉体 繋ぐなり
tvacam asya vinirbhinnâm
vivisur dhisnyam osadhîh
amsena romabhih kandûm
yair asau pratipadyate
6-18
主のお体を被覆する もう一つある役割りは
薬草のごと生い茂る 体毛による痒みどめ(乾燥を防いで)
主の体毛を分けられし 個体を守る守護神は
その役割を遂げるため 直ちに内に入るべし
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六章 宇宙体の成り立ち
medhram tasya vinirbhinnam
sva-dhisnyam ka upâvisat
retasâmsena yenâsâv
ânandam pratipadyate
6-19
主の男根を分けられし 十柱の一 カー神(造物主の一人)は
“生の連鎖”の〔生殖〕を 行為器官に移したり
斯くてジーヴァは生殖の 目途(目的)と喜悦与えらる
gudam pumso vinirbhinnam
mitro lokesa âvisat
pâyunâmsena yenâsau
visargam pratipadyate
6-20
主の体にある肛門を 分与されたるミトラ神
行為器官に入られて 〔排泄〕機能 与えらる
斯くてジーヴァは胎内の 浄化の術を得たるなり
hastâv asya vinirbhinnâv
indrah svar-patir âvisat
vârtayâmsena puruso
yayâ vrttim prapadyate
6-21
行為する両手の一部分 宇宙の主より戴きし
十柱の神インドラは 生きるが為に必要な
物を掴んで〔操作〕する 行為器官に入られり
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六章 宇宙体の成り立ち
pâdâv asya vinirbhinnau
lokeso visnur âvisat
gatyâ svâmsena puruso
yayâ prâpyam prapadyate
6-22
偉大な御主の身体より 二本の足を分割けられし
ウペーンドラ1.なる十柱神(2-5-30参照) 行為器官に入られり
斯くて個体は〔移動〕する 足の機能を得らるべし
注 |
1. |
ウペーンドラ…インドラの弟という位置づけで十柱神になられたヴィシュヌ。 |
buddhim câsya vinirbhinnâm
vâg-îso dhisnyam âvisat
bodhenâmsena boddhavyam
pratipattir yato bhavet
6-23
原初の御主は己が身の 真と非真の識別知(ブッディ)
宇宙創造任せたる ブラフマー神に分けられり
ブラフマー神そを持ちて 個体のなかに入られり
そして内部の組織体 アンターカラナ生ずべし
hrdayatm câsya nirbhinnam
candramâ dhisnyam âvisat
manasâmsena yenâsau
vikriyâm pratipadyate
6-24
宇宙を統べる至上主は 己がフリダヤ分割けられり
そを戴きし月の神 マナスに入りて感情と
情緒と意思(インドリヤの司令塔として)を与えたり
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六章 宇宙体の成り立ち
âtmânam câsya nirbhinnam
abhimâno 'visat padam
karmanâmsena yenâsau
kartavyam pratipadyate
6-25
主は多様化を意図されて アハンカーラ(個別性)を創られり
而してそを分割し ルドラの神(ルドラは自分を33に分けた)に与えらる
ルドラによりて分けられし 個我(ジーヴァ)は器(肉体)を与えられ
己が務めを果たすべし
sattvam câsya vinirbhinnam
mahân dhisnyam upâvisat
cittenâmsena yenâsau
vijnânam pratipadyate
6-26
主は御自身の本質(絶対意識チット)を
マハータットヴァ支配する ヴィシュヌに分与なされたり
マハーヴィシュヌはそのチッタ(意識と記憶に分けたもの)
アンターカラナ(内部機能チッタ・アハンカーラ・ブッディ・マナス)となされたり
sîrsno 'sya dyaur dharâ padbhyâm
kham nâbher udapadyata
gunânâm vrttayo yesu
pratîyante surâdayah
6-27
斯く創られし宇宙卵 その頭頂は天界で
足の辺りは地上界 臍に空界 生じたり
三つのグナの開展で 創りだされし神々や
他の生類が住まうなり
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六章 宇宙体の成り立ち
âtyantikena sattvena
divam devâh prapedire
dharâm rajah-svabhâvena
panayo ye ca tân anu
6-28
至純(サットヴァ)に充ちし神々は 天上界に住まうなり
そしてラジャス(激性)の性を持つ 人間や他の生類は
地上世界に住まうなり
târtîyena svabhâvena
bhagavan-nâbhim âsritâh
ubhayor antaram vyoma
ye rudra-pârsadâm gunâh
6-29
天 空 地なる三界の 中ほどにある空界は
宇宙の御主の臍あたり
ルドラ(シヴァ神の前身)の神の眷族が
その空界に住まうべし
mukhato 'vartata brahma
purusasya kurûdvaha
yas tûnmukhatvâd varnânâm
mukhyo 'bhûd brâhmano guruh
6-30
クル(王朝)の誉れのヴィドゥラよ 宇宙の御主の口からは
ヴェーダ聖智とそしてまた ブラーフマナが生まれたり
而して彼等バラモンは ヴァルナ(階級制度)のうちで最上の
位を占めてグルとなり 人々の師と崇めらる
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六章 宇宙体の成り立ち
bâhubhyo 'vartata ksatram
ksatriyas tad anuvratah
yo jâtas trâyate varnân
paurusah kantaka-ksatât
6-31
宇宙の御主の腕から 保護の力が発生し
その職責を果たすため 第二種族(クシャトリヤ)が生まれたり
彼等は御主を代行し すべての人等 護るなり
viso 'vartanta tasyorvor
loka-vrttikarîr vibhoh
vaisyas tad-udbhavo vârtâm
nrnâm yah samavartayat
6-32
全能の主の腿からは 世俗における人々の
暮らしの知恵が発生す
それを活用するために 第三種族(ヴァイシャ)生まれ出で
生きる糧(衣食住)の生産や 配分などを商いぬ
padbhyâm bhagavato jajne
susrûsâ dharma-siddhaye
tasyâm jâtah purâ sûdro
yad-vrttyâ tusyate harih
6-33
そして御主の御足から ダルマに添いて生きる為
奉仕の行為なさんとの 意欲が発生したるなり
この職責を遂行し 世の生業とするために
シュードラ種族(第四階級)出現し 御主は大いに喜ばる
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六章 宇宙体の成り立ち
ete varnâh sva-dharmena
yajanti sva-gurum harim
sraddhayâtma-visuddhy-artham
yaj-jâtâh sana vrttibhih
6-34
斯くのごとくに人々は 御主を崇拝することと
己が属するカースト(ヴァルナ)の 義務に専注することで
自分自身を浄化する 目的を持ち 生まるなり
etat ksattar bhagavato
daiva-karmâtma-rûpinah
kah sraddadhyâd upâkartum
yogamâyâ-balodayam
6-35
おおヴィドゥラよ至上主の 〔最高我〕たる本質を
マーヤーによる御力で 顕現されし宇宙体
その玄妙な理を 誰が悉く知り得よう
如何な手立てを用いても そを成す者は居らぬなり
tathâpi kîrtayâmy anga
yathâ-mati yathâ-srutam
kîrtim hareh svâm sat-kartum
giram anyâbhidhâsatîm
6-36
然れどもおおヴィドゥラよ
実にも不遜と知りながら 偉大な御主の栄光を
《斯くの如くに聴きたり》と 《斯くの如くに理解りたり》と
心を純に保ちつつ 吾は御身に語ろうぞ
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六章 宇宙体の成り立ち
ekânta-lâbham vacaso nu pumsâm
susloka-mauler guna-vâdam âhuh
srutes ca vidvadbhir upâkrtâyâm
kathâ-dudhâyâm upasamprayogam
6-37
人が言葉を持つ上で 唯一果報を得る術は
最高者なる至上主の その栄光を謳うこと
人が聴道持つ上の 最も高き果報とは
“主の物語 聴くこと”と 著名な智者は述べにけり
âtmano 'vasito vatsa
mahimâ kavinâdinâ
samvatsara-sahasrânte
dhiya yoga-vipakkayâ
6-38
主の愛し子よ ヴィドゥラよ
宇宙原初に生まれらる ブラフマー神がその昔
一千年の長き時間 主を瞑想し 沈思せど
その栄光の全貌を ついに洞察 叶わざり
ato bhagavato mâyâ
mâyinâm api mohinî
yat svayam câtma-vartmâtmâ
na veda kim utâpare
6-39
主が操らるマーヤーは 主の真実を包みこみ
〔真〕を〔非真〕と惑わせて 〔非真〕を〔真〕と惑わせる
原初神なるブラフマーが 知り得ぬほどの秘奥の秘
如何に手立てを尽くそうと 他の何者が知り得るや
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