十二章 ブラフマー神による宇宙創造
第十二章【ブラフマー神による宇宙創造】
maitreya uvaca
iti te varnitah ksattah
halakhyah paramatmanah
mahima veda-garbho 'tha
yathasraksin nibodha me
12-1
マイトレーヤは述べられり
「おおヴィドゥラよ今ここに 〔時〕という名の至上主の
類なき力 話したり 次いでそなたに語らうは
ブラフマー神がこの宇宙 創造されし経緯なり
sasarjagre 'ndha-tamisram
atha tamisram adi-krt
mahamoham ca moham ca
tamas cajnana-vrttayah
12-2
ブラフマー神は手始めに 次なる無知を作られり
死後を認めぬ(転生を認めず、死を全ての終焉とする無知)
迷妄と
憤怒 惑溺(欲望に溺れる無知) 誤謬(真理を錯覚する無知)なり
そして己れ(個我=分魂)を知らぬ無知
drstva papiyasim srstim
natmanam bahv amanyata
bhagavad-dhyana-putena
manasanyam tato 'srjat
12-3
ブラフマー神は然れども
これら邪悪な創造を 為した己れを喜べず
ひたすら御主を瞑想す
而してマナス浄化され 次ぎなる創造 為されたり
145
十二章 ブラフマー神による宇宙創造
sanakam ca sanandam ca
sanatanam athamabhuh
sanat-kumaram ca munin
niskriyan urdhva-retasah
12-4
而してサナカ サナンダと サナトクマーラ サナータナ
四人の聖者 生みださる 然れどもこの四人は
禁欲守る誓い立て 俗の活動 皆無なり
tan babhase svabhuh putran
prajah srjata putrakah
tan naicchan moksa-dharmano
vasudeva-parayanah
12-5
ブラフマー神はその子等に 〈おお愛おしき息子らよ
今から後にそなた等は 多くの子孫 生み殖やし
地に充ち満ちる因となれ〉 斯く望まれどサナカ等は
ひたすら御主に傾注し 禁欲の法 遵守せり
so 'vadhyatah sutair evam
pratyakyatanusanaih
krodham durvisaham jatam
niyatum upacakrame
12-6
ブラフマー神は息子らに 父の指令を無視されて
憤怒の想い込み上げり ブラフマー神は然れども
強く理性を働かせ その憤激を抑制す
146
十二章 ブラフマー神による宇宙創造
dhiya nigrhyamano 'pi
bhruvor madhyat prajapteh
sadyo 'jayata tan-manyuh
kumaro nila-lohitah
12-7
ブラフマー神は斯くのごと 強き怒りを鎮めたり
にも拘らずその怒り 暗赤色の身体もつ
少年の姿に変身し 彼(ブラフマー神)の眉間から生じたり
sa vai ruroda devanam
purvajo bhagavan bhavah
namani kuru me dhatah
sthanani ca jagad-guro
12-8
その少年は神々の その劈頭に生まれたる
最も卓る神なるが 然も悲しげに叫びたり
〈ああ造物主 父上よ 吾に名前を与えあれ
而して住まい 賜れ〉と
iti tasya vacah padmo
bhagavan paripalayan
abhyadhad bhadraya vaca
ma rodis tat karomi te
12-9
蓮の花から生まれたる ブラフマー神は斯くのごと
吾が子宥めて申されり
〈おお愛し子よ 泣くなかれ そなたの願い聞き入れて
ただちに望み叶えなん
147
十二章 ブラフマー神による宇宙創造
yad arodih sura-srestha
sodvega iva balakah
tatas tvam abhidhasyanti
namna rudra iti prajah
12-10
激しく泣いて叫ぶゆえ
[ルドラ](咆哮する者)との名与えよう
hrd indriyany asur vyoma
vayur agnir jalam mahi
suryas candras tapas caiva
sthanany agre krtani te
12-11
心 感官 プラーナ(気息)と
五大元素(空・風・火・水・地)と太陽と
月と苦行の一切が すべてそなたの住居なり
manyur manur mahinas
mahan chiva rtadhvajah
ugrareta bhavah kalo
vamadevo dhrtavratah
12-12
そしてそなたはこの他に
マニュ マヌ マハーン マヒナサや
シヴァ リタドワジャ バヴァ カーラ
ウグラレーターそしてまた ヴァーマデーヴァと呼ばれたり
ドリタヴァラタの名称で 多くの人に呼ばるらん
148
十二章 ブラフマー神による宇宙創造
dhir dhrti-rasaloma ca
niyut sarpir ilambiha
iravati svadha diksa
rudranyo rudra te striyah
12-13
ディー ヴィリッティ ウシャナーや
ウマー サルピー ニユト スダー
イラーヴァティーや アンビカー(パールヴァティー)
ディークシャー イラー この者ら すべて御身(ルドラ)の妻にして
ルドラニー(Rudra神の妃)よ!と呼ばるらん
grhanaitani namani
sthanani ca sa-yosanah
ebhih srja praja bahvih
prajanam asi yat patih
12-14
これらの住居 数多の名 そして妻らを受け入れて
多くの子孫 殖やすべし
何故かといえば御身こそ 被造の者の主ゆえ〉
ity adistah sva-guruna
bhagavan nila-lohitah
sattvakrti-svabhavena
sasarjatma-samah prajah
12-15
創造担う尊父より 斯くのごとくに命じられ
暗赤色の肌を持つ その息子はそれを拝受せり
そして己れに類似した 強き力と外観と
本性を持つ子供等を 数多誕生させにけり
149
十二章 ブラフマー神による宇宙創造
rudranam rudra-srstanam
samantad grasatam jagat
nisamyasankhyaso yuthan
prajapatir asankata
12-16
然るにこれら ルドラより 生みだされたる子供等が
己(ブラフマー神)が創造し万物を 手当り次第壊すのを
知覚なされしブラフマー神 極めて憂慮なされたり
alam prajabhih srstabhir
idrsibhih surottama
maya saha dahantibhir
disas caksurbhir ulbanaih
12-17
〈おお神々の長老(ルドラ)よ 最早そなたは斯くのごと
子等を生む事ならぬなり そなたが生みし子供等は
炎の如き眼して 吾(ブラフマー神)が創造りしこの宇宙
そして祖父なるこの吾を 焼き尽くさんと為せるなり
tapa atistha bhadram te
sarva-bhuta-sukhavaham
tapasaiva yatha purvam
srasta visvam idam bhavan
12-18
そなたに<恵みあれかし>と ひたすら御主に願うなり
汝は全ての生物の 多幸願いて苦行せよ
害われたるこの宇宙 かつてのままに創造る術
苦行以外に手立てなし
150
十二章 ブラフマー神による宇宙創造
tapasaiva param jyotir
bhagavantam adhoksajam
sarva-bhuta-guhavasam
anjasa vindate puman
12-19
斯くのごとくに人間は ひたすら苦行することで
全ての物の内奥(フリダヤ)に 住み給いたる最高の
光輝に充ちる至上主に 近づくことが出来得る〉」と
maitreya uvaca
evam atmabhuvadistah
parikramya giram patim
badham ity amum amantrya
vivesa tapase vanam
12-20
マイトレーヤは続けらる
「ルドラは吾を生じたる ブラフマー神に斯くのごと
指示を受けると忽ちに 苦行を固く約定し
父の周りを経巡りて 尊敬の意を表すや
暇を告げてひっそりと 森に向かいて旅立ちぬ
athabhidyayatah sargam
dasa putrah prajajnire
bhagavac-chakti-yuktasya
loka-santana-hetavah
12-21
主のシャクティを戴きし ブラフマー神はその後に
宇宙を発展させるため 十人の息子を造られり
151
十二章 ブラフマー神による宇宙創造
maricir atry-angirasau
pulastyah pulalah kratuh
bhrgur vasistho daksas ca
dasamas tatra naradah
12-22
マリーチ アトリ アンギラス
プラハ クラトゥ プラスティヤ
ブリグ ヴァシシュタ ダクシャなど
そして最後(十番目)の誕生は 著名な聖者 ナーラダ仙
utsangan narado jajne
dakso 'ngusthat svayambhuvah
pranad vasisthah sanjato
bhrgus tvaci karat kratuh
12-23
最高のリシ ナーラダは ブラフマー神の腰部(~膝)から
ダクシャは右の親指で プラーナ(気息)からはヴァシシュタが
ブリグは皮膚でクラトゥは ブラフマー神の両手から
誕生せりと言わるなり
pulaho nabhito jajne
pulastyah karnayor rsih
angira mukhato 'ksno 'trir
maricir manaso 'bhavat
12-24
ブラフマー神の臍からは 聖者プラハが誕生し
耳から生ずプラスティヤ 口から生まるアンギラス
眼から生いたる聖アトリ そして聖仙マリーチは
ブラフマー神のマナスから 誕生せりと言わるなり
152
十二章 ブラフマー神による宇宙創造
dharmah stanad daksinato
yatra narayanah svayam
adharmah prsthato yasman
mrtyur loka-bhayankarah
12-25
ブラフマー神の右胸は ナーラーヤナの父である
ダルマが顕現したる処
人が恐れる死神を 生み出したるアダルマは
ブラフマー神の背中から この世に誕生したるなり
hrdi kamo bhruvah krodho
lobhas cadhara-dacchadat
asyad vak sindhavo medhran
nirrtih payor aghasrayah
12-26
ブラフマー神の心(心的活動の座)から
顕われたるは愛の神(カーマ)
眉毛からは憤激が 下唇からは欲望が
そして口から言の葉が 男根からは海洋が
全ての罪の支配者(ニルリティ)は 肛門からの生れなり
chayayah kardamo jajne
devahutyah patih prabhuh
manaso dehatas cedam
jajne visva-krto jagat
12-27
デーヴァフーティ夫なる 真優れしカルダマは
ブラフマー神の影から 顕われ出し聖者なり
斯くのごとくに諸々は ブラフマー神の心から
そして或いは身体から すべて誕生したるなり
153
十二章 ブラフマー神による宇宙創造
vacam duhitaram tanvim
svayambhur haratim manah
ahamam cakame ksattah
sa-hama iti nah srutam
12-28
ブラフマー神は ヴィドゥラよ 事もあろうに吾が娘
サラスワティーに魅入られて 強き欲望 抱きたり
されどヴァーク(言葉を司る女神=サラスワティー)は一向に
応える気配 見せざると 吾は伝聞したるなり
tam adharme krta-matim
vilokya pitaram sutah
marici-mukhya munayo
visrambhat pratyabodhayan
12-29
斯くのごとくに父親が 不徳な想い抱きしを
仄聞したるマリーチや 他の息子等は敬意こめ
次のごとくに申したり
naitat purvaih krtam tvad ye
na karisyanti capare
yas tvam duhitaram gaccher
anigrhyangajam prabhuh
12-30
〈おお父上よ 吾が父よ 敬して止まぬ御父が
吾が生みし娘を恋うるとは まこと由々しきことなりき
前のカルパのブラフマーも これから後のブラフマーも
決して為さぬ行為よと 吾等は深く憂うなり
154
十二章 ブラフマー神による宇宙創造
tejiyasam api hy etan
na suslokyam jagad-guro
yad-vrttam anutisthan vai
lokah ksemaya kalpate
12-31
世界の師たる父上よ かかる行為は英明で
具眼の士なる御方の 踏むべき道で なかりけり
被造されたる者は皆 造物の主(ブラフマー神)に追随し
倣いて道を往くことが 幸得る術と思うゆえ
tasmai namo bhagavate
ya idam svena rocisa
atma-stham vyanjayam asa
sa dharmam patum arhati
12-32
己が内なる光明を 己れ自身で顕示せる
真優れし父君に 帰命頂礼奉る
斯く崇敬す御方に どうぞダルマの法則を
<遵守されよ>と願うなり〉
sa ittham grnatah putran
puro drstva prajapatin
prajapati-patis tanvam
tatyaja vriditas tada
tam diso jagrhur ghoram
niharam yad vidus tamah
12-33
斯くのごとくに面前で 己が生みたる息子等に
そのアダルマを諌めらる 造物主たるブラフマーは
この道ならぬ(不道徳な)妄想 は 無明の闇(タマス)と知覚して
直ちに想い捨て去ると 迷妄すべて霧散せり
155
十二章 ブラフマー神による宇宙創造
kadacid dhyayatah srastur
veda asams catur-mukhat
katham sraksyamy aham lokan
samavetan yatha pura
12-34
ブラフマー神は然る時 先のカルパのそのままに
宇宙組成を為す仕組み
如何にやせんと思案さる
すると四面(4つある顔)の口辺から 四つのヴェーダ 生じたり
catur-hotram karma-tantram
upaveda-nayaih saha
dharmasya padas catvaras
tathaivasrama-vrttayah
12-35
そして四人の祭官が 遂行すべき供儀や義務
それらの仕組 教義など ヴェーダの補遺や論理学
ダルマの基本そしてまた 四つの住期(アーシュラマ)その責務
それらすべての詳細が その口辺から生じたり」
vidura uvaca
sa vai visva-srjam iso
vedadin mukhato 'srjat
yad yad yenasrjad devas
tan me bruhi tapo-dhana
12-36
ヴィドゥラは斯く訊ねたり
「おお苦行者(マイトレーヤ)よ説き給え 宇宙創造なされたる
ブラフマー神が語られし ヴェーダその他の真髄は
四つの口の何れから 発せられたるものなるや
願わくばその詳細を <教えたまえ>と請うるなり」
156
十二章 ブラフマー神による宇宙創造
maitreya uvaca
rg-yajuh-samatharvakhyan
vedan purvadibhir mukhaih
sastram ijyam stuti-stomam
prayascittam vyadhat kramat
12-37
マイトレーヤは述べられり
「ブラフマー神はリグ ヤジュル サーマ アタルヴァこの四つの
ヴェーダ叡智の名称を 東の口を始めとし 順次発声なされたり
そしてその後順番に シャーストラ(経典)とかイジヤー(祭祀職の祭式)や
ストゥティストーマ(讃歌)そしてまた プラーヤシチッタ(贖罪)を発せらる
ayur-vedam dhanur-vedam
gandharvam vedam atmanah
sthapatyam casrjad vedam
kramat purvadibhir mukhaih
12-38
アーユルヴェーダ(医術) ダヌルヴェーダ(弓術)
スタハーパトヤ(建築学) ガーンダルヴァ(音楽)
東の口から順番に これら四つが発せらる
itihasa-puranani
pancamam vedam isvarah
sarvebhya eva vaktrebhyah
sasrje sarva-darsanah
12-39
すべての叡智 知覚する ブラフマー神はこの後に
四つの口のすべてから 第五ヴェーダと呼ばれたる
古譚 叙事詩を次々と すべて放出なされたり
157
十二章 ブラフマー神による宇宙創造
sodasy-ukthau purva-vaktrat
purisy-agnistutav atha
aptoryamatiratrau ca
vajapeyam sagosavam
12-40
更に祭祀を二つずつ 順次 放出なされたり
まずは東の口からは ショーダシーとウクタなり
次いで南の口からは アグニシュトタオ プリーシー
アープトーリャーマ アティラートラ これらは西の口からで
ヴァージャペーヤとゴーサヴァは 北の口から生まれたり
vidya danam tapah satyam
dharmasyeti padani ca
asramams ca yatha-sankhyam
asrjat saha vrttibhih
12-41
ブラフマー神は然るのち
ヴィディヤー(学問)ダーナ(布施)そしてまた
タパス(苦行)サティヤ(真実)や善法(ダルマ)や
アーシュラマ(四住期)など生きる道 事細やかに発せらる
savitram prajapatyam ca
brahmam catha brhat tatha
varta sancaya-salina-
siloncha iti vai grhe
12-42
聖紐の儀を行いし ブラフマチャリヤ(学生期)にある者は
一年間の禁欲(プラージャーパティヤ)や
ヴェーダを学ぶその期間(ブラーフマ)
また生涯の禁欲(ブリハト)の 誓いを個々にたてるなり
そして次なる家長期は ヴェーダ認可の職業(ヴァールター)で
生計立てる義務(サンチャヤ)を持ち
自然に手に入る物を食べ(シャーリーナ)
落穂を拾いそして又 供儀の残余で生きる(シローンチャ)なり
158
十二章 ブラフマー神による宇宙創造
vaikhansa valahilyau-
dumbarah phenapa vane
nyase kutcakah purvam
bahvodo hansa-niskriyau
12-43
森の高貴な隠者(林住期にある者=ヴァイカーナサ)等は
糒(干し飯=保存食)であれど備蓄せず(ヴァーラキリヤ)
選り好みせず偶然に 手に入りし物 食したり(アウドゥンバラ)
木から自然に落ちし実を 食べて生きゆく(フェーナパ)聖者なり
各地巡りて乞食(食を得る)し 帰依する者を浄化する
世俗のすべて放棄した 遊行期(クティーチャカ)にある解脱者は
パラマハンサ(ハンサニシュクリヤ=ジーヴァン・ムクタ)と呼ばるなり
anviksiki trayi varta
danda-nitis tathaiva ca
evam vyahrtayas casan
pranavo hy asya dahratah
12-44
ブラフマー神は斯くのごと 四住期につき述べし後
形而上的論理学(アーンヴィークシキー)
生計立てる職(ヴァールター)の智や
法と秩序と政治学(ダンダニーティ) これら聖知を発せられ
ブラフマー神の心(フリダヤ)から 聖音オーム(プラナヴァ)流れ出ず
tasyosnig asil lomabhyo
gayatri ca tvaco vibhoh
tristum mamsat snuto 'nustub
jagaty asthnah prajapateh
12-45
そしてヴェーダの韻律(ウシュニク)は
ブラフマー神の体毛で ガーヤトリーは皮膚なりき
トリシュトゥブの韻律は 造物神(ブラフマー神)の肉からで
アヌシュトゥブは腱なりき
ジャガティーなる韻律は 骨から生まると伝えらる
159
十二章 ブラフマー神による宇宙創造
majjayah panktir utpanna
brhati pranato 'bhavat
12-46
ブラフマー神の髄からは パンクティなる韻律が
ブリハティーなる韻律は 気息が生みしと言わるなり
sparsas tasyabhavaj jivah
svaro deha udahrta
usmanam indriyany ahur
antah-stha balam atmanah
svarah sapta viharena
havanti sma ptajapateh
12-47
ブラフマー神の個魂から 子音スパルシャ(閉鎖音と鼻音)発生し
その身体から母音(スヴァラ)生む
インドリヤから歯擦音(ウースマーナム)
能力からは半母音(アンタフスタ)
ブラフマー神の修行から 七音階が生じたり
sabda-brahmatmanas tasya
vyaktavyaktatmanah parah
brahmavabhati vitato
nana-sakty-upabrmhitah
12-48
未顕のものを顕現す 卓越したるブラフマー神
ヴェーダの智慧を音として 斯くのごとくに顕示さる
斯くも多様な力もつ ブラフマー神の背後には
絶対的な全能者 至上の御主が御座すなり
160
十二章 ブラフマー神による宇宙創造
tato 'param upadaya
sa sargaya mano dadhe
12-49
息子に無明(タマス) 諌められ 直ちにサットヴァ受け入れし
ブラフマー神は然る後 心を一に専注し 宇宙創造勤しまる
rsinam bhuri-viryanam
api sargam avistrtam
jnatva tad dhrdaye bhuyas
cintayam asa kaurava
12-50
然れどもああヴィドゥラよ ブラフマー神が期待して
多くの優る力持つ 息子らに創造託されど
その願望は遅々として 進捗を見ることはなし
ブラフマー神はそれゆえに しばし熟考なされたり
aho adbhutam etan me
vyaprtasyapi nityada
na hy edhante praja nunam
daivam atra vighatakam
12-51
《ああ何という事ならん 吾は今迄一筋に
万有扶育 望みしに
吾が息子らは一向に
それに応える気配なし かかる事態が起きるのは
御主の御意思に適わざる 何かがあるに相違なし》
161
十二章 ブラフマー神による宇宙創造
evam yukta-krtas tasya
daivam caveksatas tada
kasya rupam abhud dvedha
yat kayam abhicaksate
12-52
斯くの如くに思索した ブラフマー神はひたすらに
至上の御主に傾注し 深く瞑想なされたり
するとその時 御自身の 形(姿)が二つに分かれたり
故に有形の人体は
カーヤ(ブラフマー神=ka神に関する者)の名にて呼ばるなり
tabhyam rupa-vibhagabhyam
mithunam samapadyata
12-53
斯くのごとくに分けられし 一対をなす身体が
〔男性〕そして〔女性〕とて 二つの性を表現す
yas tu tatra puman so 'bhun
manuh svayambhuvah svarat
stri yasic chatarupakhya
mahisy asya mahatmanah
12-54
ブラフマー(神)から生受けし 二人のうちの男性は
スワーヤンブヴァ マヌの名で 人類の祖となりにけり
そして女性はその伴侶 シャタルーパー(妃)と呼ばるなり
tada mithuna-dharmena
praja hy edham babhuvire
12-55
而してのち人類は 二つの性が交りて
種の繁栄をもたらすと ダルマによりて定めらる
162
十二章 ブラフマー神による宇宙創造
sa capi satarupayam
pancapatyany ajijanat
priyavratottanapadau
tisrah kanyas ca bharata
akutir devahutis ca
prasutir iti sattama
12-56
偉大な魂のヴィドゥラよ
スワーヤンブヴァ(マヌ) シャタルーパー(王妃)
この夫婦には二人の息子 ウッターナパーダ プリヤヴラタ
そして三人の娘たち アークーティとプラスーティ
デーヴァフーティ授けらる
akutim rucaye pradat
kardamaya tu madhyamam
daksayadat prasutim ca
yata apuritam jagat
12-57
マヌは長女のアークーティ 聖仙ルチに嫁がせて
デーヴァフーティ次女なる娘 聖カルダマに嫁かせたり
そして三女のプラスーティ 聖者ダクシャと妻合せる
三人の娘らはそれぞれに プラジャーパティ(造物者)に添い遂げて
多くの子孫生み育て その後裔は世に満てる」