八章 パリークシットの懇願
第八章【パリークシットの懇願】
râjovâca
brahmanâ codito brahman
gunakhyane 'gunasya ca
yasmai yasmai yathâ prâha
nârado deva-dars'anah
8-1
国王は斯く訊ねたり
「聖なる尊師シュカ仙よ ブラフマー神に斯くのごと
(「この神譚を説き明かせ」2-7-52参照)
命じられたるナーラダ仙
グナを持たざる至上主の この〔神譚〕を如何様に
如何なる人に説かれしや なにとぞ教えたまえかし
etad veditum icchâmi
tattvam tattva-vidâm vara
harer adbhuta-vîryasya
kathâ loka-sumangalâh
8-2
真理よく知るリシ達の なかで最も優れたる
全知の御師シュカ仙に 吾は教えを請うるなり
稀有なる力 秘匿せる 〔聖クリシュナの神譚〕が
この世に住まう人々に 幸もたらすは必定ゆえ
kathayasva mahâbhâga
yathâham akhilâtmani
krishne nives'ya nihsangam
manas tyakshye kalevaram
8-3
祝福されし聖仙よ 何卒教え給えかし
肉の身捨てるその刹那(瞬間)
俗への欲を厭離した 己が心を如何様に
至高の御主クリシュナに 入れるべきかを説き給え
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八章 パリークシットの懇願
s'rinvatah s'raddhayâ nityam
grinatas' ca sva-ceshthitam
kâlena nâtidîrghena
bhagavân vis'ate hridi
8-4
この〔神譚〕を聴聞し 朝な夕なに絶え間なく
御主を慕いて朗誦する 信仰深き者たちに
主は愛憐を垂れたまい
さして遠くはなき〔時〕に そのフリダヤ(胸奥)で語られん
pravishthah karna-randhrena
svânâm bhâva-saroruham
dhunoti s'amalam krishnah
salilasya yathâ s'arat
8-5
聴道(耳のなかを通る道)通り入られし クリシュナ神が帰依者らの
心の奥に咲く蓮(フリダヤ)の 御座に鎮まり賜れば
あたかも秋の長雨が 溜池の水 澄ますごと
バクタの穢れ 浄まらん
dhautâtmâ purushah krishna-
pâda-mûlam na mun'cati
mukta-sama-parikles'ah
pânthah sva-s'aranam yathâ
8-6
斯くのごとくに至上主に すべての穢れ 浄められ
清らになりし帰依者らは
恰も流浪の旅路から 帰り着きたる旅人が
再び家を出ぬ如く
御主の蓮華の御足を 放棄することあり得なし
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八章 パリークシットの懇願
yad adhâtu-mato brahman
dehârambho 'sya dhâtubhih
yadricchayâ hetunâ vâ
bhavanto jânate yathâ
8-7
ああバラモンよ霊魂(ジーヴァ)は 三要素(三グナ=肉体)とは無関係
この無縁なる肉の身に 個我(ジーヴァ)は宿りて住まうなり
そは偶然の成り行きや? はたまた起因(原因) 在りたるや?
御身ら優れし聖仙は とくと御承知なさるらん
âsîd yad-udarât padmam
loka-samsthana-lakshanam
yâvân ayam vai purusha
iyattâvayavaih prithak
tâvân asâv iti proktah
samsthâvayavavân iva
8-8
世界を示す象徴(蓮花)を 臍に持たるる至上主は
実に壮大な御姿なり
主は御自身の本質の 部分によりて各々を 創造せりと語られて
まさしく四肢や外観を 見まがう如く顕わさる
ajah srijati bhûtâni
bhûtâtmâ yad-anugrahât
dadris'e yena tad-rûpam
nâbhi-padma-samudbhavah
8-9
生きとし生ける者ら皆 創造されしブラフマーは
主の臍に咲く蓮華から 生まれ出でたる神なりき
それら宇宙の造形は すべて御主の意図であり
指示なされたる至上主の 恩寵による成果なり
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八章 パリークシットの懇願
sa câpi yatra purusho
vis'va-sthity-udbhavâpyayah
muktvâtma-mâyâm mâyes'ah
s'ete sarva-guhâs'ayah
8-10
マーヤーの主 至上主は
すべてのものの内奥に 宿り給える御方なり
そして御身体のマーヤーを
用いて宇宙創造し 維持し破壊をなさる方
而してのち至上主は 何処に横臥なされるや?
purushâvayavair lokâh
sapâlâh pûrva-kalpitâh
lokair amushyâvayavâh
sa-pâlair iti s'us'ruma
8-11
多種多様なるこの界は 主の御身体の小部分
根原主なる至上主が すべて調えられしもの
その微片なる人々の 心中深きフリダヤに
照覧者なる至上主が お住み給うと聞き及ぶ
yâvân kalpo vikalpo vâ
yathâ kâlo 'numîyate
bhûta-bhavya-bhavac-chabda
âyur-mânam ca yat satah
8-12
創造されしこの宇宙 やがて破壊にいたるまで
如何なる経緯 たどるのか
過ぎゆく〔時〕のその長さ 如何様にして測るのか
過去や未来や現在と 表現されるその〔時〕に
生きとし生ける者達は 如何なる目途 持つべきか
何卒お説き給えかし
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八章 パリークシットの懇願
kâlasyânugatir yâ tu
lakshyate 'nvî brihaty api
yâvatyah karma-gatayo
yâdris'ir dvija-sattama
8-13
ああ最高のバラモンよ 請い願わくば説き給え
短く されど長大な 〔時〕の流れに支配さる
この世に生きる人々は そを如何様に感知して
多種な行為の香菓(結果)による 運命を如何に拓くかを!
yasmin karma-samâvâyo
yathâ yenopagrihyate
gunânâm guninâm caiva
parinâmam abhîpsatâm
8-14
行為の香菓(結果)の蓄積は 人世を生きる者達に
如何な運命を与うのか
三種のグナが均衡す 徳ある者の生き方に
如何な運命を与うのか
何卒教え賜れと 伏して懇願たてまつる
bhû-pâtâla-kakub-vyoma-
graha-nakshatra-bhûbhritâm
sarit-samudra-dvîpânâm
sambhavas' caitad-okasâm
8-15
パーターラ(一番下の地下世界)とか この地球
四つの方位 天空や
惑星 星座 山や河 大海原や 浮かぶ島
そこに住みたる人々や 生きとし生けるものは皆
如何に出現したりしや おお聖仙よ説き給え
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八章 パリークシットの懇願
pramânam anda-kos'asya
bâhyâbhyantara-bhedatah
mahatâm cânucaritam
varnâs'rama-vinis'cayah
8-16
この大いなる宇宙卵
その外側と内側は 如何ほど広きものなるや
そして偉大な人々の 成し遂げられし事績とは
その基礎をなすヴァルナ(四姓)とは アーシュラマなる住期とは
如何なるものか説き給え
yugâni yuga-mânam ca
dharmo yas' ca yuge yuge
avatârânucaritam
yad âsc'aryatamam hareh
8-17
ユガ期に於けるその長さ そしてユガ期のそれぞれに
与えられたるダルマ(義務、法則)とは
そしてこの世に化身され 種々の行為をなされたる
驚嘆すべき聖ハリの
事績のすべて語られよ
nrinâm sâdhârano dharmah
savis'eshas' ca yâdris'ah
s'renînâm râjarshînâm ca
dharmah kricchreshu jîvatâm
8-18
人等すべてに課せられし 共通したるダルマとは
特殊な役(宗教家などの)に就く者の 特徴的なダルマとは
そして王族出身の 聖賢(王仙)たちのダルマとは
さらに苦境に居る者の 遂げねばならぬダルマとは
何卒教えたまえかし
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八章 パリークシットの懇願
tattvânâm parisankhyânam
lakshanam hetu-lakshanam
purushârâdhana-vidhir
yogasyâdhyâtmikasya ca
8-19
おお優れたる聖仙よ 因果を超える法則や
根原主なる至上主の 慈悲を賜る方途など
真理につきてそのすべて 漏らさず教えたまえかし
yoges'varais'varya-gatir
linga-bhangas tu yoginâm
vedopaveda-dharmânâm
itihâsa-purânayoh
8-20
ヨーガに卓る達人の 拠り所とは何なるや
ヨーガ行者の微細身(タンマ-トラ) 如何に消滅させるのか
そしてヴェーダとその補遺の ダルマ 法典 イティハーサ(叙事詩)
プラーナ(古譚) などに属したる 第五ヴェーダを説き給え
samplavah sarva-bhûtânâm
vikramah pratisankramah
ishthâ-pûrtasya kâmyânâm
tri-vargasya ca yo vidhih
8-21
ああ聖仙よ説き給え
御主への帰依 深めたる 創造されし生類は
三つのグナの束縛を 如何な手順で解きほぐし
眠る御主の胎内に 如何ようにして溶けしかを
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八章 パリークシットの懇願
yo vânus'âyinâm sargah
pâshandasya ca sambhavah
âtmano bandha-mokshau ca
vyavasthânam sva-rûpatah
8-22
眠り給える主の胎に 融解したる霊魂(ジーヴァ)を
蘇生させたる至上主が
更には外道(悪魔族) 異教徒を 生み出されしは何故ぞ
個我の束縛 解放し 本来の姿を悟らせる
主の御こころを説き給え
yathâtma-tantro bhagavân
vikrîdaty âtma-mâyayâ
visrijya vâ yathâ mâyâm
udâste sâkshivad vibhuh
8-23
全能にして孤高なる 根本原主 クリシュナは
己がマーヤー紡ぎだし 戯れせんとなされしか
そのマーヤーを役立てて 物質界を創始され
その胸奥(フリダヤ)に留まりて 何を照覧なされるや
sarvam etac ca bhagavan
pricchato me 'nupûrvas'ah
tattvato 'rhasy udâhartum
prapannâya mahâ-mune
8-24
おお偉大なる聖仙よ 叡智求めしこの吾の
すべての問いに答えあれ
吾が訊ねる事柄を 真理に添いて正確に
詳しく語り賜れと 伏して懇願たてまつる
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八章 パリークシットの懇願
atra pramânam hi bhavân
parameshthhî yathâtma-bhûh
apare cânutishthhanti
pûrveshâm pûrva jaih kritam
8-25
偉大な尊師 御身様は
正しき見識 持たれたる ブラフマー神そのままの
最高級のお方なり
なれども他の人達は 過ぎし昔の先哲が
為されし行為そのままを 踏襲をするばかりなり
na me 'savah parâyanti
brahmann anas'anâd amî
pibato 'cyuta-pîyûsam
tad-vâkyâbdhi-vinihsritam
8-26
聖知に充ちるバラモンの 理知の海から溢れ出る
主の〔神譚〕のアムリタを しとどに浴びることならば
食を絶ちたる衰弱で 生気の絶えることはなし」
sûta uvâca
sa upâmantrito râjn'â
kathâyâm iti sat-pateh
brahmarâto bhris'am prîto
vishnurâtena samsadi
8-27
≪聖仙スータ語られる≫
集いのなかで斯くのごと 主の〔神譚〕の聴聞を
パリークシット国王(ヴィシュヌラータ)に
懇願されし聖シュカ(ブラフマラータ)は
一方ならず喜びて その懇望を受けられり
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八章 パリークシットの懇願
prâha bhâgavatam nâma
purânam brahma-sammitam
brahmane bhagavat-proktam
brahma-kalpa upâgate
8-28
ブラフマ カルパ(創造の最初のカルパ)の始りに
主はブラフマーの胸奥(フリダヤ)で
〔ヴェーダ〕と共にその補遺の 〔バーガヴァタ プラーナ〕教えらる
聖仙シュカはその真理 請われし儘に国王(パリークシット)に
つぶさに語り始めらる
yad yat parîkshid rishabhah
pândûnâm anupricchati
ânupûrvyena tat sarvam
âkyâtum upacakrame
8-29
パリークシット国王は
誉れも高きパーンドゥの 子孫のなかの最高者
聖仙シュカは国王の 訊ねし事のそのすべて
順序を追いて懇切に 真摯に語り始めらる
第八章 終了
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