一章 聖者せいじゃシャウナカの懇請こんせい


第一章【聖者せいじゃシャウナカの懇請こんせい



om namo bhagavate vâsudevâya
janmâdy asya yato 'nvayâd itaratas' cârtheshv abhijn'ah svarâth
tene brahma hridâ ya âdi-kavaye muhyanti yat sûrayah
tejo-vâri-mridâm yathâ vinimayo yatra tri-sargo 'mrishâ
dhâmnâ svena sadâ nirasta-kuhakam satyam param dhîmahi
1-1




オーム
永久とわに実在されたもう 根本原主こんぽんげんしゅバガヴァーン
ヴァースデーヴァ クリシュナを 伏して崇敬すうけいたてまつる
 
 

すべての界に遍在へんざいし すべてを熟知じゅくちされるしゅは 宇宙創造意図いとなされ
初めに生みしブラフマーに ヴェーダ知識をねんごろに
そのフリダヤで授けらる
神意を受けし創造神(ブラフマー神) プラクリティを転変てんぺん
つくり出されしトリグナで
太陽がその光にて 火の無きとこに火を見せて(焦点)1.
水が地上(逃げ水)2.にあるごとく 地が海上のもの(蜃気楼しんきろう)3.のごと
マーヤーシャクティ(神的幻力)多用たようして 現象界をあらわさる
 
 
主はみずからの光輝こうきにて マーヤーシャクティ超越ちょうえつ
はじめも無くて終わりなき 常世とこよさと(ヴァイクンタ)に住みたもう
 
 
まこと主こそは絶対神 すべての界の根原主こんげんしゅ
かくも尊き至上主しじょうしゅを 心中深く憶念おくねんし 帰命きみょう頂礼ちょうらいたてまつる

       
1. 焦点…… 太陽の光を凸レンズで集めると、この点に置いた黒い紙が焦げる
      ところからの語彙。
  2. 逃げ水… 砂地や舗装道路で、前方に水溜まりあるかのように見え、近づく
      とその先に移っていく現象。光の異常屈折によるもので、強い日射で
      地面が非常に熱せられたときに見られる。
  3. 蜃気楼… 大気の下層に温度などの密度差があるとき、光の異常屈折により、
      地上の物体が浮き上がって見えたり、逆さまに見えたり、遠くの
      物体が近くに見えたりする現象。海上や砂漠で起こる。日本では
      富山湾で見られる。              【出典大辞泉】
1

一章 聖者せいじゃシャウナカの懇請こんせい


dharmah projjhita-kaitavo 'tra paramo nirmatsarânâm satâm
vedyam vâstavam atra vastu s'ivadam tâpa-trayonmûlanam
s'rîmad-bhâgavate mahâ-muni-krite kim vâ parair îs'varah
sadyo hridy avarudhyate 'tra kritibhih s'us'rûshubhis tat-kshanât
1-2




壮麗そうれいにして比類ひるいなき 主を物語る神譚しんたん(バーガヴァタ プラーナ)
自己の欲望打ち捨てて 虚偽きょぎくだきし有徳者うとくしゃ
ヴィヤーサ デーヴァ聖仙が 完成されし聖頌せいじゅ(聖なる詩)なり
この詩のせつかかげらる 真理ののりを探究し
その聴聞ちょうもんを熱心に 願う賢者をでられて
主はたちまちに胸奥きょうおう(フリダヤ)に その御姿みすがたあらわさる
くてその時三重さんじゅうの 浮世の苦悩消滅し 安寧あんねいさち もたらさる
この最高の救済きゅうさいが ほかの手立てでるや
これにまされる真理なし



nigama-kalpa-taror galitam phalam
s'uka-mukhâd amrita-drava-samyutam
pibata bhâgavatam rasam âlayam
muhur aho rasikâ bhuvi bhâvukâh
1-3




思慮しりょある道の求道者ぐどうしゃ
香りただよれしの 魅力に満ちし神譚しんたん
解脱げだつかなえるカルパカじゅ
かくも得がたき神譚を 聖仙シュカが語らえば
その味わいは甘露かんろにて かれざる者なかりけり
永遠とわの真理の会得者えとくしゃも たえなるラサ(神の機微きび)醍醐味だいごみ
陶然とうぜんとして味わいぬ









2

一章 聖者せいじゃシャウナカの懇請こんせい


naimishe 'nimisha-kshetre
rishayah s'aunakâdayah
satram svargâya lokâya
sahasra-samam âsata
1-4

 


かつ聖森せいしんナイミシャで シャウナカひきいる聖者らが
至上主しじょうしゅ たた賛仰さんごうし 帰依者きえしゃの幸を祈願する 千年祭祀せんねんさいしぎょうじたり



ta ekadâ tu munayah
prâtar huta-hutâgnayah
sat-kritam sûtam âsînam
papracchur idam âdarât
1-5




ある朝早く聖者らは つどいて祭火さいか捧げ終え
ヴェーダの奥義おうぎきわめたる シュリーラ スータ聖仙せいせん
敬意をもちて言上ごんじょうす 「なにとぞ御座みざにおきあれ」



rishaya ûcuh
tvayâ khalu purânâni
setihâsâni cânagha
âkhyâtâny apy adhîtâni
dharma-s'âs'trâni yâny uta
1-6





そして聖者らいわくには 「聖なるスータ ゴースワミー
正統せいとうヴェーダ聴聞ちょうもんし あますことなく受けがれ
四つの罪1.ことごとく はらい清めし御方おんかた
のりの書 史伝しでんきわめたる その博識はくしき開陳かいちん
真理の奥義おうぎ 説き給え

1. 四つの罪… 不正な性関係、屠殺、陶酔物、賭博。











3

一章 聖者せいじゃシャウナカの懇請こんせい


yâni veda-vidâm sreshthho
bhagavân bâdarâyanah
anye ca munayah sûta
parâvara-vido viduh
1-7




ヴィヤーサ デーヴァ説きたもう ヴェーダ聖典 精通せいつう
形而上下けいじじょうげ両知りょうちり 六派ろっぱの説に通じられ
それらの真理 会得えとくして 説きて聞かせるお方なり



vettha tvam saumya tat samam
tattvatas tad-anugrahât
brûyuh snigdhasya s'ishyasya
guravo guhyam apy uta
1-8




英邁えいまいにして慎ましく 師の信頼が厚きゆえ
深遠しんえんなりし真理をば つぶさに伝授でんじゅされたもう
い願わくばそのずいを 我らに説きて明かされよ



tatra tatrân'jasâyushman
bhavatâ yad vinis'citam
pumsâm ekântatah s'reyas
tan nah s'amsitum arhasi
1-9




長寿の徳を授かりし 恩寵おんちょう厚きスータ師よ
人を救済するための 究極きゅうきょくの智と認められ
会得えとくなされし真髄しんずいを くら世人せじんにお説きあれ




prâyenâlpâyushah sabhya
kalâv asmin yuge janâh
mandâh sumanda-matayo
manda-bhâgyâ hy upadrutâh
1-10




このカリユガに生くる者 よわい短くそう多し
不運をかこち心荒れ 無明むみょうのなかをさまよえり



4

一章 聖者せいじゃシャウナカの懇請こんせい


bhûrîni bhûri-karmâni
s'rotavyâni vibhâgas'ah
atah sâdho 'tra yat sâram
samuddhritya manîshayâ
brûhi bhadrâya bhûtânâm
yenâtmâ suprasîdati
1-11






語りがれし聖典は 厖大ぼうだいにして多種多様たしゅたよう
しかるにカリの人々は 短命ゆえにまなび得ず
怠惰たいだのゆえに行厭ぎょういと
おおスータ師よお説きあれ
会得えとくなされし奥義おうぎこそ 悟りへの道示すなり
カリ世を生くるなり



sûta jânâsi bhadram te
bhagavân sâtvatâm patih
devakyâm vasudevasya
jâto yasya cikîrshayâ
1-12




栄光あれよスータ師に!
聖クリシュナが御意志にて
ヴァスデーヴァとデーヴァキー 二人のもと御子みことして
降誕こうたんされし瑞祥ずいしょうを 熟知じゅくちなされる御方おんかた



tan nah s'us'rûshamânânâm
arhasy angânuvarnitum
yasyâvatâro bhûtânâm
kshemâya ca bhavâya ca
1-13




聖なるスータ ゴースワミー
悟りへの道ひたすらに はげむ我らの道標みちしるべ 尊き神の聖譚せいたん
継承けいしょうされてかれたる 歴代の師を見倣みなろうて
我らにとくとお説きあれ
闇に沈みしカリの世を 永久とわの真理で啓蒙けいもう
光の虹をけたまえ




5

一章 聖者せいじゃシャウナカの懇請こんせい


âpannah samsritim ghorâm
yan-nâma vivas'o grinan
tatah sadyo vimucyeta
yad bibheti svayam bhayam
1-14




しゅ御名みなこそをよみすべし
輪廻りんねふちに溺れても 御名みなひたすらに唱えれば
主の胸奥きょうおういだかれん
その寂静じゃくじょうよ平安よ すべてのおそれ消え失せて
ただあるものは至福しふくのみ



yat-pâda-sams'rayâh sûta
munayah pras'amâyanâh
sadyah punanty upasprishthâh
svardhuny-âpo 'nusevayâ
1-15




蓮華れんげ御足みあし一筋に すべて(を)ゆだねし聖者たち
なかにきわ立つ覚者かくしゃこそ その名はスータ ゴースワミー
われらの深き罪咎つみとがを しゅんはらう師の御業みわざ
蓮華れんげ御足みあし 水源みなもとの ガンジス河に勝るなり



ko vâ bhagavatas tasya
punya-s'lokedya-karmanah
s'uddhi-kâmo na s'rinuyâd
yas'ah kali-malâpaham
1-16




ああ がための神譚ぞ
カリ世のけがれ清めんと 神が与えし物語
その拝聴はいちょうこばむ者 いづくの地にやたるらん











6

一章 聖者せいじゃシャウナカの懇請こんせい


tasya karmâny udârâni
parigîtâni sûribhih
brûhi nah s'raddadhânânâm
lîlayâ dadhatah kalâh
1-17




吟遊聖者ぎんゆうせいじゃ(ナーラダ)詠唱えいしょうす 気高けだかき神の妙法みょうほう
ああ美しき化身譚けしんたん なにとぞスータお説きあれ



athâkhyâhi harer dhîmann
avatâra-kathâh s'ubhâh
lîlâ vidadhatah svairam
îs'varasyâtma-mâyayâ
1-18




聖賢せいけんスータ ゴースワミー
全能の主の神秘なる マーヤーによる御事績ごじせき(リーラー)
吉兆きっちょう優美ゆうび(な)神譚しんたんを なにとぞわれらに語られよ



vayam tu na vitripyâma
uttama-s'loka-vikrame
yac-chrinvatâm rasa jn'ânâm
svâdu svâdu pade pade
1-19




バガヴァーンとのえにしにて
英知と至福授かりし 御師おんしが語る真髄しんずい
われらは喜悦きえつに導かる きることなどり得なし



kritavân kila karmâni
saha râmena kes'avah
atimartyâni bhagavân
gûdhah kapatha-mânushah
1-20




聖なる化身クリシュナは 兄バララーマ共々に
人の姿をとりたまい ともにたわむれ楽しまる
なれど化身の戯れは 人知じんちの及びつかぬもの
幻想的げんそうてき御力みちからで 主の真実の様相ようそう
すべておおいて隠される


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一章 聖者せいじゃシャウナカの懇請こんせい


kalim âgatam âjn'âya
kshetre 'smin vaishnave vayam
âsinâ dîrgha-satrena
kathâyâm sakshanâ hareh
1-21




ついに“カリの世”到来とうらいす 至上主たたう者たちの
ゆかりも深きこの森で 千年せんねん祭祀さいし行いて
聖クリシュナの物語 聴聞ちょうもんせんとつどいたり



tvam nah sandars'ito dhâtrâ
dustaram nistitîrshatâm
kalim sattva-haram pumsâm
karna-dhâra ivârnavam
1-22




カリ世をおお常闇とこやみで ダルマ衰えそう多し
神の化身けしんの救済を 唯ひたすらに渇仰かつごう
逆巻さかま怒涛どとう 越えてゆく 永久とわさとへの船長ふなおさ
恩寵おんちょうにより出会いたる 尊師そんしをおいてほかになし



brûhi yoges'vare krishne
brahmanye dharma-varmani
svâm kâshthhâm adhunopete
dharmah kam s'aranam gatah
1-23




根本原主クリシュナが 常世とこよさと身罷みまかられ
庇護ひご失いし諸人もろびとの 輪廻りんねくさり つすべを
なにとぞお説きあれかしと 我らつどいてい願う」



第一章 終了




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