tasya janma mahâ-buddheh
karmâni ca mahâtmanah
nidhanam ca yathaivâsît
sa pretya gatavân yathâ
12-2
傑出したる智慧の主 偉大な魂のその御子の
恩寵による誕生は いかなる仕儀であられしや
そしてその後その王(パリークシット)は
如何なる偉業なされしや
如何様にして死を迎え 如何なる死後を辿らるや
tad idam s'rotum icchâmo
gaditum yadi manyase
brûhi nah s'raddadhânânâm
yasya jn'ânam adâc chukah
12-3
パリークシット国王が 絶対的な信を置く
聖仙シュカが授けらる 真に正しき神の理を
我らに語り明かされよ 聴きたしと請う我々の
資1.をお認めになるならば 何卒 語りたまわれよ」
十二章 パリークシットの誕生とホロスコープ
sûta uvâca
apîpalad dharma-râjah
pitrivad ran'jayan prajâh
nihsprihah sarva-kâmebhyah
krishna-pâdânusevayâ
12-4
≪聖仙スータ語られる≫
クリシュナ神の御足に たえずご奉仕することで
ユディシュティラ大王は 欲の放棄を為し終えて
実に父のごと愛情で 国民をみな喜ばす
sampadah kratavo lokâ
mahishî bhrâtaro mahî
jambû-dvîpâdhipatyam ca
yas'as' ca tri-divam gatam
12-5
ユディシュティラ大王は よく王国を統轄し
供犠や祭祀を催して 世間の名声得たるなり
ドラウパディーや兄弟は 王に仕えてよく補佐し
ジャンブー ドウィーパ大陸を(印度を含む中央大陸)
傘下に収め君臨す
王を称賛する声は 天界にまで拡がれり
kim te kâmâh sura-spârhâ
mukunda-manaso dvijâh
adhijahur mudam râjn'ah
kshudhitasya yathetare
12-6
おおバラモンよ彼の王は 聖クリシュナに集中し
神々さえも惹き込まる “快楽”を求む意欲なし
飢えし者(俗世の者)とは
異なりて
大王にとり寂静の 法悦1.凌ぐものはなし
注 |
1. |
法悦… |
真理を聴き、それを信じることによって |
|
|
|
心にわき上がる喜び。 |
147
十二章 パリークシットの誕生とホロスコープ
mâtur garbha-gato vîrah
sa tadâ bhrigu-nandana
dadars'a purusham kan'cid
dahyamâno 'stra-tejasâ
12-7
おおシャウナカよ 彼の御子(パリークシット)は
母の子宮のなかにいて
ブラフマーストラ撃ちこまれ 熱で焼かれしその時に
誰かは知らぬ人影を 見たる記憶が有りしとか
angushthha-mâtram amalam
sphurat-purata-maulinam
apîvya-dars'anam s'yâmam
tadid vâsasam acyutam
12-8
輝く王冠 戴きて 青く黒ずむ肌の色
稲妻のごと衣着る 親指ほどの大きさの
神秘的なる御姿を 光りのなかに拝観す
このお方こそ絶対神 聖クリシュナに他ならず
s'rîmad-dîrgha-catur-bâhum
tapta-kân'cana-kundalam
kshatajâksham gadâ-pânim
âtmanah sarvato dis'am
paribhramantam ulkâbhâm
bhrâmayantam gadâm muhuh
12-9
輝く黄金の耳環つけ 赤く充血したる目で
聖なる長き四本の 腕を持たる至上主が
携えられし槌矛を 流星のごと振り回し
胎児のまわり 幾たびも 護るがごとく巡られり
148
十二章 パリークシットの誕生とホロスコープ
astra-tejah sva-gadayâ
nîhâram iva gopatih
vidhamantam sannikarse
paryaiksata ka ity asau
12-10
無敵なる武器 火の玉を 陽光で露 溶かすごと
主はご自身の槌矛で すぐに消滅なされたり
彼(胎児)は辺りを見回して 《傍らに居るこの方は
一体誰であろうか?》と 不審の念を抱きたり
vidhûya tad ameyâtmâ
bhagavân dharma-gub vibhuh
mishato das'amâsasya
tatraivântardadhe harih
12-11
全能の神 そしてまた ダルマ守護する至上主は
死が胎の児を掴みたる まさにその時 顕現し
その光焔を消されたり 十ヶ月目の胎の児を
ハリはちらりとご覧じて 静かにその場立ち去らる
tatah sarva-gunodarke
sânukûla-grahodaye
jajn'e vams'a-dharah pândor
bhûyah pândur ivaujasâ
12-12
やがて時充ち吉兆の 星が黎明 告げるとき
偉大な覇王パーンドゥ1.が あたかも再来せしごとき
パーンダヴァ族の継承者 パリークシットが誕生す
注 |
1. |
偉大な覇王パーンドゥ… |
ユディシュティラ等五兄弟の父。 |
149
十二章 パリークシットの誕生とホロスコープ
tasya prîtamanâ râjâ
viprair dhaumya-kripâdibhih
jâtakam kârayâm âsa
vâcayitvâ ca mangalam
12-13
孫の誕生喜びし ユディシュティラ大王は
パーンダヴァ族の祭祀者(ダウミヤ)や
クリパを始めバラモンに 児の生まれたるその時の
星辰の位置 観測し ホロスコープ(星座表)を依頼せり
そして宴を催して 神への讃歌 朗誦し
吉祥の世を祈願さる
hiranyam gâm mahîm grâmân
hasty-as'vân nripatir varân
prâdât svannam ca viprebhyah
prajâ-tîrthe sa tîrthavit
12-14
正しき則を知る王は 児の生まれたるその時に
金や乳牛そしてまた 土地や村落 穀物や
素晴らしき象 名馬など バラモンたちに寄進さる
tam ûcur brâhmanâs tushthâ
râjânam pras'rayânvitam
esha hy asmin prajâ-tantau
purûnâm pauravarshabha
12-15
大王からの慇懃な 賦与に喜びバラモンは
斯くのごとくに申したり
「パウラヴァ族の長老よ 今生まれたるこの御子は
プル1.の確かな子孫なり
注 |
1. |
プル… |
パウラヴァ族(パーンダヴァ)の始祖。 |
150
十二章 パリークシットの誕生とホロスコープ
daivenâpratighâtena
s'ukle samsthâm upeyushi
râto vo 'nugrahârthâya
vishnunâ prabha-vishnunâ
12-16
児は避け難き運命で 終焉の時 迎えしに
世界の維持者クリシュナの
パーンドゥへの慈悲のため
再び命 授けられ 清き血統 護られり
tasmân nâmnâ vishnu-râta
iti loke bhavishyati
na sandeho mahâ-bhâga
mahâ-bhâgavato mahân
12-17
ゆえにこの児は俗世では
ヴィシュヌ ラータ1.の名で呼ばる
偉大な幸を持つ王よ 疑いも無くこの御子は
聖クリシュナの帰依者とて 遍く界に知れ渡り
卓越したる者として 高き評価を博すべし」
注 |
1. |
ヴィシュヌ ラータ… |
ヴィシュヌによって救われた者。 |
s'rî-râjovâca
apy esha vams'yân râjarshîn
punya-s'lokân mahâtmanah
anuvartitâ svid yas'asâ
sâdhu-vâdena sattamâh
12-18
聖なる王は訊ねらる
「おお有徳なる方々よ 誕生したるこの孫は
わが一門に属したる 名声高き王仙や
偉大な魂と同様に 世の喝采を浴びるほど
高き名声 得られるや」
151
十二章 パリークシットの誕生とホロスコープ
brâhmanâ ûcuh
pârtha prajâvitâ sâksâd
ikshvâkur iva mânavah
brahmanyah satya-sandhas' ca
râmo dâs'arathir yathâ
12-19
バラモンたちは答えたり
「ユディシュティラ大王よ 生誕されしこの御子は
ヴァイヴァスワタ マヌ長男の
イクシュワークのごとくして 自国の民をよく保護し
ダシャラタ王の息子なる ラーマのごとくバラモンに
敬意をはらい誓言し よき大王とならるべし
esha dâtâ s'aranyas' ca
yathâ hy aus'înarah s'ibih
yas'o vitanitâ svânâm
daushyantir iva yajvanâm
12-20
ウシーナラ国シビのごと 帰依する者に寛大で
ドゥシュヤンタなる息(バラタ)のごと 多くの祭祀 行いて
自国の民の尊敬(の念)を 広げし者となりぬべし
dhanvinâm agranîr esha
tulyas' cârjunayor dvayoh
hutâs'a iva durdharshah
samudra iva dustarah
12-21
偉大な射手の長として 両アルジュナ1.に匹敵し
攻めるに難き火のごとく 征覇し難き海のごと
難攻不落 誇るらん
注 |
1. |
両アルジュナ… |
サハスラバーフと、パーンドゥのアルジュナ。 |
152
十二章 パリークシットの誕生とホロスコープ
mrigendra iva vikrânto
nishevyo himavân iva
titikshur vasudhevâsau
sahishnuh pitarâv iva
12-22
獅子のごとくに勇猛で ヒマラヤのごと安息地
大地のごとく寛容で 忍耐強き親のごと
斯様な王となりぬべし
pitâmaha-sâmah sâmye
prasâde giris'opamah
âs'rayah sarva-bhûtânâm
yathâ devo ramâs'rayah
12-23
始祖1.の神なるブラフマー その平等心2.と同一で
恩恵与うシヴァ神と 似たるが如き慈悲深さ
ラマー(ラクシュミー女神)の住み処 クリシュナの
巻き毛3.の如き安らぎは
生きとし生ける者たちの 安寧の場となりぬべし
注 |
1. |
始祖…… |
ある物事を最初に始めた人。ある家系の最初の人。 |
|
2. |
平等心… |
すべての人々を平等にいとおしむ慈悲の心。 |
|
3. |
巻き毛… |
クリシュナの胸にある巻き毛はラクシュミーの |
|
|
|
安息場所といわれている。 |
sarva-sad-guna-mâhâtmye
esha krishnam anuvratah
rantideva ivodâro
yayâtir iva dhârmikah
12-24
大王の孫 この御子は 有徳の性の功徳にて
クリシュナ神に従順で 忠誠尽くす者となり
ランティデーヴァ王のごと 気高く高貴 寛大で
ヤヤーティなる王に似て 法の遵守に努べし
153
十二章 パリークシットの誕生とホロスコープ
dhrityâ bali-samah krishne
prahrâda iva sad-grahah
âhartaisho 's'vamedhânâm
vriddhânâm paryupâsakah
12-25
大王の孫 この御子は バリ王のごと堅実で
プラフラーダが持ちしごと 強固な帰依が培われ
アシュワメーダの供犠行じ
年をとりたる長老を 敬いてよく奉仕せん
râjarshînâm janayitâ
s'âstâ cotpatha-gâminâm
nigrahîtâ kaler esha
bhuvo dharmasya kâranât
12-26
児は王仙の祖師となり 劣悪の世の汚濁から
大地 正義を防護して 非道の者を懲罰し
良き統治者となりぬべし
takshakâd âtmano mrityum
dvija-putropasarjitât
prapatsyata upas'rutya
mukta-sangah padam hareh
12-27
バラモンの子が放ちたる 呪詛によりたる己の死が
ナーガ(蛇)に咬まるその毒で 齎されると知りし時
世俗に持ちし執着が 泡沫のごと消え失せて
ハリの蓮華の御足に 庇護を求めて縋るらん
jijn'âsitâtma-yâthârthyo
muner vyâsa-sutâd asau
hitvedam nripa gangâyâm
yâsyaty addhâkutobhayam
12-28
聖仙シュカに教えらる 最高真理よく学び
ああ大王よ この御子は 世の執着を放擲し
聖ガンジスの河畔にて 不動の境に達すべし」
154
十二章 パリークシットの誕生とホロスコープ
iti râjn'a upâdis'ya
viprâ jâtaka-kovidâh
labdhâpacitayah sarve
pratijagmuh svakân grihân
12-29
占星学の鑑定が 夙に(ずっと前から) 巧みなバラモンは
王に報告なし終えて 多額の奉謝 受け取ると
それぞれ庵に戻りたり
sa esha loke vikhyâtah
parîkshid iti yat prabhuh
pûrvan drishtham anudhyâyan
parîksheta nareshv iha
12-30
この御子こそは巷間で パリークシット(調べる者)と呼ばれたる
その名も高き王なりき
《胎内で見し彼の人は 何処に御座す方なりや》
逢う人ごとを確かめて 捜し続けしそのゆえに
sa râja-putro vavridhe
âs'u s'ukla ivodupah
âpûryamânah pitribhih
kâshthhâbhir iva so 'nvaham
12-31
パリークシット国王は
父系親族たちにより 手厚き保護が与えられ
水の上ゆく軽舟が す速く走る様のごと1.
聖クリシュナの恩寵で 日毎 成長なされたり
注 |
1. |
なんの障害もなく、すくすく成長される健康な男子の比喩。 |
155
十二章 パリークシットの誕生とホロスコープ
yakshyamâno 'svamedhena
jn'âti-droha jihâsayâ
râjâ labdha-dhano dadhyau
nânyatra kara-dandayoh
12-32
ユディシュティラ大王は 縁者に為した殺戮の
罪の償いなさんとて 馬祀祭の行思い立つ
しかるに国の収益は 税と科料の他になく
その財源を沈思せり
tad abhipretam âlakshya
bhrâtaro 'cyuta-coditâh
dhanam prahînam âjahur
udîcyâm dis'i bhûris'ah
12-33
王の意向に気付きたる 兄弟たちは速やかに
聖クリシュナの指示仰ぎ 北方の地に赴きて
放置されたる莫大な 財宝や金 持ち帰り
そを大王に捧げたり
tena sambhrita-sambhâro
dharma-putro yudhishthhirah
vâjimedhais tribhir bhîto
yajn'aih samayajad dharim
12-34
己が犯せし殺戮の 罪を恐れる大王は
贖罪の行為さんとて
得られし富はそのすべて 三度馬供犠に費して
ハリの蓮華の御足に 礼拝ささげ崇敬す
156
十二章 パリークシットの誕生とホロスコープ
âhûto bhagavân râjn'â
yâjayitvâ dvijair nripam
uvâsa katicin mâsân
suhridâm priya-kâmyayâ
12-35
ユディシュティラ大王に 招待(馬祀祭に)されしクリシュナは
バラモンたちに大王を 補佐(馬祀祭の)するように命じらる
聖クリシュナはその後も 友人や知己 親族の
慰労をせんと意図なされ 二 三ヶ月を王宮に
留まる事になされたり
tato râjn'âbhyanujn'âtah
krishnayâ saha-bandhubhih
yayau dvâravatîm brahman
sârjuno yadubhir vritah
12-36
おおバラモンよ 時が過ぎ
聖クリシュナは大王に 出立の許可 得られたり
王や親族 王妃(ドラウパディー)らに 名残惜しげに見送られ
アルジュナ伴にクリシュナは ヤドゥの者に囲まれて
ドワーラカーに旅立たる