yâvatah kritavân pras'nân
kshattâ kaushâravâgratah
jâtaika-bhaktir govinde
tebhyas' copararâma ha
13-2
マイトレーヤの面前で 多くの問答なすうちに
ヴィドゥラは御主クリシュナに 絶対の帰依培いて
師(マイトレーヤ)の御前から退去せり
tam bandhum âgatam drishthvâ
dharma-putrah sahânujah
dhritarâshthro yuyutsus' ca
sûtah s'âradvatah prithâ
gândhârî draupadî brahman
subhadrâ cottarâ kripî
anyâs ca jâmayah pândor
jn'âtayah sasutâh striyah
13-3 ・4
ああバラモンよ聞きたまえ
久方ぶりに王宮に 帰り来たりし彼(ヴィドゥラ)を見た
親しき縁につながりし ユディシュティラと弟ら
ドリタラーシュトラ サーティヤキ(ユユツ)
十三章 ドリタラーシュトラの開眼
サンジャヤ クリパ クンティー妃
ドラウパディーやガーンダーリー
ウッタラー クリピー スバドラー
その他の者やその妻ら パーンダヴァ家の親戚や
息子を連れし婦人たち
pratyujjagmuh praharshena
prânam tanva ivâgatam
abhisangamya vidhivat
parishvangâbhivâdanaih
13-5
彼の帰宅に歓喜して 気力充ちたる親族は
急ぎヴィドゥラを出迎えり
礼儀正しく近づくと 御足に触れて恭礼し
共に安否を問い合いぬ
mumucuh prema-bâshpaugham
virahautkanthhya-kâtarâh
râjâ tam arhayâm cakre
kritâsana-parigraham
13-6
長き別離の悲しみの 想いの丈を語らいて
ヴィドゥラと共に人々は 愛の涙を流したり
而してのち大王は ヴィドゥラのために設えし
上席 勧め懇ろに 尊敬の礼捧げたり
tam bhuktavantam vis'rântam
âsînam sukham âsane
pras'rayâvanato râjâ
prâha teshâm ca s'rinvatâm
13-7
供応されし食を摂り 心地よき座で寛がる
ヴィドゥラを見たる大王は 恭敬の意を現わしつ
並み居る者の面前で 斯くのごとくに語りかく
159
十三章 ドリタラーシュトラの開眼
yudhishthhira uvâca
api smaratha no yusmat-
paksha-cchâyâ-samedhitân
vipad-ganâd vishâgnyâder
mocitâ yat samâtrikâh
13-8
ユディシュティラは語りたり
「御身は記憶されたるや 迫る邪悪な魔の手から
庇いて厚く保護されし 御身の御手で育ちたる
この吾たちの生い立ちを?
毒の投与や放火など 降りかかりくる危難から
母と吾らが救わるは 御身の愛に他ならず
kayâ vrittyâ vartitam vas'
caradbhih kshiti-mandalam
tîrthâni kshetra-mukhyâni
sevitânîha bhûtale
13-9
一帯の土地あちこちを
遊歴されし叔父上 (ヴィドゥラは父パーンドゥ王の弟) は
如何なる国の聖地にて 根本原主クリシュナを
崇めて奉仕為されしや
如何なる術で献身を 為し遂げてそを保たるや
bhavad-vidhâ bhâgavatâs
tîrtha-bhûtâh svayam vibho
tîrthî-kurvanti tîrthâni
svântah-sthena gadâbhritâ
13-10
ああ偉大なる奉仕者よ
胸裡におわす主によりて 清められたる叔父上は
巡礼されしあちこちを 神聖な地に浄化さる
160
十三章 ドリタラーシュトラの開眼
api nah suhridas tâta
bândhavâh krishna-devatâh
drishthâh s'rutâ vâ yadavah
sva-puryâm sukham âsate
13-11
恩愛深き叔父上よ 聖クリシュナを神として
帰依する友や親族や ドワーラカー城に住む人を
見たり はたまた噂など 見聞なされしことありや
ヤーダヴァ族の皆様は 楽しき日々をお過しや」
ity ukto dharma-râjena
sarvam tat samavarnayat
yathânubhûtam kramas'o
vinâ yadu-kula-kshayam
13-12
斯くのごとくに大王に 訊ねられたる聖ヴィドゥラ
体験したるそのすべて 順序を追いて語りたり
なれどヤドゥ家一族の 滅亡したるその様を
語らうことは省きたり
nanv apriyam durvishaham
nrinâm svayam upasthitam
nâvedayat sakaruno
duhkhitân drashthum akshamah
13-13
親族達の嘆く様 見るに耐えぬと思われし
ヴィドゥラはそれを語らざり
受け入れ難く耐え難き 苦痛伴うその事実
やがて何時かは人々の 口の端に乗り伝わると…
161
十三章 ドリタラーシュトラの開眼
kan'cit kâlam athâvâtsît
sat-krito devavat sukham
bhrâtur jyeshthhasya s'reyas-krit
sarveshâm sukham âvahan
13-14
ハスティナープラの宮殿で 神のごとくに崇められ
彼(ヴィドゥラ)は快き時過ごされて 暫し逗留なされたり
時がすぎゆくその間に
兄(ドリタラーシュトラ)にとりての吉兆(解脱)が
すべての者の安寧を 齎すように導かる
abibhrad aryamâ dandam
yathâvad agha-kârishu
yâvad dadhâra s'ûdratvam
s'âpâd varsha-s'atam yamah
13-15
ヴィドゥラはヤマの化身にて 百年ほどの長き間を
呪いによりてシュードラの 肉の身纏い過ごされり
その長き間をアリヤマン(アディティの第二子)
ヤマに代わりて適切に 罪の処罰を代行す
yudhishthhiro labdha-râjyo
drishthvâ pautram kulan-dharam
bhrâtribhir loka-pâlâbhair
mumude parayâ s'riyâ
13-16
ユディシュティラ大王は 父の王国取り戻し
家系を繋ぐ王孫(パリークシット)を しかとその眼で見届けり
世界を守護す神のごと 兄弟たちの補佐により
栄誉と富と幸運で わが世の春を謳歌せり
162
十三章 ドリタラーシュトラの開眼
evam griheshu saktânâm
pramattânâm tad-îhayâ
atyakrâmad avijn'âtah
kâlah parama-dustarah
13-17
斯くするうちに王達は 家庭に溺れ愛着し
栄華の夢に酔い痴れて 本来の自己(ジーヴァ)忘れ去る
うかうかと日を過ごすうち 〔時〕は流れてひと時も
同じに留まる事はなく 人知れぬ間に通り過ぐ
viduras tad abhipretya
dhritarâshthram abhâshata
râjan nirgamyatâm s'îghram
pas'yedam bhayam âgatam
13-18
それをよく知る聖ヴィドゥラ 兄に向いて告げにけり
「ああ兄上よご覧あれ 恐れし〔時〕が来たるなり
〈慣れ親しみしこの土地を 出発つべき刻が来たれり〉と
告げる兆しが見ゆるなり!
pratikriyâ na yasyeha
kutas'cit karhicit prabho
sa esha bhagavân kâlah
sarveshâm nah samâgatah
13-19
おお偉大なる至上主よ 永遠の〔時〕統べるのは
全能の主に他ならず これに対抗する術を
如何なる者も持たぬゆえ この世のどこに居ようとも
すべての〔時〕は容赦なく 我らの上に訪れる
163
十三章 ドリタラーシュトラの開眼
yena caivâbhipanno 'yam
prânaih priyatamair api
janah sadyo viyujyeta
kim utânyair dhanâdibhih
13-20
而して〔時〕来たるなば この世に生きる人間は
命でさえもそしてまた 最愛の妻 子でさえも
況や富やその他の 日常のもの悉く
即座にすべて奪われる
pitri-bhrâtri-suhrit-putrâ
hatâs te vigatam vayam
âtmâ ca jarayâ grastah
para-geham upâsase
13-21
我らが愛す父や子や 兄弟や友そしてまた
有志 親族 息子らは 戦乱により殺されり
そして兄者の肉体は 老衰により蝕まれ
他者の住居に留まりて ただ漫然と生きるのみ
andhah puraiva vadhiro
manda-prajn'âs' ca sâmpratam
vis'îrna-danto mandâgnih
sarâgah kapham udvahan
13-22
生まれながらの盲人が すでに聾者となられたり
今や歯までが弱くなり 胃は消化すら儘ならず
赤く染まりし痰を吐き そして才知は鈍りたり
164
十三章 ドリタラーシュトラの開眼
aho mahîyasî jantor
jîvitâs'â yathâ bhavân
bhîmâpavarjitam pindam
âdatte griha-pâlavat
13-23
ああ生類のなんとまあ 生きんがための欲望が
強きことよと驚きぬ
兄者は正にそのために ビーマが与う食料を
飼い犬のごと受け取りぬ
agnir nisrishtho dattas' ca
garo dârâs' ca dûshitâh
hritam kshetram dhanam yeshâm
tad-dattair asubhih kiyat
13-24
住処に放火されたうえ 毒を盛られしパーンドゥは
妻は世人の面前で 酷き侮辱を受けにけり
そして領地や財産を 強奪せしはそも誰ぞ?
《あなたの息子たちですよ》
そのパーンドゥの情けにて 生命長らえ生きること
如何なる価値が御座ろうや!
tasyâpi tava deho 'yam
kripanasya jijîvishoh
paraity anicchato jîrno
jarayâ vâsasî iva
13-25
ああそれなるに兄上は その肉の身が愛しくて
生きなんとする欲望の なんと憐れに強きこと
願わぬことであろうとも 歳を重ねることにより
襤褸のごとく潮垂れて やがて死すこと必定なり
165
十三章 ドリタラーシュトラの開眼
gata-svârtham imam deham
virakto mukta-bandhanah
avijn'âta-gatir jahyât
sa vai dhîra udâhritah
13-26
世俗の縁を解き放ち あらゆるものを捨て去りて
知られざる地に一人行き 無用になりし肉の身を
執着をせず脱ぎ捨てて 顧みもせぬ彼の人は
昔も今も変わりなく“思慮ある者”と呼ばるなり
yah svakât parato veha
jâta-nirveda âtmavân
hridi kritvâ harim gehât
pravrajet sa narottamah
13-27
自分自身で達観し 或いは他から聴かされて
世事を超脱したる者 心にハリをしかと置き
家から出て唯ひとり 遊行の果て(終着地)に向かう者
そは“最高の知者”なりと 世の称賛を浴びるなり
athodîcîm dis'am yâtu
svair ajn'âta-gatir bhavân
ito 'rvâk prâyas'ah kâlah
pumsâm guna-vikarshanah
13-28
ゆえに御身は唯一人 身内に秘めて密かに
北(ヒマラヤ)に向かいて発たるべし これから先の時代では
恐らくこれら有徳を すべて喪失するならん」
evam râjâ vidurenânujena
prajn'â-cakshur bodhita âjamîdhah
chittvâ sveshu sneha-pâs'ân dradhimno
nis'cakrâma bhrâtri-sandars'itâdhvâ
13-29
斯くの如くに弟の ヴィドゥラによりて諭されし
ドリタラーシュトラ前王は ついに心眼開きたり
身内に持ちし愛着を 強き覚悟で断ち切ると
弟ヴィドゥラに導かれ 北の国へと出立す
166
十三章 ドリタラーシュトラの開眼
patim prayântam subalasya putrî
pati-vratâ cânujagâma sâdhvî
himâlayam nyasta-danda-praharsham
manasvinâm iva sat samprahârah
13-30
夫の盲に殉じると 誓いを立てて嫁ぎたる
貞婦の鑑ガーンダーリー 夫の遊行に従いて
ヒマラヤ山に向かいたり 世俗の絆切り捨てし
正しき智慧のある者は 〔真の歓喜〕を得らるべし
ajâta-s'atruh krita-maitro hutâgnir
viprân natvâ tila-go-bhûmi-rukmaih
griham pravishtho guru-vandanâya
na câpas'yat pitarau saubalîm ca
13-31
ユディシュティラ大王は 目覚めてすぐに朝行の
祭火を捧げ献供し 次いで胡麻 牛 土地 金で
ブラーフマナ(バラモン)を表敬し
次いで長への挨拶に その住まいへと向かいたり
なれど何処を捜せども 二人のおじ(伯父と叔父)と伯母君を
ついに見ること叶わざり
tatra san'jayam âsinam
papracchodvigna-mânasah
gâvalgane kva nas tâto
vriddho hînas' ca netrayoh
13-32
不安に駆られ大王は そこに座したるサンジャヤに
斯くの如くに訊ねたり
「ガーヴァルガニ息サンジャヤよ 年老い 更に盲目の
吾らが伯父の前王は 何処にお出なされしや
167
十三章 ドリタラーシュトラの開眼
ambâ ca hata-putrârtâ
pitrivyah kva gatah suhrit
api mayy akrita-prajn'e
hata-bandhuh sa bhâryayâ
âs'amsamânah s'amalam
gangâyâm duhkhito 'patat
13-33
そして常々息子らが 死せるを嘆き悲しみし
伯母は何処に居られるや
常に我らを庇われし 叔父のヴィドゥラは何処くんぞ
愚かな吾の仕打ちにて 親族をみな殺されし
幸い薄き伯父 伯母は 傷の深さを示めさんと
ガンジス河に己が身を 自ら投じたまいしや
pitary uparate pândau
sarvân nah suhridah s'is'ûn
arakshatâm vyasanatah
pitrivyau kva gatâv itah
13-34
父パーンドゥに死別せし 幼き子供吾々に
降りかかりくる危難から すべてを守り下されし
わが親族のおじ(伯父 叔父)たちは
この王宮をあとにして 一体何処に行かれしや」
s'uta uvâca
kripayâ sneha-vaiklavyât
sûto viraha-kars'itah
âtmes'varam acakshâno
na pratyâhâtipîditah
13-35
≪聖仙スータ語られる≫
仕える主を突然に 失いたりしサンジャヤは
あまりに強き愛ゆえに 別離の情にさいなまれ
悲嘆 苦痛に遮られ ひと言たりと話せざり
168
十三章 ドリタラーシュトラの開眼
vimrijyâs'rûni pânibhyâm
vishthabhyâtmânam âtmanâ
ajâta-s'atrum pratyûce
prabhoh pâdâv anusmaran
13-36
気を取り直しサンジャヤは 自己を知性で制御して
両手で涙拭きとると 主人の御足思いつつ
斯くのごとくに大王に 声詰まらせて申し上ぐ
san'jaya uvâca
nâham veda vyavasitam
pitror vah kula-nandana
gândhâryâ vâ mahâ-bâho
mushito 'smi mahâtmabhih
13-37
サンジャヤは斯く申したり 「氏族の誇る大王よ!
王の伯父上 伯母上の 決意をわれは知らざりき
知性に富める人たちに われは翻弄されにけり」
athâjagâma bhagavân
nâradah saha-tumburuh
pratyutthâyâbhivâdyâha
sânujo 'bhyarcayan munim
13-38
そこへ聖なるナーラダが 天の楽人(ガンダルヴァ)伴いて
その場に顕現なされたり
王は弟共々に 即座に立ちて神仙を
礼儀正しく出迎えて 恭敬の礼捧げらる
そののち王は丁重に 神仙に斯く申したり
169
十三章 ドリタラーシュトラの開眼
yudhishthhira uvâca
nâham veda gatim pitror
bhagavan kva gatâv itah
ambâ vâ hata-putrârtâ
kva gatâ ca tapasvinî
13-39
ユディシュティラは申されり
「二人のおじの行き先を われは知る事叶わざり
ここを出たるおじたちは 何処に行かれたまいしや
息子亡くせし悲しみが いまだ癒えざる伯母上は
何処に行かれたまいしや おお神仙よお説きあれ
karnadhâra ivâpâre
bhagavân pâra-dars'akah
athâbabhâshe bhagavân
nârado muni-sattamah
13-40
あたかも舵手が荒海で 巧みに舵をとるごとく
聖なる尊師御身こそ 彼岸1.を示すお方なり」
有徳のムニ(聖仙)の最高者 至福の権化ナーラダは
王の言葉を聞きたまい 斯くのごとくに語られり
注 |
1. |
彼岸… |
(梵)pâramitâ(波羅蜜多)の訳語。 |
nârada uvâca
mâ kan'cana s'uco râjan
yad îs'vara-vas'am jagat
lokâh sapâlâ yasyeme
vahanti balim îs'ituh
sa samyunakti bhûtâni
sa eva viyunakti ca
13-41
ナーラダ仙は申されり
「ユディシュティラ大王よ 誰のことをも嘆くまじ
この世はすべて至上主の ご意思によりて支配さる
主が恩寵を与えられ 人類はみな至上主に
供物を運び奉献す 全能なりし支配者は
生き物たちを結びつけ 御業によりて断ち切らる
170
十三章 ドリタラーシュトラの開眼
tasmâj jahy anga vaiklavyam
ajn'âna-kritam âtmanah
katham tv anâthâh kripanâ
varterams te ca mâm vinâ
13-45
《彼ら(伯父 伯母)は吾を離れては
生きる術なき身の上》と 寄る辺無き身を憐れみし
混乱したる大王よ! そなたは自己の作りたる
無明の情 放棄せよ!
kâla-karma-gunâdhîno
deho 'yam pân'ca-bhautikah
katham anyâms tu gopâyet
sarpa-grasto yathâ param
13-46
人が大蛇に飲みこまれ 嚥み下されしその時に
如何でか(どうして)
他人を救えよう
その真実と同様に 五大元素で成り立ちて
〔時〕と〔カルマ(行為)〕と〔トリグナ(三つの要素)〕に
支配されたる肉体に 他を守る術あり得るや
ahastâni sahastânâm
apadâni catush-padâm
phalgûni tatra mahatâm
jîvo jîvasya jîvanam
13-47
手の無きもの(爬虫類など)は 有るものの
足無きもの(植物など)は有足の 小さきものは大物の
食糧となり食されて 他の生物を生かすなり
斯くのごとくにこの世では
神の摂理(自然の法則)が連綿と 生きる要素を繋ぐなり
172
十三章 ドリタラーシュトラの開眼
tad idam bhagavân râjann
eka âtmâtmanâm sva-drik
antaro 'nantaro bhâti
pas'ya tam mâyayorudhâ
13-48
斯くのごとくにああ王よ すべてのものは御主なり
内(フリダヤ)にありては永久に
〔見る者(パラマートマ)〕として輝かれ
その分身のジーヴァの 個我の姿は〔見らる者〕
なれど姿は異なるも パラマートマもジーヴァも
唯一至高の御主なり マーヤーによる作用にて
多様な姿顕さる 御主をとくと認知せよ!
so 'yam adya mahârâja
bhagavân bhûta-bhâvanah
kâla-rûpo 'vatîrno 'syâm
abhâvâya sura-dvishâm
13-49
おお大王よ聞きたまえ 至高の御主クリシュナが
全生物に安寧を もたらすために意図なされ
意思に逆う人々の 無法を排除するために
〔時の三相〕駆使なされ この地に降臨なされたり
nishpâditam deva-krityam
avas'esham pratîkshate
tâvad yûyam avekshadhvam
bhaved yâvad ihes'varah
13-50
すでに化身の目的を 果たし終えたるクリシュナは
最後に残る総仕上げ 静かに見守りたまいけり
そして御主が現世に 居られる限りそなた等は
住みたる土地に留まりて 〔時〕の至るを待たるべし
173
十三章 ドリタラーシュトラの開眼
dhritarâshthrah saha bhrâtrâ
gândhâryâ ca sva-bhâryayâ
dakshinena himavata
rishînâm âs'ramam gatah
13-51
ドリタラーシュトラ ガーンダーリー(妻)
弟ヴィドゥラ連れ立ちて ヒマラヤ山の南方で
聖者のために結ばれし 苦行林(庵)へと向かいたり
srotobhih saptabhir yâ vai
svardhunî saptadhâ vyadhât
saptânâm prîtaye nânâ
sapta-srotah pracakshate
13-52
その源を天界の 御足に持ちしガンガーが
七聖者への愛のため 己れ自身を七に分け
七つの川の流れにて それぞれ清め与えらる
ゆえに聖なるこの場所を “サプタ スロータス”と称すなり
snâtvânusavanam tasmin
hutvâ câgnîn yathâ-vidhi
ab-bhaksha upas'ântâtmâ
sa âste vigataishanah
13-53
ドリタラーシュトラ日に三度 “サプタ スロータス”で沐浴し
規則に添いて丁重に 祭火を捧げ献供し
すべての欲望 捨て去りて ただ水だけを口にして
〔寂静の時〕 過ごし居り
jitâsano jita-s'vâsah
pratyâhrita-shad-indriyah
hari-bhâvanayâ dhvasta-
rajah-sattva-tamo-malah
13-54
座る姿勢と呼吸法 修得したる前王は
六つの感官1.内に引き ハリを瞑想することで
ラジャス サットヴァ タマスなる 三つの煩悩滅ぼせり
174
十三章 ドリタラーシュトラの開眼
vijn'ânâtmani samyojya
Kshetrajn'e pravilâpya tam
brahmany âtmânam âdhâre
ghatâmbaram ivâmbare
13-55
自己のマナスをブッディに 傾注したる前王は
それをジーヴァに帰入して
空の花瓶に満つ空が あたかも天に溶けるごと
すべての基礎にある梵に 己がジーヴァを溶け込ます
dhvasta-mâyâ-gunodarko
niruddha-karanâs'ayah
nivartitâkhilâhâra
âste sthânur ivâcalah
tasyântarâo maivâhûh
sannyastâkhila-karmanah
13-56
食のすべてを放棄して マナスと感覚制御せし
ドリタラーシュトラ前王は
すべての因果 脱却し マーヤーによるトリグナの
影響すべて断ち切りて 揺るがぬ柱さながらに
不動の相で座りたり ゆえにそなたは彼の者の
祈願の邪魔をすることを 決してしてはならぬなり
sa vâ adyatanâd râjan
paratah pan'came 'hani
kalevaram hâsyati svam
tac ca bhasmî-bhavishyati
13-57
おお大王よ前王は 今日から後の五日目に
自分自身が己が身を 自ら捨てることになり
脱ぎ捨てられし肉体は 儚く灰となりぬべし
175
十三章 ドリタラーシュトラの開眼
dahyamâne 'gnibhir dehe
patyuh patnî sahothaje
bahih sthitâ patim sâdhvî
tam agnim anu vekshyati
13-58
木の葉造りの庵にて 夫の肉の身燃えあがり
外に佇む彼の妻の 貞婦の鑑ガーンダーリー
夫に従い燃える火に 自ら入りて死するらん
viduras tu tad âs'caryam
nis'âmya kuru-nandana
harsha-s'oka-yutas tasmâd
gantâ tîrtha-nishevakah
13-59
ああクル族の後裔よ
その一方で聖ヴィドゥラ 歓喜と悲哀伴いし
驚嘆すべき出来事を しかと見届けその後に
聖地を巡り礼拝し 遊行の旅を続けなん」
ity uktvâthâruhat svargam
nâradah saha-tumburuh
yudhishthhiro vacas tasya
hridi kritvâjahâc chucah
13-60
天の楽士(ガンダルヴァ)がお供せし 偉大な聖者ナーラダは
話し終えると忽ちに 天上界に昇られり
ユディシュティラ大王は ナーラダ仙の教訓を
しかと心に収めると すべての嘆き捨て去りぬ