一章 ヴィドゥラとウッダヴァの邂逅

第一章【ヴィドゥラとウッダヴァの邂逅かいこう

sri-suka uvâca
evam etat purâ prsto
maitreyo bhagavân kila
ksattrâ vanam pravistena
tyaktvâ sva-grham rddhimat
1-1





えあるシュカは語られり】
繁栄したる故郷ふるさとを 捨てて森へと旅立ちし
ヴィドゥラはかつて 聖仙(マイトレーヤ)
主の本質を問いしなり


yad vâ ayam mantra-krd vo
bhagavân akhilesvarah
pauravendra-grham hitvâ
pravivesâtmasât krtam
1-2




宇宙のすべて支配さる 尊き御主おんしゅクリシュナが
ハスティナープラへ使者(パーンダヴァ家の)として
訪問されし時のこと パウラヴァ王(ドゥルヨーダナ)やかた避け
まるで我が家にはいるごと ヴィドゥラのいえに入られり


râjovâca
kutra ksattur bhagavatâ
maitreyenâsa sangamah
kadâ vâ saha-samvâda
etad varnaya nah prabho
1-3





パリークシット国王は シュカ聖仙に訊ねたり
「名声高く神聖な マイトレーヤとヴィドゥラは
何時いつ何処いずこめぐり合い 如何いか問答もんどう 為されしや
その交流の経緯いきさつを おお神仙よ 語られよ



1

一章 ヴィドゥラとウッダヴァの邂逅


na hy alpârthodayas tasya
vidurasyâmalâtmanah
tasmin variyasi prasnah
sâdhu-vâdopabrmhitah
1-4




純なる御魂みこんヴィドゥラが マイトレーヤに訊ねたる
その質問の内容は
些細ささいな結果求めての ことにあらずと思う故
卓越たくえつしたるその問答 是非にお聞かせたまえかし」



sûta uvâca
sa evam rsi-varyo 'yam
prsto râjnâ pariksitâ
praty âha tam subahu-vit
pritâtmâ srûyatâm iti
1-5





≪聖仙スータ語られる≫
奥義おうぎのすべて熟知じゅくちする 最高のリシ 聖シュカは
パリークシット国王が 礼を尽くしてたずねると
その質問を喜びて くのごとくに申されり
「さあ 何なりとかれよ」と



Sri-suka uvâca
Yadâ tu râjâ sva-sutân asâdhûn
pusnan na dharmena vinasta-drstih
bhrâtur yavisthasya sutân vibandhûn
pravesya lâksâ-bhavane dadâha
1-6





【栄えあるシュカは語られり】
わが息子らが非道にも 父(パーンドゥ)を亡くせしおい(弟の息子)たちを
樹脂で固めし家に入れ 火で焼き殺さんとしたるのを
ドリタラーシュトラ国王は 是非の判断失いて
そを止めもせず看過かんかせり




2

一章 ヴィドゥラとウッダヴァの邂逅

Yadâ sabhâyâm kuru-deva-devyâh
Kesâbhimarsam suta-karma garhyam
Na vârayâm âsa nrpah snusâyâh
Svâsrair harantyâh kuca-kunkumâni
1-7




またある時に賭博場とばくばで 王(ドリタラーシュトラ)の息子がクル族の
ユディシュティラの妻であり 王の義理のドラウパディー
その艶やかな黒髪を 荒々あらあら掴み引きずりぬ
流す彼女の涙にて 胸に塗られしサフランが
溶けてしたたり落ちるほど
にもかかわらず国王は 非道ひどう吾子わこ(ドゥフシャーサナ)の行状を
阻止そしする素振そぶり見せざりき


dyûte tv adharmena jitasya sâdhoh
satyâvalambasya vanam gatasya
na yâcato 'dât samayena dâyam
tamo-jusâno yad ajâta-satroh
1-8




いかさま賭博とばくに敗れたる 有徳ゆうとくにして善人の
ユディシュティラはしかる後
けのつぐないするために 家族で森にはいりたり
やがて年月としつき流れゆき 約定やくじょうどおり森をで 領土返還りょうどへんかん求めしが
ドゥルヨーダナ(ドリタラーシュトラの長男)は非道にも その要求をこばみたり



yadâ ca pârtha-prahitah sabhâyâm
jagad-gurur yâni jagâda krsnah
na tâni pumsâm amrtâyanâni
râjoru mene ksata-punya-lesah
1-9




ユディシュティラに仲介の 依頼を受けしクリシュナが
カウラヴァ族の王宮を 訪問されし時のこと
宇宙をべる至上主が まこと得難えがたき最高の
甘露の如き御言葉を 語られしにもかかわらず
タマスにした王ら(ドリタラーシュトラやドゥルヨーダナ)には
聴き取る徳は無かりけり

3

一章 ヴィドゥラとウッダヴァの邂逅

yadopahûto bhavanam pravisto
mantrâya prstah kila pûrvajena
athâha tan mantra-drsâm varîyân
yan mantrino vaidurikam vadanti
1-10




ドリタラーシュトラ兄王に 招聘しょうへいされしヴィドゥラは
直ちに助言 求められ おの見解けんかい 述べしなり
“最もすぐる助言者”と つとに名高きヴィドゥラの
その卓見たくけんを人々は 〔ヴィドゥラの至言しげん〕としょうすなり


ajâta-satroh pratiyaccha dâyam
titiksato durvisaham tavâgah
sahânujo yatra vrkodarâhih
svasan rusâ yat tvam alam bibhesi
1-11




ヴィドゥラは王に斯く言えり 「非道な仕打ち耐え忍び
敵を作らぬ 貴人あてびと(ユディシュティラ)に 遺産を直ぐに返還かえすべし
(ドリタラーシュトラ)が最も恐れたる ビーマ怒りてたけり立ち
蛇の如くに息荒く 兄(ユディシュティラ)の近くにはべりたり


pârthâms tu devo bhagaân mukundo
grhîtavân saksiti-deva-devah
âste sva-puryâm yadu-deva-devo
vinirjitâsesa-nrdeva-devah
1-12




聖なる御主おんしゅクリシュナは ヤドゥ王家のおさとして
征服したる国々の すべての者の王として
自身の土地に城郭じょうかくを 構えてすべて把握さる
そして御主おんしゅはクンティー(叔母)の 五人のそくを『従兄弟いとこよ』と
血縁として支持される



4

一章 ヴィドゥラとウッダヴァの邂逅


sa esa dosah purusa-dvid âste
grhân pravisto yam apatya-matyâ
pusnâsi krsnâd vimukho gata-srîs
tyajâsv asaivam kula-kausalâya
1-13




ドゥルヨーダナを兄上は 長男として 溺愛できあい
勝手気儘かってきままに育てらる
ああしかれどもその彼は 最高の人クリシュナに
敵愾心てきがいしんあらわにし 背徳はいとくと成り果てり
斯くなる上は兄王よ 一族いちぞくの幸 はかるため
不道徳なるものを すぐに退しりぞけられるべし」


ity ûcivâms tatra suyodhanena
pravrddka-kopa-sphuritâdharena
asat-krtah sat-sprhanîya-sîlah
ksattâ sakarnânuja-saubalena
1-14




聖者でさえもき込まる ヴィドゥラによる諫言かんげん
ドゥルヨーダナとその仲間 カルナ 弟 シャクニ(母方の叔父)らは
憤然ふんぜんとしていきり立ち ドゥルヨーダナは愚かにも
怒気どきで唇 震わせて ヴィドゥラをひどく侮辱ぶじょくせり



ka enam atropajuhâva jihmam
dâsyâh sutam yad-balinaiva pustah
tasmin pratîpah parakrtya âste
nirvâsyatâm âsu purâc chvasânah
1-15




「一体誰がこの場所に 奴隷どれいの息子 呼びたるか!
忘恩ぼうおんに成り果てて 此奴こやつはなんと不埒ふらちにも
庇護ひご者の王に楯突たてつきて(逆らうこと) 敵にくみして働けり
命はれてやるほどに すぐに街から消えせろ!」



5

一章 ヴィドゥラとウッダヴァの邂逅

svayam dhanur dvâri nidhâya mâyâm
bhrâtuh puro marmasu tâdito 'pi
sa ittham atyulbana-karna-bânair
gata-vyatho 'yad uru mânayânah
1-16




斯くの如くに辛辣しんらつな 矢で耳突くかの暴言ぼうげん(ドゥルヨーダナの)
浴びせられるもヴィドゥラは ごうも心を乱さずに
戸口に弓を立てけて 静かに城を出でにけり
すべては御主みすのマーヤーの 仕掛けしわざと知るゆえに


sa nirgatah kaurava-punya-labdho
gajâhvayât tîrtha-padah padâni
anvâ kramat punya-cikîrsayorvyâm
adhisthito yâni sahasra-mûrtih
1-17




クル王朝の徳ゆえに ハスティナープラに生まれたる
ヴィドゥラなれどもこの土地を 離れることを決意せり
大地の清め為さんとて 千にもあまる姿もち
しずまりたもうクリシュナの 蓮華の御足みあしお慕いし 
聖地巡礼 思い立つ


puresu punyopavanâdri-kunjesv
apanka-toyesu sarit-sarahsu
ananta-lingaih samalankrtesu
cacâra tîrthâyatanesv ananyah
1-18



ハスティナープラ あとにした ヴィドゥラは清き花園や
丘や叢林そうりん 林とか 澄みし湖沼こしょうや河や海
無限(クリシュナ神)しるし 神像を 美々しく飾る聖地らを
巡りて参拝 続けたり






6

一章 ヴィドゥラとウッダヴァの邂逅

gâm paryatan medhya-vivikta-vrttih
sadâpluto 'dhah sayano 'vadhûtah
alaksitah svair avadhûta-veso
vratâni cere hari-tosanâni
1-19




誰にも見分けられぬよう 姿を変えしヴィドゥラは
たった一人であちこちの 土地を流離さすらい 巡拝し
供物に適すもの(穢れなきもの)のみを 食して身体からだ 養いて
夜は大地の上にし 常に沐浴 欠かさざり
彼は尊き聖ハリを <喜ばせん>と誓い立て
その行為のみ行じたり


ittham vrajan bhâratam eva varsam
kâlena yâvad gatavân prabhâsam
tâvac chasâsa ksitim eka-cakrâm
ekâtapatrâm ajitena pârthah
1-20




斯くの如くにヴィドゥラが バーラタ国(インド)流浪るろうして
プラバーサなる聖域に 辿たどりつきたるその頃に
聖クリシュナの恩寵で ユディシュティラは全国土
傘下さんかに収め 掌握し 高き王座にきしなり



tatrâtha susrâva suhrd-vinastim
vanam yathâ venuja-vahni-samsrayam
samspardhayâ dagdham athânusocan
sarasvatîm pratyag iyâya tûsnîm
1-21




ヴィドゥラがそこ(プラバーサ)で聞きたるは
強き風にて竹と竹 いて火が燃えるごと
おの親族うから内紛ないふんで 無残に滅び果てしこと
ヴィドゥラは深き嘆き捨て 御主みすを思いつ黙々と
サラスワティーの清流に 添いて西へと向かいたり




7

一章 ヴィドゥラとウッダヴァの邂逅

tasyâm tritasyosanaso manos ca
prthor athâgner asitasya vâyoh
tîrtham sudâsasya gavâm guhasya
yac chraddhadevasya sa âsiseve
1-22




サラスワティーの河岸を ひとりで辿たどるヴィドゥラは
聖仙トリタ ウシャナスや マヌそしてまたプリトゥ王
火の神アグニ アスタ仙 風の神なるヴァーユ神
牝牛めうしの群れやスダーサ王 先祖供養の祭祀場さいしじょう
グハ王などの聖域を 巡りて祈り捧げたり


aniyâni ceha dvija-deva-devaih
krtâni nânâyatanâni visnoh
pratyanga-mukhyânkita-mandirâni
yad-darsanât krsnam anusmaranti
1-23




そして聖者や王たちが 建立こんりゅうしたる僧院や
御主おんしゅに捧ぐ殿堂が 処々しょしょ方々ほうぼう点在てんざい
それらに飾りつけられし クリシュナ神の御徴みしるし
拝せし彼(ヴィドゥラ)はひとしおに  御主みすへの想い深めたり


tatas tv ativrajya surâstram rddam
sauvîra-matsyân kurujângalâms ca
kâlena tâvad yamunâm upetya
tatroddhavam bhâgavatam dadarsa
1-24




斯くのごとくにヴィドゥラは 豊かなる国スラーットや
サウヴィーラ国 マツヤ国 クル ジャーンガラを巡拝す
しば時過ときすぎ と或る日に ヤムナー河のほとりにて
御主おんしゅの帰依者 ウッダヴァと 思いもよらず出会いたり




8

一章 ヴィドゥラとウッダヴァの邂逅

sa vâsudevânucaram prasântam
brhaspateh prâk tanayam pratîtam
âlingya gâdham pranayena bhadram
svânâm aprcchad bhagavat-prajânâm
1-25




ブリハスパティ末裔まつえいで クリシュナ神の従者なる
平安の気に満たされた 名高き帰依者ウッダヴァを
ヴィドゥラは深き愛をこめ しかと抱擁したるなり
そして御主おんしゅの近況や 己が親族うからの消息を
次の如くに訊ねたり



kaccit purânau purusau svanâbhya-
pâdmânuvrttyeha kilâvatîrnau
âsâta urvyâh kusalam vidhâya
krta-ksanau kusalam sûra-gehe
1-26




「主のほぞに咲くはちすから 生誕されしブラフマー神
その懇願こんがんでこの界に 化身なされし御二方おふたかた(バララーマとクリシュナ)
地球の重荷 除かんと 専心されしそのあとは
シューラセーナ(ヴァスデーヴァの父)のおやかた
元気に過ごしられるや


kaccit kurûnâm paramah suhrn no
bhâmah sa âste sukham anga saurih
yo vai svasrnâm pitrvad dadâti
varân vadânyo vara-tarpanena
1-27




吾が愛する義兄弟ぎきょうだい クル族たちの畏友いゆうにて
慈父じふのごとくに姉妹しまい(クンティー)らの 望み叶えて喜ばせ
その夫らを慈しむ ヴァスデーヴァはすこやかに
幸福しあわせに充ちお暮らしか おおウッダヴァよ 聞かせあれ




9

一章 ヴィドゥラとウッダヴァの邂逅

kaccid varûthâdhipatir yadûnâm
pradyumna âste sukham anga vîrah
yam rukminî bhagavato 'bhilebhe
ârâdhya viprân smaram âdi-sarge
1-28




御主おんしゅの夫人ルクミニーが 息子しみて身籠みごもりし
カーマ(愛の神)転生てんしょうプラデュムナ
ヤーダヴァ軍の指揮者とて 勇猛ゆうもう誇る軍人つわもの
今も変わらず壮健そうけん



kaccit sukham sâtvata-vrsni-bhoja-
dâsârhakânâm adhipah sa âste
yam abhyasincac chata-patra-netro
nrpâsanâsâm parihrtya dûrât
1-29




ヴリシュニー ボージャ サートヴァタ
ダーシャーラ族 君主なる ウグラセーナは機嫌よく
お過ごしされておられるや
投獄とうごくという見て 王座断念した彼に
主は戴冠たいかんをさせたもう


kaccid dhareh saumya sutah sadrksa
âste 'granî rathinâm sâdhu sâmbah
asûta yam jâmbavatî vratâdhyâ
devam guham yo 'mbikayâ dhrto 'gre
1-30




かつての世ではグハとして アンビカー(シヴァ神の妻)から生を得た
ハリの息子のサーンバは 父と等しき腕前の 戦車使いの名手めいしゅなり
ジャーンバヴァティー(クリシュナの妻)請願せいがんが 実りて誕生した彼は
おおウッダヴァよ今も尚 元気に過ごしおられるや



10

一章 ヴィドゥラとウッダヴァの邂逅

ksemam sa kaccid yuyudhâna âste
yah phâlgunâl labdha-dhanû-rahasyah
lebhe 'njasâdhoksaja-sevayaiva
gatim tadîyâm yatibhir durâpâm
1-31




弓の名手のアルジュナに じゅつ奥義おうぎ伝授でんじゅされ
そを身につけしサーティヤキ(ユユダーナ)
唯ひたすらにクリシュナ(アドークシャジャ)に まことを捧げ奉仕せり
苦行者とても為しがたき 主の帰依者なる道を行く
彼はかの地で今も尚 安穏な日々送りしや



kaccid budhah svasty anaîva âste
svaphalka-putro bhagavat-prapannah
yah krsna-pâdânkita-mârga-pâmsusv
acestata prema-vibhinna-dhairyah
1-32




シュヴァファルカの息子 アクルーラ
悲嘆を知らぬの人は 主の純粋な帰依者なり
主の御足おみあしあと 慕い 道に残りし塵 集め
不動の帰依が開花した 彼は今でも健在や



kaccic chivam devaka-bhoja-putryâ
visnu-prajâyâ iva deva-mâtuh
yâ vai sva-garbhena dadhâra devam
trayî yathâ yajna-vitânam artham
1-33




ボージャ王なる父を持つ 御主おんしゅ母御ははご デーヴァキー
アディティ妃(ヴィシュヌ神の母)見倣みならいて
ヴェーダ祭祀の広がりを 願いつ胎児育てらる
その御母堂ごぼどうは今もなお おすこやかにてお暮らしや



11

一章 ヴィドゥラとウッダヴァの邂逅

apisvid âste bhagavân sukham vo
yah sâtvatâm kâma-dugho 'niruddhah
yam âmananti sma hi sabda-yonim
mano-mayam sattva-turîya-tattvam
1-34




ヴェーダ起原きげん(主の本質)に基づきし
内部器官(チッタ・ブッディ・アハンカーラ・マナス)の四番目
マナスを純(サットヴァ)昇華しょうかした クリシュナの孫アニルッダ
無欲な彼は の地にて こころよき日々お過ごしや


apisvid anye ca nijâtma-daivam
ananya-vrttyâ samanuvratâ ye
hrdîka-satyâtmaja-cârudesna-
gadâdayah svasti caranti saumya
1-35




チャールデーシュナ(プラデュムナの兄弟) フリディーカ
サティヤバーマーの息子たち そして御主おんしゅの兄弟(ガダ)
聖クリシュナに献身し 帰依つちかいし人々は
おおウッダヴァよ つつがなく 幸ある日々を お過ごしや



api sva-dorbhyâm vijayâcyutâbhyâm
dharmena dharmah paripâti setum
duryodhano 'tapyata yat-sabhâyâm
sâmrâjya-laksmyâ vijayânuvrttyâ
1-36




ドゥルヨーダナのねたみにて 苦しめられし吾がおい
ユディシュティラはその後も まるで自分の両腕うでのごと
ヴィジャヤ(アルジュナ)アチュタ(クリシュナ)に護られて
栄光と富 掌握し のりに従い王国を よく統括とうかつ維持いじせるや





12

一章 ヴィドゥラとウッダヴァの邂逅

kim va krtâghesv agham atyamarsi
bhîmo 'hivad dîrghatamam vyamuncat
yasyânghri-pâtam rana-bhûr na sehe
mârgam gadâyâs carato vicitram
1-37




おおウッダヴァよ 語られよ
多種な荒技あらわざ(棍棒の)繰り広げ ビーマセーナが戦うと
修羅しゅらの大地(戦場)おののきて 耐えがたきほどらぎたり
邪悪な者(カウラヴァ族)いだきたる 怒りを長く(蛇の如くに)持ち続く
ビーマセーナはそののちに その者たちを赦せしや


kaccid yasodhâ ratha-yûthapânâm
gândiva-dhanvoparatârir âste
alaksito yac-chara-kûta-gûdho
mâyâ-kirâto girisas tutosa
1-38




マーヤーによりシヴァ神が キラータ(山の狩猟蛮族)姿をとられしに
ガーンディーヴァの強弓ごうきゅうで ひるむことなく立ち向かい
矢を浴びせたるアルジュナに シヴァ神 いた(非常に)喜ばる
斯く勇猛ゆうもうなアルジュナは たくみに戦車あやつりて
すべての敵を討ち果たし 今や長閑のどかに暮らせしや


yamâv utasvit tanayau prthâyâh
pârthair vrtau paksmabhir aksinîva
remâta uddâya mrdhe sva-riktham
parât suparnâv iva vajri-vaktrât
1-39




パーンダヴァの義兄あにたちに まるでまなこまなぶた
護られるごと保護されし 双児ふたごのナクラ サハデーヴァ
インドラ神と戦いて ガルダがアムリタ得しごとく
戦争によりわが財を 取り戻したる(ドゥルヨーダナから)五兄弟
心満たされ幸福に 日々を過ごしていましょうや



13

一章 ヴィドゥラとウッダヴァの邂逅

aho prthâpi dhriyate 'rbhakârthe
râjarsi-varyena vinâpi tena
yas tv eka-vîro 'dhiratho vijigye
dhanur dvitîyah kakubhas catasrah
1-40




わが異母兄いぼけいのパーンドゥは 無類むるいの戦車使いにて
近隣すべて征服し 世に“覇王はおうよ”と 讃えらる
そのパーンドゥが亡きのちは 寡婦かふとなりたるクンティーが
五人の息子よく護り その為のみに尽くされり
そのクンティー(プリター)は今も尚  の地で無事にお暮らしや


saumyânusoce tam adhah-patantam
bhrâtre paretâya vidudruhe yah
niryâpito yena suhrt sva-puryâ
aham sva-putrân samanuvratena
1-41




ドリタラーシュトラ兄王は 亡き弟(パーンドゥ)遺児いじたちに
敵意を抱く息子らの 意思に従い迎合げいごう
そして義弟の吾もまた 生まれし土地(ハスティナープラ)を追われたり
おおウッダヴァよ 斯くのごと 非道な行為 せし果てに
地獄へ落ちる兄の身を 吾はうれえて嘆くなり


10-42
so 'ham harer martya-vidambanena
drso nrnâm câlayato vidhâtuh
mânyopalaksyah padavîm prasâdâc
carâmi pasyan gata-vismayo 'tra



なれども吾は兄王の 為せる仕打ちを恨まざり
斯く斯くのごと人々の 行為は全て至上主の
深き御意思に他ならず しかして吾はひたすらに
主の恩寵を想いつつ 聖地巡礼いたしたり




14

一章 ヴィドゥラとウッダヴァの邂逅

nûnam nrpânâm tri-madotpathânâm
mahîm muhus câlayatâm camûbhih
vadhât prapannârti-jihîrsayeso
'py upaiksatâgham bhagavân kurûnâm
1-43




三つ(出生・富・学識)自負じふの高ぶりで
(ダルマ)を外せしクル族が その軍隊で絶え間なく
大地 さぶり続けたり 〔時〕が至りて至上主は
その罪深き破戒者はかいしゃを 殺して苦難 除かれり


ajasya janmotpatha-nâsanâya
karmâny akartur grahanâya pumsâm
nanv anyathâ ko 'rhati deha-yogam
paro gunânâm uta karma-tantram
1-44




さても不生ふしょうの至上主が この世に生まれ給いしは
邪悪なものを取り除き 人々に幸 与うため
ああさもなくば三グナや カルマの規制 受けぬ主が
如何でおのれを肉体に 縛りて不自由なされるや


tasya prapannâkhila-lokapânâm
avasthitânâm anusâsane sve
arthâya jâtasya yadusv ajasya
vârtâm sakhe kirtaya tîrtha-kîrteh
1-45




おおわが友よ ウッダヴァよ
おのが教えに従える 全ての界の帰依者らの
苦痛を癒す目的で ヤドゥの家に生まれらる
不生ふしょう御主みす消息しょうそくを なにとぞ聞かせ給えかし」


第一章 終了

15