一巻 七章 ヴィヤーサ シュカに神譚しんたん伝授でんじゅする
第七章【ヴィヤーサ シュカに神譚しんたん伝授でんじゅする】
7-1
s'aunaka uvâca
nirgate nârade sûta
bhagavân bâdarâyanah
s'rutavâms tad-abhipretam
tatah kim akarod vibhuh
シャウナカ仙は申したり
「おおスータ師よ答えあれ ムニ(ナーラダ)が去られしその後に
聖なる尊者ヴィヤーサは ナーラダ仙が語られし
胸中きょうちゅう意図いと 玩味がんみして いかなることをされしや」
7-2
sûta uvâca
brahma-nadyâm sarasvatyâm
âs'ramah pas'cime tate
s'amyâprâsa iti prokta
rishînâm satra-vardhanah
≪聖仙スータ語られる≫
サラスワティー(河)西岸せいがん
シャミャープラーサと呼ばれたる
聖仙たちの修法しゅうほうを 保護ほごするためのいおりあり
7-3
tasmin sva âs'rame vyâso
badarî-sanda-mandite
âsîno 'pa upaspris'ya
pranidadhyau manah svayam
ヴィヤーサ デーヴァ聖仙は
なつめの樹々にかこまれし おのいおりめて
口をすすぎしそのあとに 心らして瞑想す
71

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7-4
bhakti-yogena manasi
samyak pranihite 'male
apas'yat purusham pûrnam
mâyâm ca tad-apâshrayam
おのが心に確固かっこたる バクティのもと 築かれし
ヴィヤーサ デーヴァ聖仙と
無垢むく至純しじゅんに満たされし 原初げんしょプルシャ(至上主)の間には
マーヤーにへだてなし
7-5
yayâ sammohito jîva
âtmânam tri-gunâtmakam
paro 'pi manute 'nartham
tat-kritam câbhipadyate
原初プルシャ(至上主)が分れたる 各個かくこ御魂みたまジーヴァは
物質界の三要素 みっつのグナに無縁むえんなり
にもかかわらず人々は 幻術げんじゅつ(マーヤー)により錯乱さくらん
自己じこ(神の分霊)身体からだ(三つのグナから出来ている粗体)同一視どういつし
輪廻りんねの海におぼれゆく
7-6
anarthopas'amam sâkshâd bhakti-yogam adhokshaje
lokasyâjânato vidvâms'
cakre sâtvata-samhitâm
学識がくしきふかきヴィヤーサは 神に捧げるバクティが
無知のとばりを打ち破る 唯一ゆいつさくさとりたり
無明むみょうあえ諸人もろびとの 苦しみ嘆きのぞかんと
真理しんり経典きょうてんサンヒーター(詩篇)
バーガヴァタ プラーナへんじたり
72

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7-7
yasyâm vai s'rûyamânâyâm
krishne parama-pûrushe
bhaktir utpadyate pumsah
s'oka-moha-bhayâpahâ
バーガヴァタ プラーナ聴くうちに
至高しこうのプルシャ クリシュナに
献身奉仕する思念しねん 人の心にづる
斯くて悲しみ迷妄めいもうは 跡形あとかたもなく消え失せる
7-8
sa samhitâm bhâgavatîm
kritvânukramya câtma-jam
s'ukam adhyâpayâmâsa
nivritti-niratam munih
偉大な聖者ヴィヤーサは
バーガヴァタ プラーナ編成へんせい
息子のシュカに伝授でんじゅせり
聖仙シュカは若年わかきより
諸々もろもろの地を遊行ゆぎょうして 解脱げだつの道を邁進まいしん
7-9
s'aunaka uvâca
sa vai nivritti-niratah
sarvatropekshako munih
kasya vâ brihatîm etâm
âtmârâmah samabhyasat
シャウナカ仙は訊ねたり
「聖仙シュカは無執着むしゅうちゃく 世俗せぞく興味きょうみ持たぬ方
すでに悟りに達せられ 至福に充ちし聖者なり
ああそれなるに厖大ぼうだいな このプラーナに専心せんしん
再びまななおさんと 取り組まれしは何ゆえぞ」
73

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7-10
sûta uvâca
âtmârâmâs' ca munayo
nirgranthâ apy urukrame
kurvanty ahaitukîm bhaktim
ittham-bhûta-guno harih
≪聖仙スータ語られる≫
自己実現じこじつげんげて 解放されし聖者でも
無因むいんしゅなるクリシュナの そのたぐいなき栄光えいこう
心底しんてい深く魅了みりょうされ 献身奉仕捧げらる
7-11
harer gunâkshipta-matir
bhagavân bâdarâyanih
adhyagân mahad âkhyânam
nityam vishnu-jana-priyah
ヴィヤーサのそく 聖シュカは ハリの美徳びとく心酔しんすい
“主の最高の帰依者よ”と つとに名高きお方なり
ゆえに聖仙シュカ師には しゅ栄光えいこう神譚しんたん
聴くも語るも学ぶのも 永久とわ喜悦きえつにほかならじ
7-12
parîkshito 'tha râjarsher
janma-karma-vilâpanam
samsthâm ca pându-putrânâm
vakshye krishna-kathodayam
パリークシット王仙の 誕生 行為 解放と
パーンドゥ家の息子等の 死出しで旅路たびぢの物語
これより語り聞かせなん
  シュリー クリシュナ神譚の 糸口いとぐちとなる話しゆえ
74

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7-13・14
yadâ mridhe kaurava-srin'jayânâm
vîreshv atho vîra-gatim gateshu
vrikodarâviddha-gadâbhimars'a-
bhagnoru-dande dhritarâshthra-putre

bhartuh priyam draunir iti sma pas'yan
krishnâ-sutânâm svapatâm s'irâmsi
upâharad vipriyam eva tasya
jugupsitam karma vigarhayanti
カウラヴァ族とパーンダヴァ(族)両陣営りょうじんえい勇者ゆうじゃらは
クシャトリヤとてダルマげ 約束されし天国へ
旅立ちし者 数多あまたあり
パーンドゥ家の次男なる おおかみのごと食思しょくし(食欲)もつ
ビーマにもも(棍棒で)くだかれし
ドリタラーシュトラ長男(ドゥルヨーダナ)
地に伏しているその時に
ドローナチャリヤ息男そくなんの アシュワッターマンおろかにも
ドゥルヨーダナのかん(喜び)んと 野営やえいで眠るパーンドゥの
五人の若き息子らの
(パーンドゥ五兄弟の共通の妻、ドラウパディーの息子たち)
ね それを差し出せり
あまりにひどきその行為 ドゥルヨーダナは嫌悪けんおして
不快ふかいを示し非難ひなんせり
7-15
mâtâ s'is'ûnâm nidhanam sutânâm
nis'amya ghoram paritapyamânâ
tadârudad vâshpa-kalâkulâkshî
tâm sântvayann âha kirîthamâlî
惨殺ざんさつされし子供らの 母親であるドラウパディー
その報告に接するや 息絶えるほど驚愕きょうがく
苦しみもだえ泣き叫ぶ
“花の王冠おうかん戴く”と 世にしょうされるアルジュナは
妻をなぐさめ 斯く言えり
75

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7-16
tadâ s'ucas te pramrijâmi bhadre
yad brahma-bandhoh s'ira âtatâyinah
gândîva-muktair vis'ikhair upâhare
tvâkramya yat snâsyasi dagdha-putrâ
「おおうるわしきが妻よ そなたの涙ぬぐいとり
深き悲しみ慰めん
われただちにガーンディーヴァ1.の 弓を手に取り矢を放ち
卑劣ひれつきわまるバラモン2.の 首を落として持ち帰り
しかとそなたに捧ぐなり
そなたはそれを足でみ うららせしその後に
愛息あいそくたちを荼毘だび(火葬)に付し  沐浴もくよくをして清めかし」
1. ガーンディーヴァ…… アルジュナの愛弓、強弓。
  2. 卑劣極まるバラモン アシュワッターマンはドローナ(バラモン)の息子。
7-17
iti priyâm valgu-vicitra jalpaih
sa sântvayitvâcyuta-mitra-sûtah
anvâdravad dams'ita ugra-dhanvâ
kapi-dhvajo guru-putram rathena
斯くの如くに愛妻あいさいを 甘き言葉でなだめると
クリシュナ神を友に持ち 戦車の馭者ぎょしゃとする彼(アルジュナ)
よろいかぶとを身にまとい すさまじき弓たずさえて
二輪戦車にりんせんしゃび乗るや グル(ドローナ)の息子を追いかけり
7-18
tam âpatantam sa vilakshya dûrât
kumâra-hodvigna-manâ rathena
parâdravat prâna-parîpsur urvyâm
yâvad-gamam rudra-bhayâd yathâ kah
子供殺せし非道者ひどうしゃ(アシュワッターマン)
たけくるって突進とっしんす アルジュナを見て戦慄せんりつ
かつてルドラを恐れたる 太陽神のさまのごと
あわてふためき狼狽うろたえて 戦車走らせ逃げゆけり
76

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7-19
yadâs'aranam âtmânam
aikshata s'rânta-vâjinam
astram brahma-s'iro mene
âtma-trânam dvijâtmajah
やがて軍馬ぐんばは疲れ果て 援軍えんぐんもなき有様ありさま
おのが命を護るには 究極きゅうきょく武器ぶき(ブラフマ アストラ)使うより
ほかに手だては無きものと アシュワッターマン決意せり
7-20
athopaspris'ya salilam
sandadhe tat samâhitah
ajânann api samhâram
prâna-kricchra upasthite
生命いのち危機ききさらされし アシュワッターマンおろかにも
武器戻すすべ 知らぬまま 水できよめの儀式ぎしきをし
心をいつに集中し 矢筈やはず(武器を射るため)を弓につがえたり
7-21
tatah prâdushkritam tejah
pracandam sarvato dis'am
prânâpadam abhiprekshya
vishnum jishnur uvâca ha
はなたれしその武器からは 激烈げきれつな火が燃え上がり
あたりり一面おおいたり
が身にせまる火の猛威もうい 危機ききを感じたアルジュナは
  すがる思いでクリシュナに 斯くの如くに申したり
7-22
arjuna uvâca
krishna krishna mahâ-bâho
bhaktânâm abhayankara
tvam eko dahyamânânâm
apavargo 'si samsriteh
アルジュナは斯く申したり
「おおクリシュナよ! クリシュナよ! 強きかいなのクリシュナよ!
現世げんせごうに身をかる 帰依者きえしゃ苦難くなん取りのぞ
御身おんみ無二むにのおかたなり
77

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7-23
tvam âdyah purushah sâkshâd
îs'varah prakriteh parah
mâyâm vyudasya cic-chaktyâ
kaivalye sthita âtmani
御身おんみは原初プルシャにて プラクリティを超えられし
すべての御主みすであらせらる
神秘な力発揮はっきされ 幻力げんりょくの害受けられず
常に孤高ここうに座すおかた
7-24
sa eva jîva-lokasya
mâyâ-mohita-cetasah
vidhatse svena vîryena
s'reyo dharmâdi-lakshanam
マーヤーによる迷妄めいもうで 闇路やみじをたどる人類に
悟りへの道かさんと
ダルマ(正義)ほか修法しゅうほうを 御身おんみ自身で示されり
7-25
tathâyam câvatâras te
bhuvo bhâra-jihîrshayâ
svânâm cânanya-bhâvânâm
anudhyânâya câsakrit
御心みこころによりこの度も 地球の重荷のぞかんと
はたまた無限むげん実在じつざいの 御主おんしゅを常に瞑想めいそう
帰依する民を救わんと 化身けしんとなりて降下こうかさる
7-26
kim idam svit kuto veti
deva-deva na vedmy aham
sarvato mukham âyâti
tejah parama-dârunam
おおクリシュナよ! クリシュナよ!
あたり一面おおいたる このすさまじき光焔こうえん
はて何処いずこよりきたりしや 理解しがたきこの事態」
78

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7-27
s'rî-bhagavân uvâca
vetthedam drona-putrasya
brâhmam astram pradars'itam
naivâsau veda samhâram
prâna-bâdha upasthite
聖クリシュナはのたまわく
『ブラフマー神が管理する 火炎を放つ兵器なり
せまり来る死の恐怖から アシュワッターマンその武器ぶき
引き戻すすべ知らぬまま 打ち放ちたるものなりき
7-28
na hy asyânyatamam kin'cid
astram pratyavakars'anam
jahy astra-teja unnaddham
astra-jn'o hy astra-tejasâ
これに対抗たいこうできるのは 名だたる射手しゃしゅ御身おみのみぞ
閃光せんこう放つその武器を 制御せいぎょせしむる手立てだてとは
御身おみ強弓ごうきゅう引きしぼり 射撃しゃげきするほかなかりけり』
7-29
sûta uvâca
s'rutvâ bhagavatâ proktam
phâlgunah para-vîra-hâ
sprishthvâpas tam parikramya
brâhmam brâhmâstram sandadhe
≪聖仙スータ語られる≫
主の御言葉みことばを聴きしのち“殲滅者せんめつしゃよ”とたたえらる
武勇ぶゆうすぐれしアルジュナは
清めの水に手を触れて 主を周回しゅうかいしその後に
ブラフマーより賜りし
アシュワッターマン放ちたる 同じ武器をば(弓に)つがえたり
79

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7-30
samhatyânyonyam ubhayos
tejasî s'ara-samvrite
âvritya rodasî kham ca
vavridhâte 'rka-vahnivat
打ち上げられし双方の 矢が空中で激突げきとつ
紅蓮ぐれんほのお 天空てんくうを がさんばかりに燃え上がり
猛火もうかすべてをおおいたり
その灼熱しゃくねつ光球こうきゅうは 太陽のごと輝きて
世の終焉しゅうえん も斯くや…とも
7-31
drishthvâstra-tejas tu tayos
trîl lokân pradahan mahat
dahyamânâh prajâh sarvâh
sâmvartakam amamsata
ぶつかりあいし双方そうほうの 武器が発する光焔こうえん
三界さんがい隅々すみずみに 燃え広がりて焼き尽くす
人々は皆狂乱きょうらんし 宇宙がほろほのおぞと
阿鼻叫喚あびきょうかんさま てい
7-32
prajopadravam âlakshya
loka-vyatikaram ca tam
matam ca vâsudevasya
san'jahârârjuno dvayam
人々のなんそしてまた 地球の危険見てとりし
聖クリシュナの御意志ごいしにて
アルジュナはそく 双方そうほうの 武器を撤収てっしゅうしたるなり
7-33
tata âsâdya tarasâ
dârunam gautamî-sutam
babandhâmarsha-tâmrâksah
pas'um ras'anayâ yathâ
怒りのために目を赤く 燃え上がらせしアルジュナは
アシュワッターマンすぐらえ あたかも犠牲獣ぎせいじゅうのごと
ロープで固くしばりたり
80

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7-34
s'ibirâya ninîshantam
rajjvâ baddhvâ ripum balât
prâhârjunam prakupito
bhagavân ambujekshanah
しばりあげたる悪漢あっかんを 力まかせに引きずりて
わが妻が待つ陣営じんえいに 運ばんとするアルジュナに
蓮華れんげまなこクリシュナは 怒りを込めて申される
7-35
mainam pârthârhasi trâtum
brahma-bandhum imam jahi
yo 'sâv anâgasah suptân
avadhîn nis'i bâlakân
聖クリシュナはのたまわく
『おおアルジュナよ聞けよかし
なれらえし悪人に 情けをかける要はなし
この堕落だらくせしバラモンは みっつの罪を犯したり
まだ頑是がんぜなき少年を 熟睡じゅくすいしたる陣営で
夜陰やいんにまぎれ殺したる 卑劣ひれつなる者なるぞ
7-36
mattam pramattam unmattam
suptam bâlam striyam jadam
prapannam viratham bhîtam
na ripum hanti dharma-vit
ダルマや人の本分ほんぶんを くわしく知りし者たちは
酔っている者 無頼漢ぶらいかん 狂気の者や眠る者
子供と女性 愚か者 おびえし者や難民や
戦車くせし者達を 殺すことなど有りなし
81

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7-37
sva-prânân yah para-prânaih
prapushnâty aghrinah khalah
tad-vadhas tasya hi s'reyo
yad-dosâd yâty adhah pumân
他者たしゃ犠牲ぎせいの上に立ち おのれ保身ほしんはかる者
この無情むじょうなる悪漢あっかんは 殺されてこそ救われる
彼が命をばすなば 尚一層に罪重ね
堕落だらく一途いっと 辿たどるゆえ
7-38
pratis'rutam ca bhavatâ
pân'câlyai s'rinvato mama
âharishye s'iras tasya
yas te mânini putra-hâ
更にそなたは吾が前で 愛する妻の悲しみを
慰めんとてねんごろに
息子殺せし悪漢の〈首を必ず取り来る〉と
固く約束したるなり
7-39
tad asau vadhyatâm pâpa
âtatâyy âtma-bandhu-hâ
bhartus' ca vipriyam vîra
kritavân kula-pâmsanah
武勇勝れしアルジュナよ 幼き子供殺害し
一族の名をはずかし
主人(ドゥルヨーダナ)にさえも見放さる
この悪辣あくらつ罪人つみびとは 殺されてこそしかるべき』
82

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7-40
sûta uvâca
evam parîkshatâ dharmam
pârthah krishnena coditah
naicchad dhantum guru-sutam
yadyapy âtma-hanam mahân
≪聖仙スータ語られる≫
斯くの如くにアルジュナは
“如何にダルマを守るか”を 聖クリシュナに試されり
偉大な御魂みたまアルジュナは
主に『殺すよう』指示さるも
子等の命を奪いたる ドローナ息を殺さざり
7-41
athopetya sva-s'ibiram
govinda-priya-sârathih
nyavedayat tam priyâyai
s'ocantyâ âtma jân hatân
ゴーヴィンダ(クリシュナ)よ!と親しみて
戦車の馭者ぎょしゃとする彼(アルジュナ)
わが陣営に帰るなり 
非道ひどうに死せる子ら想い 打ちひしがれしが妻に
アシュワッターマン引きえて 捕らえしことを知らせたり
7-42
tathâhritam pas'uvat pâs'a-baddham
avân-mukham karma-jugupsitena
nirîkshya krishnâpakritam guroh sutam
vâma-svabhâvâ kripayâ nanâma ca
動物のごと縛られて
連れてこられし罪人つみびと(アシュワッターマン)
恥じて項垂うなださまを見て 慈愛に富めるドラウパディー
子らを殺せし憎むべき 師の息子なる咎人とがびと
憐憫れんびんじょうこみ上げて 頭を低く下げられり
83

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7-43
uvâca câsahanty asya
bandhanânayanam satî
mucyatâm mucyatâm esha
brâhmano nitarâm guruh
心優こころやさしきドラウパディー 見るにえざるそのさま
常にもあらず荒々あらあらと 斯くの如くに申したり
「すぐさまばくを解き放ち 彼に自由を与うべし
ブラーフマナの家系かけいなる 尊敬すべきお方なり
7-44
sarahasyo dhanur-vedah
savisargopasamyamah
astra-grâmas' ca bhavatâ
s'ikshito yad-anugrahât
弓矢ゆみやじゅつやその奥義おうぎ 武器のち方もどし方
御身おんみに教え給いしは 師のドローナにほかならず
7-45
sa esha bhagavân dronah
prajâ-rûpena vartate
tasyâtmano 'rdham patny âste
nânvagâd vîrasûh kripî
大恩だいおんのあるドローナは
彼の息子の姿とり 今 眼前がんぜんりたもう
師の令夫人れいふじんクリピーは 息子を得たるほまれれにて
つま御跡みあと(殉死じゅんし)に従わず 今 存命ぞんめいであらせらる
7-46
tad dharmajn'a mahâ-bhâga
bhavadbhir gauravam kulam
vrijinam nârhati prâptum
pûjyam vandyam abhîkshnas'ah
ダルマに通じに強く 理知にすぐれしわがつま
尊敬すべき名門めいもんの グルの家族の皆様が
御身様方おみさまがたの手によりて 悲しみ 痛み受けるのは
許されるべきことならず
84

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7-47
mâ rodîd asya jananî
gautamî pati-devatâ
yathâham mrita-vatsârtâ
rodimy as'ru-mukhî muhuh
最愛の子ら失いて われの嘆きや悲しみは
たとえようなく深きもの
アシュワッターマンお母上 ドローナ夫人ガウタミー
おっとを神とあがめたる この純情なご婦人に
同じ悲嘆ひたんを与えまじ 涙でほほらさまじ
7-48
yaih kopitam brahma-kulam
râjanyair ajitâtmabhih
tat kulam pradahaty âs'u
sânubandham s'ucârpitam
嘆き悲しみ 激怒げきどした ブラーフマナの恨みにて
王家おうけの者はことごとく 燃やし尽くされ滅ぶらん
それらの事態じたい 起きしなば
未熟みじゅく自己じこの罪なりと 心に銘記めいきなされませ」
7-49
sûta uvâca
dharmyam nyâyyam sakarunam
nirvyalîkam samam mahat
râjâ dharma-suto râjn'yâh
pratyanandad vaco dvijâh
≪聖仙スータ語られる≫
おお神聖なリシたちよ
ダルマのそくと称されし ユディシュティラ大王は
ダルマにかな公正こうせいで あわれみに満ち平等びょうどう
正しき道をしめす 愛する佳妃かひ(ドラウパディー)べしこと
すべてを歓迎せられたり
85

一巻 七章 ヴィヤーサ シュカに神譚しんたん伝授でんじゅする
7-50
nakulah sahadevas' ca
yuyudhâno dhanan'jayah
bhagavân devakî-putro
ye cânye yâs' ca yoshitah
ナクラ サハデーヴァ サーティヤキ
アルジュナそしてクリシュナら
居合いあわす女性男性が 王妃おうひべし考えに
賛意さんいひょうし同意せり
7-51
tatrâhâmarshito bhîmas
tasya s'reyân vadhah smritah
na bhartur nâtmanas' cârthe
yo 'han suptân s'isûn vrithâ
ビーマ怒りて唯一人 処刑しょけいもとめて主張しゅちょうせり
此奴こやつはなんと卑怯ひきょうにも おのがためにも主人にも
なんのえきにもならざるに 眠れる若き子供らを
惨殺ざんさつしたる犯罪者はんざいしゃ 死を与うのが至当しとうなり」
7-52
nisamya bhima-gaditam
draupadyas ca catur-bhujah
alokya vadanam sakhyur
idam aha hasann iva
ビーマセーナ(ビーマ)とその妻(ドラウパディー)
二人の話聞きしのち 頬笑ほほえみ浮かべ クリシュナは
揶揄やゆするごとき仕草しぐさにて アルジュナの顔 眺めつつ
斯くの如くに語られり
86

一巻 七章 ヴィヤーサ シュカに神譚しんたん伝授でんじゅする
7-53・54
s'rî-bhagavân uvâca
brahma-bandhur na hantavya
âtatâyî vadhârhanah
mayaivobhayam âmnâtam
paripâhy anus'âsanam

kuru pratis'rutam satyam
yat tat sântvayatâ priyâm
priyam ca bhîmasenasya
pân'câlyâ mahyam eva ca
聖クリシュナはのたまわく
『たとえ価値かちなきバラモンも 虐殺ぎゃくさつされるべきでなし
なれど凶徒きょうとは殺すべし
あれまさしく聖典せいてんに その両方りょうほうに従へと
述べて教えしはずなりき
ゆえにそなたは両方を ダルマによりて勘案かんあん
ただしきさばくだすべき
そしてそなたは愛妻を なだすかしてちかいたる
約束果たす責務あり
ビーマセーナやドラウパディー そして私がりて
納得なっとくできる裁決さいけつを そなたは下すべきなりき』
7-55
sûta uvâca
arjunah sahasâjn'âya
harer hârdam athâsinâ
manim jahâra mûrdhanyam
dvijasya saha-mûrdhajam
≪聖仙スータ語られる≫
即座そくざにハリの御心みこころを 得心とくしんしたるアルジュナは
つるぎ取り上げバラモン(アシュワッターマン)
頭頂とうちょうにある宝石ほうせきを かみもろともに切りとりぬ
87

一巻 七章 ヴィヤーサ シュカに神譚しんたん伝授でんじゅする
7-56
vimucya ras'anâ-baddham
bâla-hatyâ-hata-prabham
tejasâ maninâ hînam
s'ibirân nirayâpayat
子供殺せし罪過ざいかにて
ほませたるバラモン(アシュワッターマン)
光り輝く宝石を 剥奪はくだつされて悄然しょうぜん
ばくかれてはなたれし
7-57
vapanam dravinâdânam
sthânân niryâpanam tathâ
esha hi brahma-bandhûnâm
vadho nânyo 'sti daihikah
頭頂の髪落とされて ざい没収ぼっしゅうされしうえ
領域りょういきからの追放ついほうは 罪おかしたる僧侶そうりょ(バラモン)への
死刑しけい比肩ひけんするほどの もっとも重きばつなりき
7-58
putra-s'okâturâh sarve
pândavâh saha krishnayâ
svânâm mritânâm yat krityam
cakrur nirharanâdikam
息子むすこ失い悲嘆ひたんする パーンドゥ家の人たちは
ドラウパディーとちて いくさで死せる勇士ゆうしらの
火葬かそうやその他ふさわしき 告別こくべつぎょうじたり
第七章 終了
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