三巻 四章 シュカ 真髄しんずいを語り始める
第四章【シュカ 真髄しんずいを語り始める】
4-1
sûta uvâca
vaiyâsaker iti vacas
tattva-nis'cayam âtmanah
upadhârya matim krishne
auttareyah satîm vyadhât
《聖仙スータ語られる》
ヴィヤーサの息 シュカにより 根原主なるクリシュナの
しん 聴きしことにより それらをすべて理解した
ウッタラー妃の息子むすこなる パリークシット国王は
純粋にして敬虔けいけんな 心を御主みすに捧げたり
4-2
âtma jâyâ-sutâgâra-
pas'u-dravina-bandhushu
râjye câvikale nityam
virûdhâm mamatâm jahau
自分自身の肉体や 妻や 息子や 宮殿や
牛や 財産 親族や そして見事な王国に
いだきし強き執着を 王はただちに放棄ほうきせり
4-3・4
 papraccha cemam evârtham
yan mâm pricchatha sattamâh
krishnânu bhâva-s'ravane
s'raddadhâno mahâ-manâh

  samsthâm vijn'âya sannyasya
karma trai-vargikam ca yat
vâsudeve bhagavati
âtma-bhâvam dridham gatah
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  三巻 四章 シュカ 真髄しんずいを語り始める
おお最高のリシたちよ 
至上しじょう御主みすの栄光を 聴きて信仰 深めたる 
偉大なこんの国王は 末期まつごの〔時〕が迫りしを 
知るやたちま今生こんじょうの ダルマ アルタにカーマなど 
それに関する諸成果しょせいかを すべて放擲ほうてきしたるなり
ヴァースデーヴァ クリシュナに 自己を強固に確立し 
御身おみらがわれたずねたる まさしくおな事柄ことがらを 
シュカに向かいて問いしなり
4-5
râjovâca
samîcînam vaco brahman
sarva jn'asya tavânagha
tamo vis'îryate mahyam
hareh kathayatah kathâm
国王はく申したり 「おおシュカ仙よ 御身様おみさま
すべてを熟知じゅくちされたまい まこと無垢むくなるおかたなり
故に御師おんしが語られる 言葉はすべて真理なり
しかして〔クリシュナ神譚しんたん〕を 語りたまえる御身様の
言霊ことだまによりこの吾の タマスの闇は消え去りぬ
4-6
bhûya eva vivitsâmi
bhagavân âtma-mâyayâ
yathedam srijate vis'vam
durvibhâvyam adhîs'varaih
至上しじょう御主おんしゅクリシュナは おのがマーヤーもちいられ
如何様いかようにしてこの宇宙 創造なされたまいしや
最高位なる神々も がたからん この秘事ひじ
 吾は御師おんし(シュカ仙)に聴きたしと ただひたすらにうるなり
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4-7
yathâ gopâyati vibhur
yathâ samyacchate punah
yâm yâm s'aktim upâs'ritya
puru-s'aktih parah pumân
âtmânam krîdayan krîdan
karoti vikaroti ca
斯くのごとくにマーヤーで 創造されしこの宇宙
主は一切いっさい遍在へんざいし 厚く保護して維持される
全能の神クリシュナは 御自おんみずからのシャクティ(力)
ゲームの如く楽しまれ 創りしものを破壊さる
4-8
nûnam bhagavato brahman
harer adbhuta-karmanah
durvibhâvyam ivâbhâti
kavibhis' câpi ceshthitam
尊敬すべきバラモンよ 斯くの如くに未曾有みぞうなる
聖クリシュナの御事績ごじせきは まこと理解ががた
聖者賢者であろうとも  がたきことならん
4-9
yathâ gunâms tu prakriter
yugapat kramas'o 'pi vâ-
bibharti bhûris'as tv ekah
kurvan karmâni janmabhih
唯一者ゆいいっしゃなるクリシュナは
おの微片びへんの化身(ジーヴァ)らを 数多あまた 降臨させる為
プラクリティの三グナを 如何様いかようにして開展かいてん
ジーヴァのうつわ 肉の身を 順次じゅんじ お創りなされしや
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4-10
vicikitsitam etan me
bravîtu bhagavân yathâ
s'âbde brahmani nishnâtah
parasmims' ca bhavân khalu
古典こてんヴェーダに精通せいつうす 尊敬すべき有徳者うとくしゃ
卓越たくえつしたる聖知せいち持つ たぐいまれなる御身様おみさま
吾が持ちたる難問なんもんを なにとぞおきあれかしと
伏して懇願こんがんたてまつる」
4-11
sûta uvâca
ity upâmantrito râjn'â
gunânukathane hareh
hrisîkes'am anusmritya
prativaktum pracakrame
  《聖仙スータ語られる》
パリークシット国王に 斯くわれたる聖シュカは
ハリが創らる三グナに かかわる自然法則しぜんほうそく
聖クリシュナをしのびつつ 記憶せしまま正確に
次のごとくに語られり
4-12
s'rî-s'uka uvâca
namah parasmai purushâya bhûyase
sad-udbhava-sthâna-nirodha-lîlayâ
grihîta-s'akti-tritayâya dehinâm
antarbhavâyânupalakshya-vartmane
えあるシュカは申されり】
宇宙創造 維持なされ そを破壊する経緯いきさつ
三つのグナのシャクティで 具象ぐしょうの界を創られて
その内奥ないおうに宿られる 理解しがた御事績ごじせき
根本原主クリシュナに  帰命頂礼きみょうちょうらいたてまつる
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4-13
bhûyo namah sad-vrijina-cchide 'satâm
asambhavâyâkhila-sattva-mûrtaye
pumsâm punah pâramahamsya âs'rame
vyavasthitânâm anumrigya-dâs'ushe
有徳うとくの者の苦を除き 邪悪じゃあくな者を破滅させ
パラマハンサ(最高級の苦行者)境域きょういきに 自己を確立せし者に
人のうらやむ徳 与え この世にじゅんをもたらさる
根本原主クリシュナに 再び礼を捧ぐなり
4-14
namo namas te 'stv rishabhâya sâtvatâm
vidûra-kâshthhâya muhuh kuyoginâm
nirasta-sâmyâtis'ayena râdhasâ
sva-dhâmani brahmani ramsyate namah
すぐれたる帰依者には 恩寵与え愛さるも
悪事働く行者ぎょうじゃには まみゆることも許されぬ
超越界に住みたまう 根本原主クリシュナを
心底しんてい深く崇敬すうけいし 更に重ねて拝すなり
4-15
yat-kîrtanam yat-smaranam yad-îkshanam
yad-vandanam yac-chravanam yad-arhanam
lokasya sadyo vidhunoti kalmasham
tasmai subhadra-s'ravase namo namah
御主おんしゅ一意いちい 憶念おくねんし 御名みなあがめて称名しょうみょう
真理しんり 聴聞ちょうもん おこたらず 御主おんしゅ 讃えてうたうなば
人はたちまち清まりて 罪やけがれが除かれる
栄光に満ち吉兆の 根本原主クリシュナに 
再度重ねて拝礼はいれい
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4-16
vicakshanâ yac-caranopasâdanât
sangam vyudasyobhayato 'ntar-âtmanah
vindanti hi brahma-gatim gata-klamâs
tasmai subhadra-s'ravase namo namah
現世げんせ来世らいせ 二世ふたせへの 執着すべて放擲ほうてき
御主みすの蓮華の御足おみあしに 心を置きし賢者らは
ブラフマンなる境域きょういきに 容易よういに到達できるなり
斯くも得難えがたき至上主に 伏して礼拝たてまつる
4-17
tapasvino dâna-parâ yas'asvino
manasvino mantra-vidah sumangalâh
kshemam na vindanti vinâ yad-arpanam
tasmai subhadra-s'ravase namo namah
苦行くぎょうする者 慈善者じぜんしゃら 著名ちょめいなる者 博識者はくしきしゃ
聖語せいご(マントラ)知る者 多福者たぶくしゃら 如何なる者であろうとも
主の御足おみあしに帰依せねば 真の平安 ち取れず
ああ偉大なる至上主よ 再び礼をたてまつ
4-18
kirâta-hûnândhra-pulinda-pulkas'â
âbhîra-s'umbhâ yavanâh khasâdayah
ye 'nye ca pâpâ yad-apâs'rayâs'rayâh
s'udhyanti tasmai prabhavishnave namah
キラータ フーナ アーンドラ プリンダ プルカサ 
アービーラ シュンバ ヤヴァナやカサなどの 
邪悪な種族 悪党も
庇護ひごを求めて頼るなば 御主おんしゅは罪を清めらる
ああ慈悲深き至上主に 帰命頂礼きみょうちょうらい奉る
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4-19
sa esha âtmâtmavatâm adhîs'varas
trayîmayo dharmamayas tapomayah
gata-vyalîkair aja-s'ankarâdibhir
vitarkya-lingo bhagavân prasîdatâm
至上の御主クリシュナは 宇宙開闢うちゅうかいびゃくされしとき
ブラフマー神 シヴァ神に 最高の任 与えらる
 スリーヴェーダの権化ごんげにて ダルマを具現ぐげんされたもう
自己に満ちたるその御主みす
<なにとぞ恩寵めぐみ賜れ>と 畏怖いふ崇敬すうけい捧ぐなり
4-20
s'riyah patir yajn'a-patih prajâ-patir
dhiyâm patir loka-patir dharâ-patih
patir gatis' cândhaka-vrishni-sâtvatâm
prasîdatâm me bhagavân satâm patih
光輝こうき御主おんしゅ 供儀くぎの主は 全生類ぜんしょうるいぬしなりき
英知の御主おんしゅ 世界の主 大地のぬしであらせられ
 アンダカ ヴリシュニ サートヴァタ それら部族の守護者なり
有徳の者が幾重いくえにも 崇敬すうけい捧ぐクリシュナに
<なにとぞ吾に恩寵を たまわれかし>と祈るなり
4-21
yad-anghry-abhidhyâna-samâdhi-dhautayâ
dhiyânupas'yanti hi tattvam âtmanah
vadanti caitat kavayo yathâ-rucam
sa me mukundo bhagavân prasîdatâm
  主の御足おみあしに集中し 深く瞑想することで 
  罪科ざいか清めし聖者らは 絶対真理 見極みきわめて 
 最高神を悟りたり
そして彼らはムクンダ(クリシュナ)を  様々さまざまな語で讃美さんびせり
至上の御主おんしゅクリシュナに <何卒なにとぞ吾に恩寵を 賜れかし>と祈るなり
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4-22
pracoditâ yena purâ sarasvatî
vitanvatâjasya satîm smritim hridi
sva-lakshanâ prâdurabhût kilâsyatah
sa me rishînâm rishabhah prasîdatâm
   今の宇宙(七劫)はじまりに 普遍ふへん御主おんしゅクリシュナは
   ブラフマー神の胸(フリダヤ)に在る かつてけたる神託しんたく
  よみがえるよううながされ 宇宙再生 明示めいじさる
    根本原主クリシュナに <吾に恩寵賜れ>と 
伏して懇願奉こんがんたてまつる 
2-1 【栄えあるシュカは申されり】参照のこと。
4-23
bhûtair mahadbhir ya imâh puro vibhur
nirmâya s'ete yad amûshu pûrushah
bhunkte gunân shodas'a shodas'âtmakah
so 'lankrishîshtha bhagavân vacâmsi me
全てに満ちる至上主は 三つのグナを組み合わせ
五大元素ら十六の 肉体要素 創られり
しかしてのちに至上主は うちはいりて感官の 実りを全て享受きょうじゅさる
感官のぬしクリシュナ(フリシーケーシャ)よ 吾の発する文言もんごん(言葉)に 
慈愛をおえ賜れと 伏して懇願たてまつ
4-24
namas tasmai bhagavate
vâsudevâya vedhase
papur jn'ânam ayam saumyâ
yan-mukhâmburuhâsavam
蓮華のごときクリシュナの 御口許おくちもとよりしたたれる
至高の英知 アムリタを 飲みしまことの帰依者らは
根原主なる至上主に 帰命頂礼奉きみょうちょうらいたてまつ
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4-25
etad evâtma-bhû râjan
nâradâya vipricchate
veda-garbho 'bhyadhât sâkshâd
yad âha harir âtmanah
パリークシット国王よ これら多くの真髄しんずい
ナーラダ仙がその昔 ブラフマー神に問いしこと
最高主なる聖ハリに ヴェーダ英知をフリダヤで
教えられたるそのままを 彼が伝えしものなりき
第四章 終了
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