二十八章 プランジャナの本当の姿とは?


第二十八章【プランジャナの本当の姿とは?】




nârada uvâca
sainikâ bhaya-nâmno ye
barhisman dista-kârinah
prajvâra-kâla-kanyâbhyâm
vicerur avanîm imâm
28-1





ナーラダ仙は続けらる
〈斯くの如くにバヤ王(ヤヴァナ族の長)に ひきいられたる軍隊は
プラジヴァーラと〔時〕のを 先頭に立て進軍す
プラーチーナバリ大王よ
斯くて彼等は〔死の使者〕と なりて地球を席巻せっけん






ta ekadâ tu rabhasâ
puranjana-purîm nrpa
rurudhur bhauma-bhogâdhyâm
jarat-pannaga-pâlitâm
28-2




在る日或る時軍団は 煩悩ぼんのうの火が燃えさか
老いさらばえし一匹の 蛇に守らる城郭じょうかく(プランジャナの都)
見つけてひそと(ひっそりと)取り囲む





kâla-kanyâpi bubhuje
puranjana-puram balât
yayâbhibhûtah purusah
sadyo nihsâratâm iyât
28-3




プランジャナ城 包囲した 大軍団の兵士等は
怒涛どとうの如く襲撃し 掠奪 暴威 振るいたり
〔時〕の娘もまた然り 都の男子おのこ一斉いっせい
その肉体を支配さる







401

二十八章 プランジャナの本当の姿とは?

  

tayopabhujyamânâm vai
yavanâh sarvato-disam
dvârbhih pravisya subhrsam
prârdayan sakalâm purîm
28-4




カーラのにて支配され せいを抜かれし都には
ヤヴァナ種族の者たちが 各入口を押し破り
都市のすべてを破壊せり






tasyâm prapîdyamânâyâm
abhimânî puranjanah
avâporu-vidhâms tâpân
kutumbî mamatâkulah
28-5




プランジャナ国 帝王は あまりに女性 家族等に
執着強く持ちし故 〔が物〕という意が強く
それ等が嘆き苦しむと 我が身の如く 苦しめり







kanyopagûdho nasta-srîh
krpano visayâtmakah
nasta-prajno hrtaisvaryo
gandharva-yavanair balât
28-6




感覚的な快楽に まことに弱きプランジャナ
〔時〕のむすめに抱かれるや 光輝のすべて失えり
ガンダルヴァやヤヴァナにて その王権をられると
知性や富や識別の 全てが消滅したるなり













402

二十八章 プランジャナの本当の姿とは?



visîrnâm sva-purîm vîksya
pratikûlân anâdrtân
putrân pautrânugâmâtyân
jâyâm ca gata-sauhrdâm
28-7




自分の都 パンチャーラ 見るも無残に壊されて
王の権威を失うと 友や息子や孫達や
大臣はじめ家臣団かしんだん 従僕達に至るまで
すべての者が蔑視べっしして 冷淡なさま みせしなり





âtmânam kanyayâ grastam
pancâlân ari-dûsitân
duranta-cintâm âpanno
na lebhe tat-pratikriyâm
28-8




〔時〕の娘に 抱かれるや 自分のこんを見失い
腑抜ふぬけの如きプランジャナ 悪辣あくらつ非道 強敵に
パンチャーラ国 奪われて 打ち勝ち難き苦しみに
もだえつ尚も 闇の中






kâmân abhilasan dîno
yâta-yâmâms ca kanyayâ
vigatâtma-gati-snehah
putra-dârâms ca lâlayan
28-9




哀れ 惨めなプランジャナ 快楽のみを追い求め
その果てに来た無惨さに 落胆をして気力なく
〔時〕の娘に城郭じょうかくや 息子や 民の信頼を
奪い取られし国王は 己が本質 見失い
失意に心 砕かれり










403

二十八章 プランジャナの本当の姿とは?



gandharva-yavanâkrântâm
kâla-kanyopamarditâm
hâtum pracakrame râjâ
tâm purîm anikâmatah
28-10




失意の底でプランジャナ
ガンダルヴァとヤヴァナ軍 その兵士等の手によりて
そして〔カーラ〕の娘にて 荒廃したる城塞じょうさい
《不本意ながら捨てなん》と ようやく心 定めたり






bhaya-nâmno 'grajo bhrâtâ
prajvârah pratyupasthitah
dadâha tâm purîm krtsnâm
bhrâtuh priya-cikîrsayâ
28-11




かるりしも 突然に
ヤヴァナ族王 バヤの兄 プラジュヴァーラが現れり
プラジュヴァーラはバヤ王の 機嫌取るため 城郭じょうかく
あちらこちらに放火せり






tasyâm sandahyamânâyâm
sapaurah saparicchadah
kautumbikah kutumbinyâ
upâtapyata sânvayah
28-12




都市が猛火もうかに包まると 王と王妃は狼狽し
熱に苦しむ子や孫や 族に類する大勢の
縁ある者や従者達 たみともない 落ち延びぬ












404

二十八章 プランジャナの本当の姿とは?



yavanoparuddhâyatano
grastâyâm kâla-kanyayâ
puryâm prajvâra-samsrstah
pura-pâlo 'nvatapyata
28-13




都市の守護者の老大蛇ろうだいじゃ かつての権威 失いて
〔時〕の娘や王の兄 プラジュヴァーラの猛攻を
防護もできず反撃も 出来ぬおのれを悲しみぬ
更にヤヴァナの兵により 住居すまい壊され 困窮す




na seke so 'vitum tatra
puru-krcch roru-vepathuh
gantum aicchat tato vrksa-
kotarâd iva sânalât
28-14




有能だった蛇のおさ 都を守護し防衛し
多くの敵と戦いて 殊勲しゅくんを挙げし彼なれど
今やそれらが困難と なりたるうえは《む無し》と
燃えあがる樹の空洞うつろから 逃げるが如く飛び出せり




sithilâvayavo yarhi
gandharvair hrta-paurusah
yavanair aribhî râjann
uparuddho ruroda ha
28-15




ああ然れども今やもう ガンダルヴァとの死闘にて
すべて消耗し尽くした たいに力は無くなりて
ヤヴァナの兵に包囲され 為すすべもなく慨嘆がいたん





duhitrh putra-pautrâms ca
jâmi-jâmâtr-pârsadân
svatvâvasistam yat kincid
grha-kosa-pa ricchadam
28-16




都 落ち延びプランジャナ 少し残りし財産や
この一族の行くすえを 案じる思い強まれり




405

二十八章 プランジャナの本当の姿とは?



aham mameti svîkrtya
grhesu kumatir grhî
dadhyau pramadayâ dîno
viprayoga upasthite
28-17




《吾は家長でありながら 妻と愉悦ゆえつに溺れ切り
全ては吾の物なりと 思いし者の謬見びゅうけん
行為の香菓かくが訪れて 妻との別離 近からん!》
斯く思いたるプランジャナ 心は千々ちぢに乱れたり






lokântaram gatavati
mayy anâthâ kutumbinî
vartisyate katham tv esa
bâlakân anusocatî
28-18




われがこの世を去りしなば おっと亡くせしが妻は
如何いかにして日々過ごすらん 父 失いし子供等の
不幸を嘆き 悲しまん ああ妻はこの苦しみを
乗り越えること できようか?






na mayy anâsite bhunkte
nâsnâte snâti mat-parâ
mayi ruste susantrastâ
bhartsite yata-vâg bhayât
28-19




吾に食欲なき時は 妻も食することは無く
吾が沐浴せぬ時は 妻も沐浴さざりき
常に夫に専注し その顔色をうかがいぬ
吾の機嫌が悪きとき 音さえ立てず 気遣いて
吾が大声出すときは 刺激を避けて もだすなり









406

二十八章 プランジャナの本当の姿とは?



prabodhayati mâvijnam
vyusite soka-karsitâ
vartmaitad grha-medhîyam
vîra-sûr api nesyati
28-20




吾が分別ふんべつ無き時は 忠告をして正させる
しかれどもが不在なら 悲しみもだえ 瘦せ細る
斯くのごとくに気弱きよわにて かそけきさまに見ゆれども
英雄たちの母であり この王室の供犠行じ
名声高き一族の たばねとなりてくれるかと…






katham nu dârakâ dînâ
dârakîr vâparâyanâh
vartisyante mayi gate
bhinna-nâva ivodadhau
28-21




されど息子や娘等は 貧しく辛き生活を
余儀なく送る事となり なき身を嘆こうが
頼るべきはすでに亡く 壊れし船で荒海あらうみ
渡るが如きさまならん》






evam krpanayâ buddhyâ
socantam atad-arhanam
grahîtum krta-dhîr enam
bhaya-nâmâbhyapadyata
28-22




斯くの如くにプランジャナ ひどく落ち込み嘆きしが
すべては自己の欲深き 利己心による応報おうほう
未だ気付かぬ蒙昧もうまいを 明かす慈悲にてヤヴァナ王
彼の逮捕を決断し 捕縄ほじょうを持たせ 兵を出す









407

二十八章 プランジャナの本当の姿とは?

  

pasuvad yavanair esa
nîyamânah svakam ksayam
anvadravann anupathâh
socanto bhrsam âturâh
28-23




ヤヴァナの兵に捕えられ 動物のごと縛られて
連行されるプランジャナ その後ろからぞろぞろと
彼の親族 友人や 使用人とか従僕や 家失いし人々が
歎き 悲しみ 泣きながら あとに続いて歩みたり





purîm vihâyopagata
uparuddho bhujangamah
yadâ tam evânu purî
visîrnâ prakrtim gatâ
28-24




ヤヴァナ軍にて阻止されし 老いさらばえしの蛇も
ついに都を立ち退きて あるじのあとを追いしなり
斯くて都城はからとなり やがて自然(プラクリティ)かえりたり




vikrsyamânah prasabham
yavanena balîyasâ
nâvindat tamasâvistah
sakhâyam suhrdam purah
28-25




世に聞こえたる屈強くっきょうな ヤヴァナによりて引きずらる
無明に落ちしプランジャナ 妻や友人 栄光を
思う気力も消え失せて ただ かれゆく憐れさよ




tam yajna-pasavo 'nena
samjnaptâ ye 'dayâlunâ
kuthârais cicchiduh kruddhâh
smaranto 'mîvam asya tat
28-26




辿たどり着きたるその地には 彼の無益な狩りにより
矢で貫かれ殺されし 数多あまたの家畜 動物が
手ぐすね引きて待ちかまえ おので切りつけ懲らしめる




408

二十八章 プランジャナの本当の姿とは?



ananta-pâre tamasi
magno nasta-smrtih samâh
sâsvatîr anubhûyârtim
pramadâ-sanga-dûsitah
28-27




世俗の欲と女性への 濃き愛欲に捉われて
無明におちしプランジャナ 記憶をすべて消失し
無限の闇に閉ざされて ひどき苦痛を味わいぬ





tâm eva manasâ grhnan
babhûva pramadottamâ
anantaram vidarbhasya
râja-simhasya vesmani
28-28




生前せいぜん 彼は妻だけを 深く心に受けれて
真実の愛 注ぎたり その功徳にてのちの世に
最強の国 ヴィダルバの 王の愛する娘とて
すぐれし姿態したい 持つ美女の かたちをとりて誕生す





upayeme vîrya-panâm
vaidarbhîm malayadhvajah
yudhi nirjitya râjanyân
pândyah para-puranjayah
28-29




しかりし時に他方たほうでは パーンディヤ族の王侯で
マラヤドヴァジャという覇者はしゃが その勇猛で知られたり
ヴィダルバ国もまた彼に 攻めたてられて王子等の
多くが征服されしなり 武勇で勝ちし勇者ゆうじゃには
“敗者の娘 差し出す”と 当時の風習ならい 踏襲とうしゅう
ヴィダルバ国のこの美女も マラヤドヴァジャにとつぎたり











409

二十八章 プランジャナの本当の姿とは?



tasyâm sa janayâm cakra
âtmajâm asiteksanâm
yavîyasah sapta sutân
sapta dravida-bhûbhrtah
28-30




その後二人の間には 黒き瞳の愛らしき
娘と そして七人の おのこが誕生いたしたり
その息子等はドラヴィダの 七人のしゅ(支配者)となりしなり






ekaikasyâbhavat tesâm
râjann arbudam arbudam
bhoksyate yad-vamsa-dharair
mahî manvantaram param
28-31




プラーチーナバリ大王よ
この息子等のそれぞれの 1億人の子供等が
この地を支配 したるなり
そしてこれらの子孫にて そのマヌの期が終わるまで
地球のすべて支配さる






agastyah prâg duhitaram
upayeme dhrta-vratâm
yasyâm drdhacyuto jâta
idhmavâhâtmajo munih
28-32




マラヤドヴァジャの徳高き 美しきはその後に
厳しき戒を遵守する アガスティヤ聖仙せんと結ばれり
生まれし息子ドリダチュタ その息子には聖仙の
イドマヴァーハが誕生す











410

二十八章 プランジャナの本当の姿とは?



vibhajya tanayebhyah ksmâm
râjarsir malayadhvajah
ârirâdhayisuh krsnam
sa jagâma kulâcalam
28-33




マラヤドヴァジャなる王仙は 家長期にある息子等に
土地のすべてを分割し すべてをゆだみずからは
クリシュナ神を拝さんと クラーチャラ山に向かいたり






hitvâ grhân sutân bhogân
vaidarbhî madireksanâ
anvadhâvata pândyesam
jyotsneva rajanî-karam
28-34




黒き瞳の美しき ヴァイダルバ王ご息女は
自分の家や息子等や 華美な宝石 他のすべて
捨てて慕うは最愛の マラヤドヴァジャの足の跡
月に月光げっこううごとく 夫の身跡みあと 追いて往く






tatra candravasâ nâma
tâmraparnî vatodakâ
tat-punya-salilair nityam
ubhayatrâtmano mrjan
 
kandâstibhir mûla-phalaih
puspa-parnais trnodakaih
vartamânah sanair gâtra-
karsanam tapa âsthitah
28-35・36











そこはチャンドラヴァサー川 そしてタームラパルニー川
ヴァトダカー川 三川さんせんが 清らに流る聖地なり
王はそれらの神聖な 川の流れに身を沈め
口をすすいで沐浴し 球根や種 根や果実
花や葉 そして草や水 それらに依りて身をつな
厳しき苦行 行いて 日毎ひごとに痩せて衰えり






411

二十八章 プランジャナの本当の姿とは?



sîtosna-vâta-varsâni
ksut-pipâse priyâpriye
sukha-duhkhe iti dvandvâny
ajayat sama-darsanah
28-37




暑さと寒さ 風と雨 飢えと渇きと幸 不幸
そして苦悩と悦楽が 両極にある二元性
彼はそれらを凌駕して 平等観を得たるなり






tapasâ vidyayâ pakva-
kasâyo niyamair yamaih
yuyuje brahmany âtmânam
vijitâksânilâsayah
28-38




感覚器官 気息とを よく制御して主につな
苦行を行じ 真理を学び のりの戒律遵守して
心をいつに集中し 俗世の汚濁おだく 焼き尽くす
斯くて個魂と最高我 同一なりと自覚して
梵我一如ぼんがいちにょを得たるなり






âste sthânur ivaikatra
divyam varsa-satam sthirah
vâsudeve bhagavati
nânyad vedodvahan ratim
28-39




天上界の時間にて 百年間の長き
王は不動の姿勢にて 微動だにせず座りたり
聖クリシュナを崇拝し ほかのすべてを放擲ほうてき
御主おんしゅのみ 思いたり










412

二十八章 プランジャナの本当の姿とは?



sa vyâpakatayâtmânam
vyatiriktatayâtmani
vidvân svapna ivâmarsa-
sâksinam virarâma ha
28-40




王はすべてに遍満す 超越的なクリシュナに
己が個魂を見い出して 梵我一如を悟りたり
うつつのごとき俗の世の はかなきものに未練なく
真実のみを 思いたり






sâksâd bhagavatoktena
gurunâ harinâ nrpa
visuddha jnâna-dîpena
sphuratâ visvato-mukham
28-41




プラーチーナバリ大王よ この優れたる大王は
崇敬すべき最高者 聖クリシュナの指示を受け
肉の器を戴きて この現世うつしよに誕生し
聖ハリにより数々の 浄化を受けて人々の
松明たいまつとして道 照らし 英知を示し導けり






pare brahmani câtmânam
param brahma tathâtmani
vîksamâno vihâyeksâm
asmâd upararâma ha
28-42




超越的な絶対者 そしておのれもその分かれ(分魂)
同質でありうちの 照覧者とて在りたま
御主みすまさしく同根どうこんと 知覚為したるこの王は
制約多きこのうつわ(肉体) 未練気みれんげも無く脱ぎ捨てて
常世とこよに向けて旅立ちぬ








413

二十八章 プランジャナの本当の姿とは?



patim parama-dharma jnam
vaidarbhî malayadhvajam
premnâ paryacarad dhitvâ
bhogân sâ pati-devatâ
28-43




ヴァイダルバ王 娘にて マラヤドヴァジャに嫁ぎたる
王妃は王を最高の この上も無きつまとして
神のごとくに奉仕せり のりをよく知り義務果たし
宗教理論よく解し 供犠や祭式怠らぬ
斯く最良の夫との 快楽けらくを超えて共々に
全てを捨てて家を出で 夫の修行 助けたり





cîra-vâsâ vrata-ksâmâ
venî-bhûta-siroruhâ
babhâv upa patim sântâ
sikhâ sântam ivânalam
28-44




襤褸らんるの如き衣類を着 苦行に堪えて痩せ細り
髪は乱れて汚れきる されど王妃は生き生きと
夫に尽くす幸せに 光輝を放ち 輝けり
まるで炎は立たずとも アグニの神は熱きごと






ajânatî priyatamam
yadoparatam anganâ
susthirâsanam âsâdya
yathâ-pûrvam upâcarat
28-45




死しても更に端坐たんざして 姿勢崩さぬわが夫
何の不審も抱かずに いつもの如く仕えたり
乱れし衣 正さんと 台座に上り 足に触れ
ぬくもりが無く冷たきも さほど深くは考えず
王妃は常と変りなく 唯ひたすらに仕えたり







414

二十八章 プランジャナの本当の姿とは?



yadâ nopalabhetânghrâv
ûsmânam patyur arcatî
âsît samvigna-hrdayâ
yûtha-bhrastâ mrgî yathâ
28-46




冷たき足に触れし時 王妃は異変 気付かねど
帰依心強きわがつまは 常に御主を称賛し
賛歌を謳い続けたり しかれど今やその響き
耳を澄ませど絶えしまま… 王妃は今やおっと
たった一人と気が付きて れを離れし鹿のごと
恐怖 不安におびえたり






âtmânam socatî dînam
abandhum viklavâsrubhih
stanâv âsicya vipine
susvaram praruroda sâ
28-47




もっとも愛すわが夫 亡くしてわが身 のこされて
たった一人の森の中 己が運命さだめが恨めしく
涙は妻の胸濡らし 歎き 悲しむばかりなり






uttisthottistha râjarse
imâm udadhi-mekhalâm
dasyubhyah ksatra-bandhubhyo
bibhyatîm pâtum arhasi
28-48




<おお王仙よ起き給え 何とぞ起きてくだされよ
残虐的なクシャトリヤ 極悪人の者等から
どうぞこの身を護られよ おお王仙よ起き給え
御身おんみはそれをすべきなり>









415

二十八章 プランジャナの本当の姿とは?



evam vilapantî bâlâ
vipine 'nugatâ patim
patitâ pâdayor bhartû
rudaty asrûny avartayat
28-49




斯くの如くに王の妃が 寂しき森の只中で
一人の味方 友も無く ひどく苦しみ嘆きつつ
夫の足に身を投げて 涙を流し続けたり






citim dârumayîm citvâ
tasyâm patyuh kalevaram
âdîpya cânumarane
vilapantî mano dadhe
28-50




やがて王妃は身を起こし たきぎを積みてとこつくり
夫の身体からだ横たえて 炎上させておのが身も
共に焼失させんとて 猛火の中にらんとす






tatra pûrvatarah kascit
sakhâ brâhmana âtmavân
sântvayan valguna samnâ
tâm âha rudatîm prabho
28-51




まさにその時 と或る者 王妃の前に現れり
彼は昔の友人で ヴェーダに通じ博学な
ブラーフマナで在りしなり
彼は柔和な声色こわいろで 嘆く彼女を慰めて
斯くの如くに話し掛く












416

二十八章 プランジャナの本当の姿とは?



brâhmana uvâca
kâ tvam kasyâsi ko vâyam
sayâno yasya socasi
jânâsi kim sakhâyam mâm
yenâgre vicacartha ha
28-52






そのバラモンは 申されり
〈〈其方そなたは誰ぞ 何故に 燃える身体の持主を
うて激しく泣かれるや?
其方は彼の王妃ゆえ? いいえ其方は妃ではなし

其方は吾の友であり 共に語らい 楽しみて
共に過ごせし時のこと 今も記憶に 残れりや?

吾が今から話すのは 秘奥の秘にて他界では
うかがい知れぬ真理なり その一端いったんを語るゆえ
心澄ませて聴きたまえ





api smarasi câtmânam
avijnâta-sakham sakhe
hitvâ mâm padam anvicchan
bhauma-bhoga-rato gatah
28-53




親しき友よ 吾が友よ アディジュータなるこの吾の
名をば御身おんみは忘れしや? 物質界に執着し
五官の快楽かいを希求して 吾を残してただ一人ひとり
他界に向けて旅立ちし 御身おみは記憶をくせしや?




hamsâv aham ca tvam cârya
sakhâyau mânasâyanau
abhûtâm antarâ vaukah
sahasra-parivatsarân
28-54




御身おみと吾とは原初より 二羽のハムサ(白鳥)の姿
マーナサ湖にて悠々と 数多あまたの年(数千年)周遊しゅうゆう
主の帰依者とてぐうされり




417

二十八章 プランジャナの本当の姿とは?



sa tvam vihâya mâm bandho
gato grâmya-matir mahîm
vicaran padam adrâksîh
kayâcin nirmitam striyâ
28-55




御身おみは友なるわれを捨て 未知なるものに興味持ち
欲や快楽けらくが渦巻ける 地の界 見んと旅立ちぬ
そして其方そなたは旅の途次とじ と 或る場所にて出会いたる
女性が建てし城郭じょうかくを ついに発見したるなり






pancârâmam nava-dvâram
eka-pâlam tri-kosthakam
sat-kulam panca-vipanam
panca-prakrti strî-dhavam
28-56




いつつの園生そのう(庭園)ここのつの 門と一人の守護の者
三重の壁 つの邸宅てい 五つの市場 それぞれは
五個の要素で創られて 一人の女性 支配せり






pancendriyârthâ ârâma
dvârah prânâ nava prabho
tejo-'b-annâni kosthâni
kulam indriya-sangrahah
28-57




城郭に在る園生とは 五個の感覚刺激する
対象物をし示し 九つの門 その役は
対象物を引き入れる その窓口を示すなり
五大元素の〔〕〔すい〕〔〕は 三重みえの壁にて守られる
〕は熱 〔すい〕は食物を 〔〕は貯蔵庫を示すなり
家族が住まう六邸ろくていは 五つの感覚 心(マナス)なり









418

二十八章 プランジャナの本当の姿とは?



vipanas tu kriyâ-saktir
bhûta-prakrtir avyayâ
sakty-adhîsah pumâms tv atra
pravisto nâvabudhyate
28-58




五個の市場は五種類の 行為器官を表現し
この世に生きる活力を 生み出す基礎となる処
プラクリティから創られし 五大元素の働きを
この城郭が表現し 不滅の君主 求めたり






tasmims tvam râmayâ sprsto
ramamâno 'sruta-smrtih
tat-sangâd îdrsîm prâpto
dasâm pâpîyasîm prabho
28-59




御身はそこで知り合いし 若き美女との触れ合いで
俗の快楽けらく耽溺たんできし 学びし真理 忘れ
妻への愛に執着し 更に無益な殺生せっしょう
の前に立つ友は 嗚呼ああ!やつれ果て 無慙むざんなり







na tvam vidarbha-duhitâ
nâyam vîrah suhrt tava
na patis tvam puranjanyâ
ruddho nava-mukhe yayâ
28-60




ヴィダルヴァ国の王妃でも 今や死したる英雄の
妻でもなくて そしてまた 九つの門 持つ城の
魅惑に満ちしあの妻の 夫でもなく皆うつつ











419

二十八章 プランジャナの本当の姿とは?



mâyâ hy esâ mayâ srstâ
yat pumâmsam striyam satîm
manyase nobhayam yad vai
hamsau pasyâvayor gatim
28-61




これらはすべてこの吾(分魂=主)が 創りいだせしマーヤーぞ
御身おみ前世ぜんせは男性で 今世こんぜは純な女子おみなご
思いているに過ぎなくて そのいずれでも なかりけり
御身おみと吾との実際は 穢れ浄めし一対いっつい
ハムサ(白鳥)の姿 顕せる 主と同質のものなりき






aham bhavân na cânyas tvam
tvam evâham vicaksva bhoh
na nau pasyanti kavayas
chidram jâtu manâg api
28-62




われ御身おみなり それ故に 少しの差異も無かりけり
御身おみまさしく吾であり まこと親しき友なりき
世の聖仙や賢者等は 吾等二人を観察し
如何な角度で眺めても 如何なる時や場所であれ
ほんの些細なことであれ 僅かの差さえ 無きを識る






yathâ purusa âtmânam
ekam âdarsa-caksusoh
dvidhâbhûtam avekseta
tathaivântaram âvayoh
28-63




斯くの如くにアートマと 純粋意識プルシャとは
全く同じもののごと
一つの物を二つある まなこで見ても唯一ゆいいつ
見ゆるが如く御身おみは 少しの差異も無かりけり〉〉







420

二十八章 プランジャナの本当の姿とは?



evam sa mânaso hamso
hamsena pratibodhitah
sva-sthas tad-vyabhicârena
nastâm âpa punah smrtim
28-64




斯くの如くにさとさると マーナサ湖にて共々に
遊泳したる過ぎし日の 記憶が徐々に戻りたり
同魂どうこんゆえの友情で 曇りしこんの本質を
呼び覚まされし白鳥は すぐに解脱の境界に
戻りて友の白鳥と マーナサ湖上 いろどりて
美しく咲く紅蓮華べにれんげ 揺らして共に楽しみぬ





barhismann etad adhyâtmam
pâroksyena pradarsitam
yat paroksa-priyo devo
bhagavân visva-bhâvanah
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プラーチーナバリ大王よ
斯くの如くに比喩的に 吾が語りし理由ことわり
この物語 熱心に 聴聞したる者たちに
秘匿されたる秘中の秘 常世とこよへの道 明かせしは
根本原主クリシュナの 御慈愛深き 御意志ゆえ〉





第二十八章 終了











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