二十四章 シヴァは主への賛歌を王子等に伝授さる
第二十四章【シヴァは主への賛歌を王子等に伝授さる】
maitreya uvâca
vijitâsvo 'dhirâjasît
prthu-putrah prthu-sravâh
yavîyobhyo 'dadât kâsthâ
bhrâtrbhyo bhrâtr-vatsalah
24-1
マイトレーヤは述べられり
「プリトゥ王が出家され 名声高き息子なる
ヴィジターシュヴァが皇帝の 名跡を継ぐこととなる
愛情厚き皇帝は 弟たちのそれぞれに
国土を分けて 与えらる
haryaksâyâdisat prâcîm
dhûmrakesâya daksinâm
pratîcîm vrka-samjnâya
turyâm dravinase vibhuh
24-2
ハリャクシャに東の地 ドゥームラケーシャに南の地
ヴリカという名の弟は 西方の地を与えらる
ドラヴィナスなる四人目は 北方の地の長とせり
antardhâna-gatim sakrâl
labdhvântardhâna-samjnitah
apatya-trayam âdhatta
sikhandinyâm susammatam
24-3
ヴィジターシュヴァ皇帝は インドラ神の秘伝なる
“隠遁の術”授けられ アンタルダーナと 呼称さる
シクハンディニーの間には 三人の子供授かれり
337
二十四章 シヴァは主への賛歌を王子等に伝授さる
pâvakah pavamânas ca
sucir ity agnayah purâ
vasistha-sapad utpannah
punar yoga-gatim gatah
24-4
プリトゥ王の名跡を 継ぎて覇王の座につきし
ヴィジターシュヴァと妃の息子
パーヴァカそしてパヴァマーナ シュチという名の三人は
火神アグニがその昔 偉大な聖者ヴァシシュタに
呪いをうけてこの界に 〔人〕と生まれし者なりき
されど修行の甲斐ありて やがてアグニに復活す
antardhâno nabhasvatyâm
havirdhânam avindata
ya indram asva-hartâram
vidvân api na jaghnivân
24-5
父プリトゥが百馬供犠 催行せんとしたる時
インドラ神が馬盗み 妨害せしを知りながら
アンタルダーナ(ヴィジターシュヴァのこと)皇帝は
それを躊躇い討たざりき
その皇帝は別の妃に ハヴィルダーナを生ませたり
râjnâm vrttim karâdâna-
danda-sulkâdi-dâ unâm
manyamâno dîrgha-sattra-
vyâjena visasarja ha
24-6
ハヴィルダーナ息男は ソーマ祭儀を長期化し
そを口実に王たちの 収入増を計らいて
税や罰金 献金を 厳に取り立て 違反者を
厳しく処罰なされたり
338
二十四章 シヴァは主への賛歌を王子等に伝授さる
tatrâpi hamsam purusam
paramâtmânam âtma-drk
yajams tal-lokâtam âpa
kusalena samâdhinâ
24-7
然れど王は斯くのごと 息子の所業 黙殺し
普遍 至高の最高我 クリシュナ神に専注し
魂の本質 極めたり 而して王は父王と
同じ境地に到達し 不変の郷に至りたり
havirdhânâd dhavirdhânî
vidurâsuta sat sutân
barhisadam gayam suklam
krsnam satyam jitavratam
24-8
偉大な祖父(プリトゥ)と父(アンタルダーナ)を持つ
ハヴィルダーナとその妻の ダヴィルダーニーの間から
おおヴィドゥラよ 六人の バルヒサドなる息男と
ガヤとシュクラとそしてまた クリシュナ サティヤ ジタヴラの
名を持つ息子 誕生す
barhisat sumahâ-bhâgo
hâvirdhânih prajâpatih
kriyâ-kândesu nisnâto
yogesu ca kurûdvaha
24-9
やがてその後大いなる 幸運を持つバルヒサド
ハヴィルダーナ父王の 名跡を継ぎ 王となる
プラジャーパティでありながら 更にヨーガをよく行じ
おおヴィドゥラよ 彼の王は 見事な成果上げられり
339
二十四章 シヴァは主への賛歌を王子等に伝授さる
yasyedam deva-yajanam
anuyajnam vitanvatah
prâcînâgraih kusair âsîd
âstrtam vasudhâ-talam
24-10
王は各所で供犠行じ 葉の先端を東方に
向けしクシャ草 敷き詰めて 地球すべてを覆う程
供犠や祭祀を行いて 神々たちを喜ばす
sâmudrîm devadevoktâm
upayeme satadrutim
yâm vîksya câru-sarvângîm
kisorîm susthv-alankrtâm
parikramantîm udvâhe
cakame 'gnih sukîm iva
24-11
かかる見事な王ゆえに ブラフマー神に勧められ
シャタドルティなる海神の 美しき娘と結ばれり
牝の仔馬の様に似て 溌剌としたその肢体
魅力溢るる愛らしさ 婚礼用の装飾で
客の周りを巡りつつ 披露目の会釈する彼女
目にも綾なる美々しさに かつてシュキーを愛慕した
アグニのごとき恋情が 辺り一面 漂えり
vibudhâsura-gandha rva-
muni-siddha-naroragâh
vijitâh sûryayâ diksu
kvanayantyaiva nûpuraih
24-12
学者 賢人 聖仙や ガンダルヴァや魔族たち
シッダや人やナーガたち 足につけたる鈴鳴らし
歩く彼女の美麗さに 全ての者が魅了さる
340
二十四章 シヴァは主への賛歌を王子等に伝授さる
prâcînabarhisah putrâh
satadrutyâm dasâbhavan
tulya-nâma-vratâh sarve
dharma-snâtah pracetasah
24-13
プラーチーナバリ(バルヒサド)大王と シャタドルティの間から
生まれし息子十人は プラチェータスと呼ばれたり
英明にして良く学ぶ 彼等は法規 遵守して
兄弟共に生活し 等しく神を尊びぬ
pitrâdistâh prajâ-sarge
tapase 'rnavam âvisan
dasa-varsa-sahasrâni
tapasârcams tapas-patim
24-14
仲睦まじき鴛鴦の 契り 結びしご夫婦が
設けられたる十人の 父の意向に忠実な
まこと優れし息子等は 禁欲の行 するために
一万年の長き間を 海かと紛う湖に入りて
一意専心至上主を 思慕し崇拝 賛美せり
yad uktam pathi drstena
girisena prasîdatâ
tad dhyâyanto japantas ca
pûjayantas ca samyatâh
24-15
修行の途次で出会いたる シヴァ神により教えらる
沈思すること 謳うこと 尊ぶことや 制すこと
これらを遵守することで 多くのものを得たるなり」
341
二十四章 シヴァは主への賛歌を王子等に伝授さる
vidura uvâca
pracetasâm giritrena
yathâsit pathi sangamah
yad utâha harah prîtas
tan no brahman vadârthavat
24-16
ヴィドゥラは斯くて申したり
「聖知に満ちし聖仙よ プラチェータス(10人の王の息子達)の面々が
修行の途次に如何にして シヴァに出会いて斯くのごと
戴き難き金言を 授かりたるや?その理由を
何とぞそれを吾々に <語り給え>と請うるなり
sangamah khalu viprarse
siveneha sarîrinâm
durlabho munayo dadhyur
asangâd yam abhîpsitam
24-17
おおバラモンの至高者よ 何とぞ教え給えかし
肉の身を持つ吾々が シヴァに拝顔できるなど
正しく稀有なことならん 執着すべて切り捨てて
サットヴァになりし聖者さえ 瞑想により見えるに…
âtmârâmo 'pi yas tv asya
loka-kalpasya râdhase
saktyâ yukto vicarati
ghotayâ bhagavân bhavah
24-18
有限であるこの宇宙 時がきたれば破壊され
やがて再び誕生す 宇宙循環担われる
三神であるシヴァ神は 世界 放浪されながら
この万象を救わんと 強き力を発揮され
必要あれば援助さる おお崇むべきシヴァ神よ」
342
二十四章 シヴァは主への賛歌を王子等に伝授さる
maitreya uvâca
pracetasah pitur vâkyam
sirasâdâya sâdhavah
disam pratîcîm prayayus
tapasy âdrta-cetasah
24-19
マイトレーヤは述べられり
「プラチェータスは英邁で 父の言葉を銘肝し
十人の息子等全員が 苦行に集中するために
西方向けて旅立ちぬ
sa-samudram upa vistîrnam
apasyan sumahat sarah
mahan-mana iva svaccham
prasanna-salilâsayam
24-20
しばらく行きし十人は 海の如くに広大で
満々と満つ 澄みし水 生き物全て包含し
安らぎ與う 滋味深き 美しき湖に到着す
nîla-raktotpalâmbhoja-
kahlârendîvarâkaram
hamsa-sârasa-cakrâhva-
kârandava-nikûjitam
24-21
その湖に咲きほこる 赤や青した睡蓮や
青蓮花とか白蓮華 真水に映えて美しく
白鳥や鶴 赤き鴨 家鴨の類 群れ遊び
静かな湖面 輪を描く
343
二十四章 シヴァは主への賛歌を王子等に伝授さる
matta-bhrama ra-sausvarya-
hrsta-roma-latânghripam
padma-kosa-rajo diksu
viksipat-pavanotsavam
24-22
池の周りは蔓草や 木々が茂りて緑成し
昼咲く蓮華 陽に映えて 花の香りをまき散らす
興奮したる蜜蜂が 羽音大きく響かせて
そよ風に乗りサフランの 花粉が広く舞い散りぬ
さながら池の生物の 饗宴のごと艶やかさ
tatra gândharvam âkarnya
divya-mârga-manoharam
visismyû râja-putrâs te
mrdanga-panavâdy anu
24-23
そこへかすかな音色して 耳をすますと天上の
音楽のごと美しき 心を魅する詩 聞こゆ
やがて太鼓が加わりて 徐々に近づく様相に
バルヒサド王十人の 王子全員驚きぬ
tarhy eva sarasas tasmân
niskrâmantam sahânugam
upagîyamânam amara-
pravaram vibudhânugaih
tapta-hema-nikâyâbham
siti-kantham tri-locanam
prasâda-sumukham vîksya
pranemur jâta-kautukâh
24-24・25
するとその時 湖の 中から水を滴らせ
顕れましし男性は 精錬したる灼熱の
黄金の如き肌をして 賛歌を謳う従者等を
引き連れられし三神の 卓越したる勇姿なり
その肌色と青き喉 三の眼をした慈悲深き
美しき顔 その光輝 自ず心が崇敬の
想いに溢れ 王子等は 深く拝礼いたしたり
344
二十四章 シヴァは主への賛歌を王子等に伝授さる
sa tân prapannârti-haro
bhagavân dharma-vatsalah
dharma jnân sîla-sampannân
prîtah prîtân uvâca ha
24-26
あらゆる危難打ち払う 崇拝すべき聖シヴァは
己のすべき義務を知り 法の遵守に忠実な
品性高き息子等が 吾が姿見て驚喜する
その息子等に満足し 次の如くに話されり
srî-rudra uvâca
yûyam vedisadah putrâ
viditam vas cikîrsitam
anugrahâya bhadram va
evam me darsanam krtam
24-27
聖シヴァ神は述べられり
〈おおヴェーディシャドの息子等よ 聡明にして英明な
御身等の望む恩寵や 全てにわたる幸運を
授けん為にこの吾の 姿 顕現いたしたり
yah param ramhasah sâksât
tri-gunâj jîva-samjnitât
bhagavantam vâsudevam
prapannah sa priyo hi me
24-28
三つのグナで造られし 肉体を持つジーヴァが
超越的な至上主の 分魂なりと自覚して
根本主なるクリシュナに 献身奉仕する者は
吾にとりても愛しくて 親しき者とおぼゆなり
345
二十四章 シヴァは主への賛歌を王子等に伝授さる
sva-dharma-nisthah sata janmabhih pumân
virincatâm eti tatah param hi mâm
avyâkrtam bhâgavato 'tha vaisnavam
padam yathâham vibudhâh kalâtyaye
24-29
自己のダルマに専心し 百の生涯送りたる
肉体持ちし人間は ブラフマー神に達すらん
さらにその上 徳積まば 吾に達するは定かなり
而れども主を崇拝し 御主一筋に帰依すれば
吾も聖者も帰滅後に ようやく入る主の胎に
純な帰依者はこの生が 終わりし時に入るなり
atha bhâgavatâ yûyam
priyâh stha bhagavân yathâ
na mad bhâgavatânâm ca
preyân anyo 'sti karhicit
24-30
其方等すべて至上主を 深く愛する帰依者なり
それ故吾も其方等を 愛しく思い 親しめり
また御身達もこの吾を 御主同様に 慕うらん
いつの場合も帰依者ほど 祝福される者は無し
idam viviktam japtavyam
pavitram mangalam param
nihsreyasa-karam câpi
srûyatâm tad vadâmi vah
24-31
おお聴きたまえ息子等よ 吾が今から謳うのは
聴く者すべて 純粋な 至福の境に導きて
吉兆与う最高の 卓越したる教説ぞ〉」
346
二十四章 シヴァは主への賛歌を王子等に伝授さる
maitreya uvâca
ity anukrosa-hrdayo
bhagavân âha tân chivah
baddhânjalîn râja-putrân
nârâyana-paro vacah
24-32
マイトレーヤは述べられり
「斯くの如くに主 シヴァは 崇敬すべき至上主の
卓越したる数々を 合掌をして並び立つ
プラチェータスに語りたり
srî-rudra uvâca
jitam ta âtma-vid-varya-
svastaye svastir astu me
bhavatârâdhasâ râddham
sarvasmâ âtmane namah
24-33
シヴァ神は斯く 唱えらる
〈全てに満ちる至上主よ 輝き亘る至高者の
吉兆の場にこの吾も 存在するを許されよ
最高原主クリシュナに 帰命頂礼奉る
namah pankaja-nâbhâya
bhûta-sûksmendriyâtmane
vâsudevâya sântâya
kûta-sthâya sva-rocise
24-34
タンマートラや五元素や 行為器官や感覚や
個我の基なる最高主 寂静にして平安で
不変の光輝 放たれる 臍に蓮持つ根源主
ヴァースデーヴァ クリシュナに 帰命頂礼奉る
347
二十四章 シヴァは主への賛歌を王子等に伝授さる
sankarsanâya sûksmâya
durantâyântakâya ca
namo visva-prabodhâya
pradyumnâyântar-âtmane
24-35
非顕現なる霊妙な 原子を結ぶ支配者(サンカルシャナ)で
悪しき者には崩壊の 運命を与う支配者よ
宇宙発展意図される 愛と知性のプラドゥムナ
個我の心の支配者に 帰命頂礼奉る
namo namo 'niruddhâya
hrsîkesendriyâtmane
namah paramahamsâya
pûrnâya nibhrtâtmane
24-36
不生不滅(アニルッダ)の至上主を
フリケーシャ(感覚の支配者)とも人は呼ぶ
具象化したる物からは 隔絶したる境域に
永久に坐しますクリシュナに 帰命頂礼奉る
svargâpavarga-dvârâya
nityam suci-sade namah
namo hiranya-vîryâya
câtur-hotrâya tantave
24-37
至福の極地 目指すには 心の浄化 励むべし
清き心(フリダヤ)に至上主は 心地良さ気に住みたもう
ヴェーダ祭儀を催行す 四人の祭司 皆すべて
主の御力を戴きて 尊き供犠を遂行す
ああ斯くのごと崇き主に 帰命頂礼奉る
348
二十四章 シヴァは主への賛歌を王子等に伝授さる
nama ûrja ise trayyâh
pataye yajna-retase
trpti-dâya ca jîvânâm
namah sarva-rasâtmane
24-38
三ヴェーダの支配者で ソーマ祭儀の施行者は
個我(ジーヴァ)に喜び授けらる 一切知にて真髄の
御主讃えてこの吾は 帰命頂礼奉る
sa rva-sattvâtma-dehâya
visesâya sthavîyase
namas trailokya-pâlâya
saha ojo-balâya ca
24-39
至純の極地 至上主は その本質を分けられて
多様化せんと意図なされ 物質宇宙具現さる
斯くて三界現出し 御主は常に愛されて
手厚き保護を与えらる
おお偉大なる至高者よ 帰命頂礼奉る
artha-lingâya nabhase
namo 'ntar-bahir-âtmane
namah punyâya lokâya
amusmai bhûri-varcase
24-40
内なる意図は象徴で 外気の様は天空(雲・霧・雷)で
内と外から御自身を 表現されて指図され
諸人共に善を積み 吉兆の世の到来を
実現させる 御意志にて 常に光輝を放たれり
かくも気高き至上主に 帰命頂礼奉る
349
二十四章 シヴァは主への賛歌を王子等に伝授さる
pravrttâya nivrttâya
pitr-devâya karmane
namo 'dharma-vipâkâya
mrtave duhkha-dâya ca
24-41
祖霊や神が天上で 住まう許しを得たるのは
無欲で献身したる香菓 不正な行為成したなば
そに相応しき死に様が 与えられるを知るべけれ
斯くの如くに善悪の 運命を握る至上主に
帰命頂礼奉る
namas ta âsisâm îsa
manave kâranâtmane
namo dharmâya brhate
krsnâyâkuntha-medhase
purusâya purânâya
sânkhya-yogesvarâya ca
24-42
帰依する者を愛されて 可能なかぎり願望を
叶えたまわる至上主よ 人類の祖の本質や
ダルマや義務の創設者 もっとも高き徳を持ち
サーンキャ学の長であり ヨーガの基礎を築かれし
普遍的なる唯一の 魂と叡智の根本主
おお偉大なるクリシュナに 帰命頂礼奉る
sakti-traya-sametâya
mîdhuse 'hankrtâtmane
ceta-âkûti-rûpâya
namo vâco vibhûtaye
24-43
三種の力 組み合わせ インドラ神の愛息に
知恵と話術を与えられ 国の繁栄築かせて
富を産ませる至上主に 帰命頂礼奉る
350
二十四章 シヴァは主への賛歌を王子等に伝授さる
darsanam no didrksûnâm
dehi bhâgavatârcitam
rûpam priyatamam svânâm
sarvendriya-gunânjanam
24-44
常に御主を賞賛し 愛して止まぬ帰依者等の
<主の御姿を見たし>との 切なる願い聞き入れて
是非に顕現 給えかし 全感覚を研ぎ澄ませ
主の根幹を知りたしと 真摯に願い奉る
snigdha-prâvrd-ghana-syâmam
sarva-saundarya-sangraham
cârv-âyata-catur-bâhu
sujâta-rucirânanam
padma-kosa-palâsâksam-
sundara-bhru sunâsikam
sudvijam sukapolâsyam
sama-karna-vibhûsanam
24-45・46
薄墨色の艶やかな 青みがかりし肌色の
全ての優雅 集めたる 申し分なき美しさ
四本の長き腕持つ 特徴的なお身体や
品格高く麗しき お顔立ち良き御方よ
昼咲く蓮の花のごと 赤き瞳の美しさ
端正な眉 隆き鼻 皓歯煌めくお口許
美しき耳朶 耳飾り 全て美麗な御方よ
prîti-prahasitâpângam
alakai rûpa-sobhitam
lasat-pankaja-kinjalka-
dukûlam mrsta-kundalam
sphurat-kirîta-valaya-
hâra-nûpura-mekhalam
sankha-cakra-gadâ-padma-
mâlâ-many-uttamarddhimat
24-47・48
351
二十四章 シヴァは主への賛歌を王子等に伝授さる
蓮華の雄蕊思わせる サフラン色の衣裳着て
優しく笑みて 眦を 横に流さる艶やかさ
軽き巻き毛は ひとしおに 美しき顔引き立てる
耳に付けらるイヤリング ほのかに揺れて煌めけり
光り輝く王冠や アンクレットや腕飾り
真珠の首輪 腰ベルト 法螺貝 車輪 棍棒や
蓮華の花を御手に持ち 美麗極まる御方よ
simha-skandha-tviso bibhrat
saubhaga-grîva-kaustubham
sriyânapâyinyâ ksipta-
nikasâsmorasollasat
24-49
宛ら獅子の肩のごと 破壊もされず摩擦にも
少しも減らず輝ける 幸運運ぶ宝石の
カウストゥバを胸にかけ 不動の美なる御方よ
pûra-recaka-samvigna-
vali-valgu-daloda ram
pratisankrâmayad visvam
nâbhyâvarta-gabhîrayâ
24-50
バニヤンツリーの葉の如き
腹部の襞は美しく 呼吸の度に揺れ動き
渦巻く臍は底深く 宇宙吸い込む窟のごと
神秘を秘める御方よ
352
二十四章 シヴァは主への賛歌を王子等に伝授さる
syâma-srony-adhi-rocisnu-
dukûla-svarna-mekhalam
sama-cârv-anghri janghoru-
nimna jânu-sudarsanam
24-51
黒き臀部と腰部には 美麗な布と金ベルト
すらりと伸びて逞しき 足と脛 腿 膝すべて
まこと見事に調和した 美の極致たる御方よ
padâ sarat-padma-palâsa-rocisâ
nakha-dyubhir no 'ntar-agham vidhunvatâ
pradarsaya svîyam apâsta-sâdhvasam
padam guro mârga-gurus tamo jusâm
24-52
秋の蓮華の花びらは まこと優美で美しく
正しく御主の御足なり 何とぞ姿 見せられて
無明を照らし救いだし 御足の爪の光明で
吾等の不浄 罪 咎を 浄化する術 教えあれ
おお最高の指導者よ 伏して懇願奉る
etad rûpam anudhyeyam
âtma-suddhim abhîpsatâm
yad-bhakti-yogo 'bhayadah
sva-dharmam anutisthatâm
24-53
自己の浄化を願うなば 御主の姿を思うべし
斯くする者は敬虔な 帰依者となりて献身し
己の義務を良く果たし 無畏の境地(解脱)を得たるらん
353
二十四章 シヴァは主への賛歌を王子等に伝授さる
bhavân bhaktimatâ labhyo
durlabhah sarva-dehinâm
svârâjyasyâpy abhimata
ekântenâtma-vid-gatih
24-54
制限されぬ主権持つ 天界に住む神とても
形ある者一切が 見出し難き目的地
然れども主の帰依者等は 御主に専注することで
その究極の目的地 寂静の地に達すべし
tam durârâdhyam ârâdhya
satâm api durâpayâ
ekânta-bhaktyâ ko vânchet
pâda-mûlam vinâ bahih
24-55
主の満足を贏ち得るは まこと至難のわざなりき
有徳の者であろうとも 達成の香菓 得難きを
唯一筋に主を想い 献身奉仕することで
主の満足を得たならば 蓮華の御足 そのほかに
帰依者は何を望むらん
yatra nirvistam aranam
krtânto nâbhimanyate
visvam vidhvamsayan vîrya-
saurya-visphûrjita-bhruvâ
24-56
眉毛 動かすことだけで 宇宙の全て破滅さす
威力を誇る者とても 御主との縁 享受して
御足にすがる帰依者等を 害うことは出来ぬなり
354
二十四章 シヴァは主への賛歌を王子等に伝授さる
ksanârdhenâpi tulaye
na svargam nâpunar-bhavam
bhagavat-sangi-sangasya
martyânâm kim utâsisah
24-57
光明界や解脱者や 況して世俗の幸福と
至高の御主に集中し 一意専心 主を思う
その縁のみを拠り処とす 帰依する者の幸せを
たとえ瞬時であろうとも 比べることが出来ぬなり
athânaghânghres tava kîrti-tîrthayor
antar-bahih-snâna-vidhûta-pâpmanâm
bhûtesv anukrosa-susattva-sîlinâm
syât sangamo 'nugraha esa nas tava
24-58
おおそれ故に 至上主よ 御主の蓮華の御足を
源とするガンガーの 河の流れで沐浴し
内と外との不浄物 罪を洗いて浄めたり
おお至上主よ願わくば 被造されたる吾々に
<法縁厚き先哲と 遭遇の栄 賜れ>と
伏して懇願奉る
na yasya cittam bahir-artha-vibhramam
tamo-guhâyâm ca visuddham âvisat
yad-bhakti-yogânugrhîtam anjasâ
munir vicaste nanu tatra te gatim
24-59
意識を外に向かわせず 無知蒙昧を脱ぎ捨てて
英知を磨き 浄化され 敬虔な帰依 捧ぐなば
御主の恩寵戴きて 直ちに真理 知覚せん
355
二十四章 シヴァは主への賛歌を王子等に伝授さる
yatredam vyajyate visvam
visvasminn avabhâti yat
tat tvam brahma param jyotir
âkâsam iva vistrtam
24-60
御主は宇宙を顕示され 卓越したる御力で
多くのものを造られし 光輝を放つブラフマン
アーカーシャなる空間に 遍満される御方なり
yo mâyayedam puru-rûpayâsrjad
bibharti bhûyah ksapayaty avikriyah
yad-bheda-buddhih sad ivâtma-duhsthayâ
tvam âtma-tantram bhagavan pratîmahi
24-61
根源主なるクリシュナは マーヤーシャクティ用いられ
多様な物を創られて 具象化されしこの地球
そを維持なされ 時来れば 全て破壊をなさるなり
静態の夜で区切りつつ 再び創り 維持し後
すべてを破壊 為し給い 永遠の如くに転化さる
おお至上主よ 御主より 分魂されし個我たちが
『辛酸をなめ苦行して 常世の郷に帰れ』との
御主の慈悲と受け止めて 吾は頂礼奉る
“帰りなん いざ故郷へ! 主の温かき胎内へ!”
kriyâ-kalâpair idam eva yoginah
sraddhânvitâh sâdhu yajanti siddhaye
bhûtendriyântah-karanopalaksitam
vede ca tantre ca ta eva kovidâh
24-62
被造されたる肉体の アンターカラナ(内部器官) インドリヤ(感官)
その状態でその人の 行為 行動 決められる(カルマヨーガ)
また信仰や献身で 供犠や神への崇拝や
修行の成果 決められる(バクティヨーガ) ヴェーダ知識や聖典を
よく学びたる者たちは 叡智によりて神を知る(ジュニャーナヨーガ)
356
二十四章 シヴァは主への賛歌を王子等に伝授さる
tvam eka âdyah purusah supta-saktis
tayâ rajah-sattva-tamo vibhidyate
mahân aham kham marud agni-vâr-dharâh
surarsayo bhûta-ganâ idam yatah
24-63
マハトタットヴァ ブッディや アンターカラナ スリーグナ
五大元素や インドリヤ 神やリシなど このすべて
太初プルシャの至上主が 創造されし物なりき
srstam sva-saktyedam anupravistas
catur-vidham puram âtmâmsakena
atho vidus tam purusam santam antar
bhunkte hrsîkair madhu sâra-gham yah
24-64
御自からの御威光で 創造されし宇宙卵
やがて御主は御自身を 四つの部分に分けられて
宇宙の中に入られり 故にそれらを知る者は
内在の主のアムリタを 味わうことを享受せり
sa esa lokân aticanda-vego
vikarsasi tvam khalu kâla-yânah
bhûtâni bhûtair anumeya-tattvo
ghanâvalîr vâyur ivâvisahyah
24-65
雲は風には逆らえず 風吹くままに流される
帰る道なき道を行く 被造されたる物は皆
他の造物の様を見て 抗い難き力持つ
主の本質を推測し 畏敬の思い 捧ぐなり
357
二十四章 シヴァは主への賛歌を王子等に伝授さる
pramattam uccair iti krtya-cintayâ
pravrddha-lobham visayesu lâlasam
tvam apramattah sahasâbhipadyase
ksul-lelihâno 'hir ivâkhum antakah
24-66
俗世の欲に捉われて 感覚のみを楽しみし
無分別なる者たちを 飢えたる蛇が子鼠を
捕える如く迅速に 突如死神襲うらん
kas tvat-padâbjam vijahati pandito
yas te 'vamâna-vyayamâna-ketanah
visankayâsmad-gurur arcati sma yad
vinopapattim manavas caturdasa
24-67
知識学びし賢人で 誰が御足を避けるらん
至高の御主を嘲笑い 誰が無難で居られよう
過ぎし昔に人類の 始祖なるマヌの 十四人
何の疑問も抱かずに 御主 崇めて頂礼し
蓮華の御足 求めたり
atha tvam asi no brahman
paramâtman vipascitâm
visvam rudra-bhaya-dhvastam
akutascid-bhayâ gatih
24-68
吠えるルドラに驚きて 恐れおののく万人が
助けを求む究極の 唯 御一人 至上主よ
卓越したる御力で 何とぞ恐怖 とり除き
<安寧の世と幸福を 授けたまえ>と請うるなり
358
二十四章 シヴァは主への賛歌を王子等に伝授さる
idam japata bhadram vo
visuddhâ nrpa-nandanâh
sva-dharmam anutisthanto
bhagavaty arpitâsayâh
24-69
おお幸多き王子等よ 主への賛歌を聴くという
この吉兆に恵まれて 其方等すべて清まれり
これから先は己が義務を 誠意を尽くし 良く果たし
クリシュナ神を崇拝し 吾が唱えしこの讃歌
心を一に専注し 幾度と無く唱すべし
tam evâtmânam âtma-stham
sarva-bhûtesv avasthitam
pûjayadhvam grnantas ca
dhyâyantas câsakrd dharim
24-70
至高の御主は御身達の 心にお座すだけでなく
被造されたる一切の 存在物に在りたもう
この素晴らしき至上主を 賛美の詩を謳いつつ
常に思いて崇むべし
yogâdesam upâsâdya
dhârayanto muni-vratâh
samâhita-dhiyah sarva
etad abhyasatâdrtah
24-71
斯く与えたる教訓を 絶えず真摯に朗誦し
教えを把持し 御主との 苦行の誓いよく守り
心を一に専注し 知性を高め 励まれよ
359
二十四章 シヴァは主への賛歌を王子等に伝授さる
idam âha purâsmâkam
bhagavân visvasrk-patih
bhrgv-âdînâm âtmajânâm
sisrksuh samsisrksatâm
24-72
宇宙創造託されし ブラフマー神は御主より
『造物せよ』と命ぜられ 自分の息子ブリグ等に
プラジャーパティ(造物神)の任与え この教訓を示されり
te vayam noditâh sarve
prajâ-sarge prajesvarâh
anena dhvasta-tamasah
sisrksmo vividhâh prajâh
24-73
斯く促され吾々は この[偈]によりてよく学び
無知蒙昧を克服し 子孫を増やし造物し
多種多様なる生物を 産出させて増殖す
athedam nityadâ yukto
japann avahitah pumân
acirâc chreya âpnoti
vâsudeva-parâyanah
24-74
斯くの如くに真言は 永久に不変の教えゆえ
心をこめて主を想い 低き声にて誦したまえ
さすれば幸と安寧が 直ちに到来いたすらん
sreyasam iha sarvesâm
jnânam nihsreyasam param
sukham tarati duspâram
jnâna-naur vyasanârnavam
24-75
この世における最高の 無上の幸は叡智なり
乗り越え難き大波が うずまく荒れし海原も
たとえ小舟であろうとも 叡智で舵を とるならば
凪の海原渡るごと 楽に彼岸に達すらん
360
二十四章 シヴァは主への賛歌を王子等に伝授さる
ya imam sraddhayâ yukto
mad-gîtam bhagavat-stavam
adhîyâno durârâdhyam
harim ârâdhayaty asau
24-76
クリシュナ神を称賛し 吾が謳いし祈祷詩を
一意専心集中し 御主 崇めて謳うなば
満足得るが難しき 御主の喜び 享けられん
vindate puruso 'musmâd
yad yad icchaty asatvaram
mad-gîta-gîtât suprîtâc
chreyasâm eka-vallabhât
24-77
帰依する者が至高主を 心をこめて賛美して
謳いし詩歌 聞こし召し 御主は大いに喜ばれ
その愛し子の懇願を 全て聞き入れ それなりの
果報を授け 給うなり
idam yah kalya utthâya
prânjalih sraddhayânvitah
srnuyâc chrâvayen martyo
mucyate karma-bandhanaih
24-78
朝日が上る黎明に 合掌をして主を讃え
この祈祷詩を謳うなば
死ぬる運命を持つ者(被造物は必ず死ぬ)が
賛歌を聴きて 徳を積み 謳いし者も 聴く者も
この現世の足枷が 脱れて解脱に至るらん
361
二十四章 シヴァは主への賛歌を王子等に伝授さる
gîtam mayedam naradeva-nandanâh
parasya pumsah paramâtmanah stavam
japanta ekâgra-dhiyas tapo mahat
caradhvam ante tata âpsyathepsitam
24-79
おお幸多き 王子等よ 純粋意識プルシャにて
パラマートマの至高主を 讃えて謳うことにより
更に苦行が深まりて 英知を識りて徳を積み
望みし成果獲得し ついに解脱に至るらん〉」