s'okena s'ushyad-vadana-
hrit-sarojo hata-prabhah
vibhum tam evânusmaran
nâs'aknot pratibhâshitum
15-2
全能の神 クリシュナに 思いを尽くすアルジュナは
悲哀 苦痛にさいなまれ 蓮華のごとき顔や
心が萎れ干からびて
輝く光り喪失し 兄王からの濃やかな
多岐に亘れる問いかけに 答える術を持たざりき
kricchrena samstabhya s'ucah
pâninâmrijya netrayoh
parokshena samunnaddha-
pranayautkanthhya-kâtarah
15-3
肉眼で見られなきクリシュナに ますます強く愛着し
憧憬 深まるばかりにて 心は千々に乱れたり
過酷な苦痛悲しみで 涙滂沱と流れるを
ようやく抑えアルジュナは 指先でそを拭いたり
十五章 主の捨身とパーンドゥ五兄弟の北帰行
sakhyam maitrîm sauhridam ca
sârathyâdishu samsmaran
nripam agrajam ity âha
bâshpa-gadgadayâ girâ
15-4
戦車の御者を始めとし その友情や慈しみ
親しき畏友クリシュナに 思いが募るアルジュナは
涙で言葉 詰まらせつ ユディシュティラ兄王に
斯くの如くに語りたり
arjuna uvâca
van'cito 'ham mahâ-râja
harinâ bandhu-rûpinâ
yena me 'pahritam tejo
deva-vismâpanam mahat
15-5
アルジュナは斯く申したり
「おお兄王よ聞きたまえ
親族として友として 姿採られしクリシュナに
吾は哀れに捨てられり
神々さえも驚きし
卓越したる吾が武勇 御主と共に消え失せぬ
yasya kshana-viyogena
loko hy apriya-darshanah
ukthena rahito hy esha
mritakah procyate yathâ
15-6
吾が愛慕するクリシュナの 姿失くせし瞬間に
すべての界が色褪せて 廃墟の如くなりにけり
取り残されしこの吾は いわば死体と同じこと
語る言葉も失いぬ
190
十五章 主の捨身とパーンドゥ五兄弟の北帰行
yat-sams'rayâd drupada-geham upâgatânâm
râjn'âm svayamvara-mukhe smara-durmadânâm
tejo hritam khalu mayâbhihatas' ca matsyah
sajjîkritena dhanushâdhigatâ ca krishnâ
15-7
その御方(クリシュナ)の保護により
ドラウパディーの婿選りで ドゥルパダ王の宮殿に
来たれる王侯 王子らの 力を凌ぎ打ち勝てり
吾が張りたる弓と矢で 的の魚が砕け散り
ドラウパディーを娶りたり
yat-sannidhâv aham u khândavam agnaye 'dâm
indram ca sâmara-ganam tarasâ vijitya
labdhâ sabhâ maya-kritâdbhuta-s'ilpa-mâyâ
digbhyo 'haran nripatayo balim adhvare te
15-8
インドラ神に率いらる 神軍団に勝てたのも
カーンダヴァの森林を アグニの神に捧げしも
類なき幻術を仕掛けたる 公会堂(マヤ造営の)が得られしも
そして御身(兄王)に四方から 供儀の御供が届きしも
すべて御主のお陰なり
yat-tejasâ nripa-s'iro-'nghrim ahan makhârtham
âryo 'nujas tava gajâyuta-sattva-vîryah
tenâhritâh pramatha-nâtha-makhâya bhûpâ
yan-mocitâs tad-anayan balim adhvare te
15-9
シヴァの祭儀に布施(ジャラーサンダからの)として
献供される目的で
数多の地から王族が 捕えて連れて来られたり
一万頭の象のごと 力と武勇併せ持つ
御身(兄王)の誇る弟(ビーマ)が 聖クリシュナの力にて
ジャラーサンダを成敗し 許多の捕虜を解放す
自由になりし王たちは 御身(兄王)の供儀に馳せ参じ
献饌をして感謝せり
191
十五章 主の捨身とパーンドゥ五兄弟の北帰行
patnyâs tavâdhimakha-klpta-mahâbhisheka-
s'lâghishthha-câru-kabaram kitavaih sabhâyâm
sprishtham vikîrya padayoh patitâs'ru-mukhyâ
yas tat-striyo 'krita-hates'a-vimukta-kes'âh
15-10
ラージャスーヤの式典で 聖水により清めらる
美しき妃の束髪を 悪漢どもが賭博場で
手荒く掴み冒涜す
ドラウパディーは泣きながら 主の御足にすがりたり
主はその後の戦い(クルクシェートラ)で
彼の妻たちを(夫を殺し)寡婦にして
髪解く呪い(ドラウパディーの呪い)成就さる
yo no jugopa vana etya duranta-kricchrâd
durvâsaso 'ri-racitâd ayutâgra-bhug yah
s'âkânna-s'ishtham upayujya yatas tri-lokîm
triptâm amamsta salile vinimagna-sanghah
15-11
ドゥルヨーダナの示唆により 吾らを困窮させるため
一万人の食う人(弟子)を 率いる聖仙ドゥルヴァーサス
森に到着いたしたり
常に吾らを守護される 主は食卓の器から
残滓(米 野菜の)を見つけ食されり
ゆえに聖者が引き連れし 一万人の弟子たちは
川で沐浴したる間に
三界すべて満たされし 感覚おぼえ満腹す1.
注 |
1. |
三界すべて満たされし感覚おぼえ満腹す… |
|
|
すべてに遍在される主が満腹されたので、主の中に在る三界 |
|
|
のすべてが満たされ、弟子の一人ひとりも満腹感を覚えた。 |
192
十五章 主の捨身とパーンドゥ五兄弟の北帰行
yat-tejasâtha bhagavân yudhi s'ûla-pânir
vismâpitah sagirijo 'stram adân nijam me
anye 'pi câham amunaiva kalevarena
prâpto mahendra-bhavane mahad-âsanârdham
15-12
パールヴァティ(妻)を伴いて 手に矛持たるシヴァ神は
吾の力闘に驚かれ ご自身の持つアストラ(武器)を
自ら与え授けらる
他の神々もまた然り 各種の武器を授けらる
そして吾が身は肉体のまま インドラ神の神殿で
玉座を分かち与えらる
聖クリシュナのご威光で これらの栄えを得たるなり
tatraiva me viharato bhuja-danda-yugmam
gândîva-lakshanam arâti-vadhâya devâh
sendrâh s'ritâ yad-anubhâvitam âjamîdha
tenâham adya mushitah purushena bhûmnâ
15-13
インドラ神の天界で 楽しき余暇を過ごすとき
神々率いインドラが ニヴァータカヴァチャ殺すため
ガーンディーヴァの弓を持ち 主の御力を戴きて
力と武器を併せ持つ 吾を頼りて来られたり
ああそれなるに兄王よ 今 現在のこの吾は
至高の神のクリシュナに 斥けられて無力なり
yad-bândhavah kuru-balâbdhim ananta-pâram
eko rathena tatare 'ham atîrya-sattvam
pratyâhritam bahu dhanam ca mayâ pareshâm
tejâs-padam manimayam ca hritam s'irobhyah
15-14
制覇しがたきカウラヴァの 果てなき海を唯一人
戦車に乗りて渡れしは 親しき従兄弟クリシュナが
強き味方の故なりき 多くの富(ヴィラータ王の牛)を取り戻し
敵から奪りし宝石を 持ち帰りたる事なども
光明の因 クリシュナが 導かれたるおかげなり
193
十五章 主の捨身とパーンドゥ五兄弟の北帰行
yo bhîshma-karna-guru-s'alya-camûshv adabhra-
râjanya-varya-ratha-mandala-manditâsu
agrecaro mama vibho ratha-yûthapânâm
âyur manâmsi ca dris'â saha oja ârcchat
15-15
ビーシュマ カルナ ドローナや シャリア率いる軍団で
武士階級の白眉なる 多くの武士が二輪車で
円陣を組み居並びぬ
おお吾が兄の大王よ わが前に座すクリシュナは(御者として)
戦車の指揮をする者の 寿命と心そしてまた
力と戦意 一瞥で 奪い尽くしてしまわれり
yad-dohshu mâ pranihitam guru-bhîshma-karna-
naptri-trigarta-s'alya-saindhava-bâhlikâdyaih
astrâny amogha-mahimâni nirûpitâni
nopaspris'ur nrihari-dâsam ivâsurâni
15-16
師のドローナやビーシュマや ブーリシュラヴァー
スシャルマー王 カルナ シャリアやバーフリーカ
ジャヤドラタ王 そのほかの
無敵の戦士 王たちが 放つ尖り矢(戦闘用の鋭い矢)飛び来るも
あたかも魔鬼の放つ矢が プラフラーダに触れぬごと
心の中に御主を置く 吾に触れたる矢玉なし
sautye vritah kumatinâtmada îs'varo me
yat-pâda-padmam abhavâya bhajanti bhavyâh
mâm s'rânta-vâham arayo rathino bhuvi-shthham
na prâharan yad-anubhâva-nirasta-cittâh
15-17
蓮華の御足 崇拝す 有徳の者の救済に
自己を与える至上主は 愚かな吾の謬見で
二輪戦車の御者として 選びたるのを赦されり
疲れ果てたる愛馬から 降りて地に立つ吾を見し
敵の戦車に乗る者ら 攻撃しかける者はなし
あの御方の恩寵で 退けられしゆえなりき
194
十五章 主の捨身とパーンドゥ五兄弟の北帰行
narmâny udâra-rucira-smita-s'obhitâni
he pârtha he 'rjuna sakhe kuru-nandaneti
san'jalpitâni nara-deva hridi-spris'âni
smartur luthhanti hridayam mama mâdhavasya
15-18
おお兄王よお聞きあれ
慈愛に溢れ優雅なる 美しき笑み浮かべられ
〈おおプリターの息子よ〉と そして〈アルジュナわが友よ
クル王朝の明輝よ〉と 戯れ言などをいいながら
呼びかけられしクリシュナの 心を魅するそのさまは
想いを馳せるこの吾の 心激しく揺さぶりぬ
s'ayyâsanâthana-vikatthana-bhojanâdishv
aikyâd vayasya ritavân iti vipralabdhah
sakhyuh sakheva pitrivat tanayasya sarvam
sehe mahân mahitayâ kumater agham me
15-19
ベッドで寝たり座ったり 食事をしたり歩いたり
自慢話を語ったり 親しく時をすごすうち
〈おおわが友は君子よ〉と からかうごとく言いたるに
あたかも友が親友の 戯言の類 許すごと
父がわが子の一切を 寛き心で赦すごと
吾の愚かな戯れ言を
咎めようともなさらずに 面白がりて喜ばる
so 'ham nripendra rahitah purushottamena
sakhyâ priyena suhridâ hridayena s'ûnyah
adhvany urukrama-parigraham anga rakshan
gopair asadbhir abaleva vinirjito 'smi
15-20
わが胸奥に住み給い 最愛の友 同胞(同じ種族)の
至高の尊主クリシュナに 取り残されしことにより
おお兄王よ この吾は 抜け殻のごと体たらく
主の奥方を警護して 落ちのびてゆく道程で
襲い掛かりし悪童(牧人)に あたかも弱き女のごとく
無残に敗北したるなり!
195
十五章 主の捨身とパーンドゥ五兄弟の北帰行
tad vai dhanus ta ishavah sa ratho hayâs te
so 'ham rathî nripatayo yata ânamanti
sarvam kshanena tad abhûd asad îs'a-riktam
bhasman hutam kuhaka-râddham ivoptam ûsyâm
15-21
確かに吾が持ちたるは ガーンディーヴァの弓であり
弓につがえるこの征矢や 二輪戦車やこの馬や
すべての王が頭を垂れる 戦車に乗りしこの吾は
前の姿と同じなり
なれど御主を失いし その瞬間にそのすべて
跡形もなく消え失せて あたかも塵に献じたり
偽善の者が供儀したり 不毛の土地に種を蒔く
これらの如く無駄となり その価値すべて失いし
râjams tvayânuprishthânâm
suhridâm nah suhrit-pure
vipra-s'âpa-vimûdhânâm
nighnatâm mushthibhir mithah
vârunîm madirâm pîtvâ
madonmathita-cetasâm
ajânatâm ivânyonyam
catuh-pan'câvas'eshitâh
15-22 ・23
おお兄王よ聞きたまえ
御身によりて尋ねらる 我らの友や親族の
ドワーラカーでの消息を 今 明らかにいたすなり
ああ愚かにもバラモンの 呪いを受けし親族は
酒や棕櫚酒を鯨飲し 理性失い 酔い痴れて
あたかも未見の者のごと 互いに拳で殴り合い
四 五人残し息絶えぬ
196
十五章 主の捨身とパーンドゥ五兄弟の北帰行
prâyenaitad bhagavata
îs'varasya viceshthitam
mitho nighnanti bhûtâni
bhâvayanti ca yan mithah
15-24
この世に生きる人々は 互いに養い世話をする
なれどまた直ぐそのあとで 互いに殺し 殺される
おそらくこれは自在なる 至上の神の御意志にて
引き起こされる所以ならん
jalaukasâm jale yadvan
mahânto 'danty anîyasah
durbalân balino râjan
mahânto balino mithah
evam balishthhair yadubhir
mahadbhir itarân vibhuh
yadûn yadubhir anyonyam
bhû-bhârân san'jahâra ha
15-25 ・26
水中に棲む動物の 大なるものは小を呑み
強なる者は弱を食み 卓越したる強者らは
闘い合いて共に死す
おお兄王よ斯くのごと 他の弱小の王族を
その武力にて滅ぼせる 最も強きヤドゥ族
偉大な強さ持つことで 大地に過重 かけし故
すべての主至上主は ヤドゥとヤドゥお互いに
分別もなく戦わせ すべてを拭い去られたり
des'a-kâlârtha-yuktâni
hrit-tâpopas'amâni ca
haranti smaratas' cittam
govindâbhihitâni me
15-27
聖クリシュナの御言葉は 場所と時間と目的に
適いてまこと相応しく 心の悩み 消え去りぬ
それらのことを想うたび
吾の心はクリシュナに 惹きつけられて把捉さる」
197
十五章 主の捨身とパーンドゥ五兄弟の北帰行
sûta uvâca
evam cintayato jishnoh
krishna-pâda-saroruham
sauhârdenâtigâdhena
s'ântâsîd vimalâ matih
15-28
≪聖仙スータ語られる≫
聖クリシュナの御足を 深き愛にて思ううち
何時とは知らずアルジュナの
心は澄みて平安と 清新な気に満たされり
vâsudevânghry-anudhyâna-
paribrimhita-ramhasâ
bhaktyâ nirmathitâs'esa-
kashâya-dhishano 'rjunah
15-29
蓮華の御足 ひたすらに 想うことにて弥増せる
帰依の心でアルジュナは すべての汚濁 拭われり
gîtam bhagavatâ jn'ânam
yat tat sangrâma-mûrdhani
kâla-karma-tamo-ruddham
punar adhyagamat prabhuh
15-30
戦いの場の前線で 根本原主クリシュナに
説いて聴かさる聖知識(ギーター)
時の経過や世俗での
行為の闇に遮られ そを忘れたるアルジュナは
卓越したる神の詩(ギーター) 今や再び得たるなり
198
十五章 主の捨身とパーンドゥ五兄弟の北帰行
vis'oko brahma-sampattyâ
san'chinna-dvaita-sams'ayah
lîna-prakriti-nairgunyâd
alingatvâd asambhavah
15-31
主との別れの悲しみを 拭い去りたるアルジュナは
ブラフマンとの合一で 密着したる物質の
不徳の要素(三グナ)消え失せて 二元性への幻を
徹底的に断ちきりぬ 斯くして彼の微細身(五唯)
跡形もなく消滅し 輪廻のカルマ 抜け出せり
nis'amya bhagavan-mârgam
samsthâm yadu-kulasya ca
svah-pathâya matim cakre
nibhritâtmâ yudhishthhirah
15-32
主が御国(ヴァイクンタ)へと旅立たれ
そしてヤドゥの終焉の その経緯を聞き知ると
ユディシュティラ大王は 御許への道 辿らんと
不動の自己を確立し 強く決意を固めたり
prithâpy anus'rutya dhanan'jayoditam
nâs'am yadûnâm bhagavad-gatim ca tâm
ekânta-bhaktyâ bhagavaty adhokshaje
nives'itâtmopararâma samsriteh
15-33
母クンティーはアルジュナに ヤドゥ種族の終焉と
主の旅立ちを伝えられ
聖なる化身 クリシュナに 究極の帰依することで
感官己れに溶け込ませ 卑俗の世から脱したり
199
十五章 主の捨身とパーンドゥ五兄弟の北帰行
yayâharad bhuvo bhâram
tâm tanum vijahâv ajah
kantakam kantakeneva
dvayam câpîs'ituh samam
15-34
あたかも棘を抜くときに 棘を用いて抜くごとく
ヤドゥの者ら争わせ 地球の重荷 除かれし
御主にとりてその両者 まったく等しきものなりき
斯くて目的遂げられし 不生の御主クリシュナは
その肉の身を捨てられり
yathâ matsyâdi-rûpâni
dhatte jahyâd yathâ nathah
bhû-bhârah kshapito yena
jahau tac ca kalevaram
15-35
斯くの如くに至上主は マツヤ(魚)その他に化身して
俳優のごと演じられ やがてその身を捨てられる
ゆえに此度もクリシュナは 世界の重荷 除かれて
その肉の身を捨てられり
yadâ mukundo bhagavân imâm mahîm
jahau sva-tanvâ s'ravanîya-sat-kathah
tadâhar evâpratibuddha-cetasâm
abhadra-hetuh kalir anvavartata
15-36
至上の御主クリシュナは 聴聞すべき真正な
価値ある神譚 残されて 自身の肉体捨てられり
まさしくその日その時に いまだ目覚めぬ人々に
災禍もたらすカリの世が ついに到来したるなり
200
十五章 主の捨身とパーンドゥ五兄弟の北帰行
yudhishthhiras tat parisarpanam budhah
pure ca râshthre ca grihe tathâtmani
vibhâvya lobhânrita-jihma-himsanâdy-
adharma-cakram gamanâya paryadhât
15-37
国に於いてもそしてまた 都でもまた自宅でも
更には人の心まで 貪欲や悪 不正直
暴力などのアダルマが 増加してゆく様を見て
カリが活動始めしを 悟りし覚者 大王は
旅立つ準備(この世からの)始めたり
sva-rât pautram vinayinam
âtmanah susamam gunaih
toya-nîvyâh patim bhûmer
abhyashin'cad gajâhvaye
15-38
ユディシュティラ大王は 吾と等しき徳を持ち
慎み深き嫡孫(パリークシット)に
ハスティナープラの都城にて
海に囲まる大陸の 帝王として就かせたり
mathurâyâm tathâ vajram
s'ûrasena-patim tatah
prâjâpatyâm nirûpyeshthim
agnîn apibad îs'varah<
15-39
そしてマトゥラーの都では クリシュナ曾孫ヴァジュラをば
シューラセーナの王として 即位させたるその後に
ユディシュティラ大王は プラジャーパティに火を捧げ
究極地への旅立ちを 自分自身に受け入れり
201
十五章 主の捨身とパーンドゥ五兄弟の北帰行
visrijya tatra tat sarvam
dukûla-valayâdikam
nirmamo nirahankârah
san'chinnâs'esha-bandhanah
15-40
美々しき衣服 腕飾り すべてを城に置き棄てし
ユディシュティラ大王は
利己の意識が消えゆきて この世の絆 断ち切りぬ
vâcam juhâva manasi
tat prâna itare ca tam
mrityâv apânam sotsargam
tam pan'catve hy ajohavît
15-41
死に至るとき大王は
マナスで器官(行為器官と感覚器官)制御して
五大要素に分解し 微細な体に溶け込ませ
アハンカーラに同化さす
tritve hutvâ ca pan'catvam
tac caikatve 'juhon munih
sarvam âtmany ajuhavîd
brahmany âtmânam avyaye
15-42
偉大な賢者 大王は
三体組織1.マヤコサ2.を プラクリティーに融けこませ
それをプルシャに帰入して
不滅の梵(ブラフマン)にジーヴァ(個我)を
永久に融合させるなり
注 |
1. |
三体組織… |
アンターカラナ (チッタ、ブッティ、アハンカーラ) |
|
2. |
マヤコサ… |
パンチャコーサ (アンナマヤコサ、プラーナマヤコサ、 |
|
|
|
マノマヤコサ、ジュニャーナマヤコサ、アーナンダマヤコサ) |
202
十五章 主の捨身とパーンドゥ五兄弟の北帰行
cîra-vâsâ nirâhâro
baddha-vân mukta-mûrdhajah
dars'ayann âtmano rûpam
jadonmatta-pis'âcavat
anavekshamâno niragâd
as'rinvan badhiro yathâ
15-43
襤褸で己が身を纏い 食を断ちたる大王は
あたかも愚者か 瘋癲か はたまた鬼かと紛うほど
髪を乱して黙しまま 何も聞こえぬ者のごと(聾唖者の如く)
己が姿を示しつつ すべてを無視し 立ち去らる(城から)
udîcîm pravives'âs'âm
gata-pûrvâm mahâtmabhih
hridi brahma param dhyâyan
nâvarteta yato gatah
15-44
そしてそれから大王は
最高原理ブラフマン(クリシュナの光輝を)
心の奥に思いつつ 古今の聖者 辿りたる
帰ることなきその道を
北(ヒマラヤ)に向かいて歩きたり
sarve tam anunirjagmur
bhrâtarah krita-nis'cayâh
kalinâdharma-mitrena
drishthvâ sprishthâh prajâ bhuvi
15-45
地上における人々が カリユガによるアダルマ(不正義)に
手を掛けられる(襲われる)さまを見し
ユディシュティラの同胞(兄弟)は
兄に等しき決意をし 後に従い 立ち去りぬ
203
十五章 主の捨身とパーンドゥ五兄弟の北帰行
te sâdhu-krita-sarvârthâ
jn'âtvâtyantikam âtmanah
manasâ dhârayâm âsur
vaikunthha-caranâmbujam
15-46
この世の務め果たしたる パーンダヴァの五兄弟
ヴァイクンタ(最高神の界)にて住みたもう
普遍の御主クリシュナの
蓮華の御足それのみを 心にしかと確立す
tad-dhyânodriktayâ bhaktyâ
vis'uddha-dhishanâh pare
tasmin nârâyana-pade
ekânta-matayo gatim
avâpur duravâpâm te
asadbhir vishayâtmabhih
vidhûta-kalmashâ sthânam
virajenâtmanaiva hi
15-47 ・48
唯一の神に傾注し 心尽くせしバクティで
浄化されたる心域に 到達したる兄弟は
至上の御主 クリシュナの 住み処に向けて出発す
五感に心 奪われし 世俗に生きる者等には
行き着き難きその界は
この世の汚濁拭い去り 清らになりし者のみに
与えらるべき境地なり
viduro 'pi parityajya
prabhâse deham âtmanah
krishnâves'ena tac-cittah
pitribhih sva-kshayam yayau
15-49
アンターカラナ(を)個人我(ジーヴァ)に
溶け込ませたるヴィドゥラは
聖クリシュナに集中し プラバーサにて肉体を棄てて
迎えにきたる祖霊らと 自身の界(ヤマ。冥界)へ帰りたり
204
十五章 主の捨身とパーンドゥ五兄弟の北帰行
draupadî ca tadâjn'âya
patînâm anapekshatâm
vâsudeve bhagavati
hy ekânta-matir âpa tam
15-50
五人の夫 何れもが 妻を顧慮せず旅立つを
ドラウパディーは確認し ヴァースデーヴァ クリシュナに
ただ一筋に集中し ついに秘境(究極の地ヴァイクンタ)に到達す
yah s'raddhayaitad bhagavat-priyânâm
pândoh sutânâm iti samprayânam
s'rinoty alam svastyayanam pavitram
labdhvâ harau bhaktim upaiti siddhim
15-51
斯くのごとくに主を信ず ハリへの深き献身者
パーンドゥ王の息子らが
究極の地へ旅立ちし 祝福に満つ経緯を
心ゆくまで聞く者は
クリシュナ神に愛でられて 穢れがすべて浄化され
成就の域に達すらん