パリークシットは尋（たず）ねたり
「おお偉大なるシュカ仙よ　被造（ひぞう）されたるこの宇宙
何故（なにゆえ）斯くも多様なる　界を構成されたるや」

【聖なるシュカは述べられり】
この世に生きる者達は　三つのグナの衝動（しょうどう）で
種々な行為を行えり　その行為にて様々に
辿（たど）る運命（さだめ）が決められて 〔時〕に応じて与えらる

遥（はる）か彼方の昔から　無知なる故に積み上げし
禁じられたる罪科（つみとが）や　不敬犯せし者達も
欲望に負け 残虐（ざんぎゃく）な　行為を為せし者達も
その者が持つ信念や　信仰心の在り方で
行為によれる贖罪（しょくざい）に　大きな差異（さい）が生ずなり
悪を犯せし者達が　行き着く先の地獄界
その様相（ようそう）の幾つかを　吾はこれより語ろうぞ

再び王は尋ねたり
「おお聖仙よ 教示あれ　地獄の界と呼ばれしは
そは特定の場所なりや　はたまたそれは宇内（うだい）にや
または宇宙の外なりや」

おお大王よ この界に 〈二十一ある冥界（めいかい）(地獄界)を
数えることが出来る〉との　賢者は説を述べるなり
吾はこれより次々と　その名称と在り様（よう）の
特色などの概要を　王よ 説明いたすらん
〔アンダターミスラ〕〔ターミスラ〕
〔マハーラウラヴァ〕〔ラウラヴァ〕と
〔クンビーパーカ〕〔カーラスートラ〕
〔アシパトラヴァナ〕〔サンダムシャ〕
〔スーカラムカ〕と〔アンダクーパ〕
〔クリミボージャナ〕〔ヴィシャサナ(ヴァイシャサ)〕と
〔タプタスールミ〕〔ヴァイタラニー〕
〔ヴァジュラカンタカシャールマリー〕
〔プラーナローダ〕と〔プーヨーダ〕
〔ラーラーバクシャ〕と〔アヴィーチィ〕
〔サーラメーヤーダナ〕〔アヤフパーナ〕
この他七つの地獄界 〔クシャーラカルダマ〕
〔ラクショーガナボージャナ〕〔シューラプロータ〕
〔ダンダシューカ〕〔アヴァタニローダナ〕
〔パルヤーヴァルタナ〕〔スーチームカ〕
斯くのごとくに二十八　冥界あると伝えられ
罪を犯せし者達が　多様な責め苦 受ける場所

他人の財や妻や子を　奪いし者はヤマ神の
従卒（じゅうそつ）達に捕（と）らえられ 〔ターミスラ〕なる冥界（めいかい）に
連行されて 暗闇（あんこく）に　投げ込まれるが 定めにて
飢餓（きが）と渇きに苛（さいな）まれ　更に従者に殴られて
厳しき処罰 受けるなり　斯かる悲惨な状態に
墜（お）ちしジーヴァは絶望し　失意（しつい）の果（はて）に 失神す

他の男性を欺（あざむ）きて　その妻妾（さいしょう）と享楽（たの）しめば
〔アンダターミスラ〕冥界に　墜（お）とされるのは定かなり
酷な処罰の責（せ）め苦（く）にて　恰（あたか）も森の大木（たいぼく）が
根こそぎ“どう”と倒（たお）るごと　意識 視覚を失いて
〔漆黒（しっこく）〕という名の如き　闇の地獄(アンダターミスラ)に呻吟（しんぎん）す

而（しこう）してこの人生を　この肉体は吾(ジーヴァ)物で
被造されたる物全て　吾と家族の物なりと
日々強欲に明け暮れて　他を顧（かえり）みず 残虐（ざんぎゃく）な
限りを尽くす者達は　その暴虐（ぼうぎゃく）の罪科（ざいか）にて
死したる後に辿（たど）るのは 〔ラウラヴァ〕という冥界に
たった一人で墜（お）ちる道

この世の生（せい）でその者に　害（そこな）われたる生物は
ヤマ神による計（はか）らいで　その次の世(地獄)で〔ルル〕という
嫉妬深くて獰猛（どうもう）な　生き物として生まれたり
而（しか）して彼等ルル達は 〔ラウラヴァ〕という冥界で
害を加えしその者が　墜ちてくるのを待ち受けり
やがてその〔時〕来たりなば　ルルは己（おのれ）がされしごと
彼をいたぶり 苦しめて　ヤマの処罰を代行す

人間の肉 食すると　言われる程のルル族も
動物達や鳥などを “活（い）け造り”して賞味する
非道 無惨（むざん）な人間の　行為を非難するという
斯かる無慈悲な人間の　墜ち行く先は地獄界
〔クンビーパーカ〕と呼ばる処（とこ）　彼等はヤマの従者等に
沸（わ）き滾（たぎ）りたる油にて “揚げらる”という 罰受けん

ブラーフマナを害（そこ）ねたり　欺（あざむ）き 侮蔑（ぶべつ） そして又
不敬な行為した者が　死後に墜ち行くその場所は
〔カーラスートラ〕地獄なり　上から届く灼熱（しゃくねつ）の
太陽光と 下からの　地熱によりて焙（あぶ）られし
一万ヨージャナ円周の　広さに及ぶ銅板が
熱く焼けたる場所なりき　体（たい）の内部は飢渇（きかつ）にて
外部は皮膚の火傷（やけど）にて　責め苦を受ける彼達は
身の置き処（ど）なくあちこちを　転（ころ）げ回りて逃げ惑（まど）い
獣（けもの）を覆（おお）う体毛の　数ほど多き年月を
倒（こ）けつ転（まろ）びつ 過ごすなり

ヴェーダの法（のり）が推奨す　この世を生きる旅路から
逸脱（いつだつ）させる邪（よこしま）な　無神論とか異端など
信じる者をヤマ神の　従者が捕え 連れ行くは
〔アシパトラヴァナ〕地獄界　従者の鞭（むち）を逃れんと
森のあちこち逃げる間に　剣（つるぎ）の如き棕櫚（しゅろ）の葉に
その全身は傷つきて　正しき道に背（そむ）きたる
罪の報（むく）いに苦しみつ　崩れる如く気絶せん

無実の者を罰したり　ブラーフマナに体罰を
与えし王や代行者　彼等が墜ちる次の世は
〔スーカラムカ〕と呼ばれたる　極悪人（ごくあくにん）の行く地獄
この地獄ではヤマ神が　無辜（むこ）の民やらバラモンを
痛めし者に与えらる　厳しく辛き処罰にて
彼等の四肢（しし）はさながらに　機器で砕かるサトウキビ
彼等は怖れ慄（おのの）きて　悲鳴を上げつ気絶せん

この世に於ける人生は　至高の御主（みす）の計（はか）らいで
理解し難（がた）き緻密（ちみつ）さで　実に多様に仕組まれり
縁（えにし）ある者 無き者や　害あるものや援（たす）くもの
森羅万象（しんらばんしょう） そのすべて　関りあるや? 無きものか
その識別（しきべつ）は至難（しなん）なり　故に全ては吾が友と
思ほゆべきを 皆〔敵〕と　思いて害を為す者は
〔アンダクーパ〕と呼ばれたる　地獄の界に墜ちるなり
前世に於きて行為せし　悪意の業火（ごうか） 消すために
動物 野獣 鳥や蛇　蚊とかシラミや虫 ハエに
攻撃されて 責められて　一時（いっとき）さえも休息（やす）まれず
暗闇（くらやみ）の中 よろめきつ　当（あ）て処（ど）無き道 彷徨（さまよ）わん

而（しこう）してこの人生で　主の恩寵を感謝する
五種類の供犠（くぎ） 行わず　他に食物を与えずに
己れ一人で食すなど　カラスの如き人たちが
死後に墜ちゆくその場所は 〔クリミボージャナ〕地獄界
十万ヨージャナあるという　蛭（ひる）やみみずが溢（あふ）れ満つ
湖に棲（す）む一匹の　虫に生まれて 生きながら
他（ほか）の虫にて食べられる　長き贖罪（しょくざい） するという

災害による困窮（こんきゅう）や　切迫（せっぱく）したる金策に
難渋（なんじゅう）したるわけでなく　ブラーフマナや他の者の
金や宝石 貴重品　騙（だま）し取ったり 偸盗（ちゅうとう）の
罪を犯せし者達は 〔サンダムシャ〕なる冥界に
墜ち行くことは定かなり　この地獄ではヤマ神の
指示で 従者に鉄製の　熱く焼かれしハサミとか
トングを使い 肉体を　裂（さ）かれる罰が 下されん

動物であれ 人であれ　見境もなく性交す
呆（あき）れ果（は）てたる男性は
〔ヴァジュラカンタカシャールマリー〕
かく呼れたる地獄にて　堅き棘（とげ）持つ樹の上に
置かれし体（たい）を強力（きょうりょく）で　引き落されて 引き裂かる

名のある王やクシャトリヤ
王の側近（そっきん） そしてまた　良家の息（そく）であろうとも
ヴェーダ規定を逸脱（いつだつ）し　権威 冒（おか）せし者たちの
死後に墜ち行くその場所は　地獄の界を取り囲む
〔ヴァイタラニー〕という堀で
その堀に棲む獰猛（どうもう）で　執念ぶかき動物に
不浄なる物 尿や膿（うみ）　血液 髪や爪や骨
骨髄（こつずい） 脂肪 肉などを　罪に応じて噛み切られ
汚濁（おだく）の堀を流れゆく

再生族（さいせいぞく）でありながら　シュードラの娘（こ）と結婚し
清浄にして善き行為　正しき食事作法など
生活規定 遵守（じゅんしゅ）せず　獣のごとく 無恥（むち）となり
欲望のみに生きた者　彼等が死後に行く先は
〔プーヨーダ〕なる地獄界　排泄物（はいせつぶつ）や尿や膿（うみ）
粘液やまた唾液など　不潔なものが満ち溢る
大きな池で彼達は　これらを摂（と）りて生きるなり

狩猟犬とかロバ育て　規定されたる時の他（た）に
森で狩猟（しゅりょう）を楽しめる　ブラーフマナやクシャトリヤ
彼等が死後に墜ちる場は 〔プラーナローダ〕地獄界
ヤマの従者の射る矢にて　貫通（かんつう）されることならん

而（しか）して更に偽物（にせもの）の　供犠を行い 供物（くもつ）とて
動物殺す偽善者（ぎぜんしゃ）は 〔ヴァイシャサ〕という地獄にて
ヤマの従者に痛められ　殺戮（さつりく）されることならん

自分と同じカーストの　妻に精液飲ませたる
変態的な愛欲に　狂うドヴィジャ(再生族)が墜ち行くは
〔ラーラーバクシャ〕地獄界　精液のみを飲まされん

隊商（たいしょう）そして村民に　盗み 略奪（りゃくだつ） 放火など
更に毒殺 破壊とか　悪の限りを加えたる
盗賊や王 その兵士　死したる後に行く界は
〔サーラメーヤーダナ〕地獄界
ヤマの使者なる金剛（こんごう）の　強き歯を持つ 七百と
二十頭もの猟犬に　貪（むさぼ）るごとく食べられん

商取引きや布施行（ふせぎょう）で　嘘（うそ） 偽（いつわ）りを言いし者
死後に墜ち行くその界は 〔アヴィーチマット〕地獄界
百ヨージャナの高さ持つ　聳（そび）える山の真上から
真（ま）っ逆（さか）さまに落とされて　ゴマ粒ほどに砕かれる
この巌壁（がんぺき）は切り立ちて　氷の壁の如く見え
“水無き場所”と呼ばるなり　粉砕（ふんさい）されし彼の身は
死ぬることなく生き返り　再び山に登らされ
突き落とされて 砕け散る

神に誓いを捧げたる　再生族（さいせいぞく）でありながら
妻と共々 ソーマ酒や　蒸留酒にて酔い痴（し）れる
不届（ふとど）き者（もの）が墜ち行くは 〔アヤフパーナ〕地獄界
火で溶（と）きし鉄 口に入れ　足で胸踏み 処罰さる

最下層にて生まれしに　学識高く 禁欲し
善き行いや 布施（ふせ）をして　四姓四住期（しせいしじゅうき） 遵守（じゅんしゅ）する
気高く生きる人々を　尊敬もせず 貶（おとし）めて
せせら笑いをする者は　生きてはいても死者なりき
彼等が死後に ゆく界は 〔クシャーラカルダマ〕地獄界
真逆様（まっさかさま）に頭から　下に落とされ 耐え難き
姿勢のままで終わりなき　地獄の責苦（せめく） 受けるなり

カーリー女神（じょじん） 崇拝し　人を犠牲にする祭り
それに参加す男性や　その肉 食べる女性等が
死後に墜ち行くその先は 〔ラクショーガナボージャナ〕の
ヤマが支配す地獄界　悪魔(ラークシャサ)の如き姿した
生贄（いけにえ）にせし者たちに　屠殺者（とさつしゃ）が持つ斧などで
獣のように殺される　彼等は嘗（かつ）てされしごと
生血（いきち）を啜（すす）り 肉を食べ　陽気に踊り 歌うなり

而（しか）して森や林にて　無害に生きる動物に
油断をさせてさり気なく　近づき寄りて捕えるや
串刺しにして弄（もてあそ）び　紐にくくりて遊ぶなど
苦痛与えし者たちが　死後に墜ち行くその場所は
〔シューラプロータ〕地獄界　ヤマの与えし処罰にて
槍（やり）で突（つ）かれて固定され　飢えと渇きに晒（さら）される
更に鋭き嘴（くちばし）の　尖（とが）りし鳥に突（つつ）かれて
己（おの）が犯せし深き罪　思いて悔（く）いる こととなる

この人世（じんせい）を過ごしつつ　被造されたる生き物を
蛇の如くに残忍（ざんにん）に　取り扱いし人々が
死後に墜ち行くその界は 〔ダンダシューカ〕という地獄
その地獄では おお王よ　五つ或いは七つもの
頭を持ちし蛇たちが　鼠を嚥（の）みて食す如（ごと）　一気に彼を襲うらん

而（しこう）してこの人生で　被造物なる生物を
穴や倉庫や洞窟に　幽閉（ゆうへい）したる者たちが
死後に行き着くその場所は 〔アヴァタニローダナ〕地獄界
ヤマの従者に彼達は　有毒ガスや火や煙（けむり）
充満したる洞窟に　閉じ込められて処罰さる

この世に於きて暮らすうち　招かざる客 賓客（ひんきゃく）の
何（いず）れの人に対しても　問訊（もんじん）もせず更に尚
怒りの視線 向けるなど　定められたる もてなしの
礼儀も知らぬ 家長等（かちょうら）の　墜ち行く先のその場所は
〔パルヤーヴァルタナ〕地獄界　強き嘴（くちばし） 持つ鳥に
その無礼なる眼の球（たま）を　抉（えぐ）らることと なりぬべし

富を誇りて慢心（まんしん）し　誰も信じず利己的で
唯 財のみに執着し　その損失を懸念（けねん）する
身をも心も干乾（ひから）びし　欲望のみが強き者
彼等が墜ちるその界は 〔スーチームカ〕という地獄
ヤマの従者が 指示どおり
金（かね）の亡者の両手足　鋭き針で縫合（ほうごう）す

ヤマの国にはこの他にも　斯かる地獄が数多く
存在すると言わるなり
ヴェーダ規範（きはん）に背（そむ）きたる　者は誰でもここに墜ち
罪の償（つぐな）いするために　地獄の世界 巡るなり
おお大王よ 而（しこう）して　徳と罪との軽重（けいちょう）で
次なる界が定められ　再度 誕生いたすなり

解脱に向かう道筋は　すでに御身に語りたり(二巻二章)
語り継がれしプラーナに　開示されたる内容は
十四（じゅうし）の界が在るという　卵（たまご）に似たる宇宙卵
宇宙卵こそ最高我　クリシュナ神がトリグナの
マーヤーにより創られし　壮大にして偉大なる
主の本質の顕現ぞ　吾が語りしその全て
この説明に尽（つ）きるなり　斯かる御主を誉（ほ）め讃え
この神譚（しんたん）を朗誦（ろうしょう）し　或いは聴聞（ちょうもん）することで
叡智（えいち） 識別（しきべつ）深まりて　無明（むみょう）の闇は薄れゆく

斯かる御主を崇敬し　帰依する者は然（しか）る後（のち）
全ての物を凌駕（りょうが）する　主の様相（ようそう）を感得（かんとく）し
徐々に心を知力にて　微細（びさい）な相に結ぶべし

斯くの如くにおお王よ　生きとし生けるものの住む
被造されたるこの地球　ドヴィーパ ヴァルシャ 山や河
更に天空 空界（くうかい）や　七つの海や地下世界
方位 方角 地獄界　更に天体 惑星や
この三界の様相（ようそう）を　吾は詳しく語りたり

第二十六章　終了