十章 神譚詩が語る十種の主題


第十章【神譚詩が語る十種の主題】
s'rî-s'uka uvâca
atra sargo visargas' ca
sthânam poshanam ûtayah
manvantares'ânukathâ
nirodho muktir âs'rayah
10-1




【栄えあるシュカは語られり】
「このプラーナで語られる 主題は以下の如くなり
サルガ ヴィサルガ スターナと
ポーシャナ ウーティ マンヴァンタラ
イーシャーヌカター ニローダと
ムクティそして アーシュラヤ
これら十種の命題を 順次そなたに語るらん





Das'amasya vis'uddhy-artham
navânâm iha lakshanam
varnayanti mahâtmânah
s'rutenârthena cân'jasâ
10-2




傑出けっしゅつしたる聖者らは 斯くの如くに申されり
「初めに教示きょうじなされたる 九項目の特徴は
このプラーナを聴聞し その真髄しんずい希求ききゅうして
〔アーシュラヤ〕なる第十の 正しき叡智 得るため」と








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十章 神譚詩が語る十種の主題

bhûta-mâtrendriya-dhiyâm
janma sarga udâhritah
brahmano guna-vaishamyâd
visargah paurushah smritah
10-3




多様な姿 意図いとされて プラクリティの均衡きんこう
破りし御主みすの御意思にて 転変てんぺんしたるマハトから
ブッディー(識別)そして自意識の アハンカーラやトリグナで
創りだされし諸要素(粗大元素.微細元素.インドリヤ.マナス)
〔サルガ〕と名付け 述べ聴かせ ブラフマー神の被造物ひぞうぶつ
そは〔ヴィサルガ〕と呼ばるなり

sthitir vaikunthha-vijayah
poshanam tad-anugrahah
manvantarâni sad-dharma
ûtayah karma-vâsanâh
10-4




主が創られしサルガでは すべてを御主みす掌握しょうあく
そを〔スターナ〕(スティーティ=主の勝利)と呼ばうなり
御主みすから賜う厚き庇護ひご その恩寵が〔ポーシャナ〕ぞ
規律正しきマヌの期を 〔マンヴァンタラ〕と呼びらし
行為の香菓かく希求ききゅうする 心に潜む欲望を
〔ウーティ〕の名で呼ばるなり


avatârânucaritam
hares' câsyânuvartinâm
pumsâm îs'a-kathâh proktâ
nânâkhyânopabrimhitâh
10-5




聖クリシュナが化身され その一連いちれん御事績ごじせき
それに従う帰依者らの 様々さまざまな物語
〔イーシャヌカター〕と名付けらる



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nirodho s'yânus'ayanam
âtmanah saha s'aktibhih
muktir hitvânyathâ rûpam
sva-rûpena vyavasthitih
10-6



宇宙が帰滅する時に 個我(ジーヴァ)御主おんしゅ恩恵おんけい
吸気と共にはいりこむ そを〔ニローダ〕と言いしなり
そして個魂ここんのジーヴァーが 虚妄きょもうの姿(自己と肉体との同一視)放棄して
おのが姿(梵我一如)の真実を 悟りしときが〔解脱〕(ムクティ)なり



âbhâsas' ca nirodhas' ca
yato 'sty adhyavasîyate
sa âs'rayah param brahma
paramâtmeti s'abdyate
10-7




宇宙創造 維持 そして 破壊に至る道程みちのり
全て幻出げんしゅつされる方 そを〔アーシュラヤ〕と呼ばうなり
傑出けっしゅつされしその方を 最高原理ブラフマン
パラマートマー 太霊と 呼び名をつけてたたうなり



yo 'dhyâtmiko 'yam purushah
so 'sâv evâdhidaivikah
yas tatrobhaya-vicchedah
purusho hy âdhibhautikah
10-8




最高神のぶんこん(ジーヴァ)を 〔アヂャートミカ〕と称すなり
器官(感覚.行為器官)を制す神々は 〔アディダイヴィカ〕と呼ばるなり
斯く分離せる二要素の 感官をもつ肉体を ジーヴァの容器 とて用いられ
〔アーディバウティカ〕と呼びしなり






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ekam ekatarâbhâve
yadâ nopalabhâmahe
tritayam tatra yo veda
sa âtmâ svâs'rayâs'rayah
10-9




(ジーヴァ)感官かんかん(肉体=器) その維持者いじしゃ(支配神)
いずれか一つ欠けたれば 御主おんしゅ知覚ちかく出来得できえなし
これら三者が在りてこそ 至上の御主みす(アーシュラヤ)に達すなり
万象ばんしょうぬし 御主おんしゅこそ 吾が身を託すアーシュラヤ(避難場所)  

10-10
purusho 'ndam vinirbhidya
yadâsau sa vinirgatah
âtmano 'yanam anvicchann
apo 'srâkshîc chucih s'ucîh


唯一者(根原主)より分割わけられし
純粋意識(プルシャ)とプラクリティ(根本原質)
その開展かいてんで生まれたる 
らんとなられしヴィシュヌ神(マハーヴィシュヌ)
それ(黄金の宇宙卵)を出でたるその時に 休息の場を探されり
そして創造されたのが 聖なる清き水(原水)なりき



10-11
tâsv avâtsît sva-srishthâsu
sahasram parivatsarân
tena nârâyano nâma
yad âpah purushodbhavâh



御身自身おんみじしんが創られて 休息されしその場所(水上)
しゅはそののちの千年を そのままそこで眠られり
故に御主おんしゅ御名おんみな
〔ナーラーヤナ〕(ナーラ=水.に住む者)名付なづくなり




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10-12
dravyam karma ca kâlas' ca
svabhâvo jîva eva ca
yad-anugrahatah santi
na santi yad-upekshayâ



物質要素 そしてまた
カルマ(行為)に カーラ(時) スワバーヴァ(本質)
主の分身のジーヴァ(個魂)は 主の恩寵で存在す
その恩遇おんぐうが得られずば 消滅するはさだかなり


10-13
eko nânâtvam anvicchan
yoga-talpât samutthitah
vîryam hiranmayam devo
mâyayâ vyasrijat tridhâ



静態せいたいの眠り(ヨーガニドラー)から 目覚められたる至上主は
唯一ただひとつなるおのが身の 多様な姿 求められ
主のエネルギー マーヤーを 思うがままに駆使くしされて
光り輝く御身体おからだ(黄金の宇宙卵)を 三つに分割なされたり



10-14

adhidaivam athâdhyâtmam
adhibhûtam iti prabhuh
athaikam paurusham vîryam
tridhâbhidyata tac chrinu



唯一ゆいいつである至上主の 光り輝く御身体おからだ
アディダイヴァ(器官の支配神)と アヂャートマ(個魂=ジーヴァ)
アディブータ(生類)三様さんように 分割されしその方途ほうと(方法)
今から御身おみ(パリークシット国王)に語るゆえ とくと聴聞なさるべし




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10-15
antah s'arîra âkâs'ât
purushasya viceshthatah
ojah saho balam jajn'e
tatah prâno mahân asuh



しゅ(黄金の宇宙卵)御身体おからだの内部から
オージャス サハス バラという
三つの力 生み出さる
しこうしてのち 至上主は その三力さんりきを統合し
生命せいめいもと プラーナを 創出そうしゅつされてもちいらる


10-16

anuprânanti yam prânâh
prânantam sarva jantushu
apânantam apânanti
nara-devam ivânugâh



王の従者の全員が 王の指令にふくすごと
生類しょうるいは皆 プラーナが 活動すれば 活動し
そのプラーナが活動を めればすべて まるなり



10-17
prânenâkshipatâ kshut trid
antarâ jâyate vibhoh
pipâsato jakshatas' ca
prân mukham nirabhidyata



自由自在に闊達かったつに 激しく動くプラーナに
刺激されたる宇宙体 飢えと渇きを覚えらる
<そをいやさん>とされし時 主に口腔こうこう(口)が生じたり




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10-18
mukhatas tâlu nirbhinnam
jihvâ tatropajâyate
tato nânâ-raso jajn'e
jihvayâ yo 'dhigamyate



その口からは口蓋こうがい(上あご)が  しかして舌が生じたり
それらによりて様々な あじを味わう能力の
味覚器官が顕われり



10-19
vivakshor mukhato bhûmno
vahnir vâg vyâhritam tayoh
jale caitasya suciram
nirodhah samajâyata



しゅはそれまでの長きを 水の上にてりたまい
深き静寂しじま只中ただなかで 静態せいたいを過ごされり
御主みすが<御言葉ことばを発せん>と 意図いとなされたるその時に
その御口おくちから火の神と 言葉が共に発せらる



10-20
nâsike nirabhidyetâm
dodhûyati nabhasvati
tatra vâyur gandha-vaho
ghrâno nasi jighrikshatah



 うちよりプラーナ 噴出ふんしゅつし 鼻孔びこう一対いっつい 生まれ出で
ここに呼吸が始まりぬ
鼻で<匂いを嗅ぎたし>の 意図を持たれしその時に
風に乗りたる芳香が 主に嗅覚きゅうかくをもたらせり




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10-21
yadâtmani nirâlokam
âtmânam ca didrikshatah
nirbhinne hy akshinî tasya
jyotis' cakshur guna-grahah


常夜とこよの闇に包まれし 宇宙に在りて至上主は
己が姿や他の姿 <見たし>のきざし感じらる
その瞬間についの眼が 御主みすのお顔に穿うがたれり
しこうして眼と太陽(視覚.2-1-30参照)で 物質界を認知さる


10-22
bodhyamânasya rishibhir
âtmanas taj jighrikshatah
karnau ca nirabhidyetâm
dis'ah s'rotram guna-grahah



原水げんすい上にまどろまる 主を起こさんと聖者らは
御主みすの讃歌をうたいたり
<聞き取らん>とのしゅの御意思 きざせし刹那せつな 一対いっつい
外耳みみ(音の方向感の認知)聴道ちょうどう(聴覚) 現出げんしゅつ
しかして御主みすは方角や 音声すべて認知さる



10-23
vastuno mridu-kâthhinya-
laghu-gurv-oshna-s'îtatâm
jighrikshatas tvan nirbhinnâ
tasyâm roma-mahî-ruhâh
tatra cântar bahir vâtas
tvacâ labdha-guno vritah





そして御主おんしゅ物象ぶっしょうの 硬柔こうじゅう 軽重けいちょう 寒暖かんだん
<体感したし>の 御思念ごしねんが え出でし時 一瞬に
皮膚が御主おんしゅを包みこみ そこに体毛たいもう 生えしなり
そしてグナより創られし タンマートラが開展かいてん
しょく(微細体) ふう(五大元素) 触覚しょっかく(感覚能力) 生じたり

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10-24
hastau ruruhatas tasya
nânâ-karma-cikîrshayâ
tayos tu balavân indra
âdânam ubhayâs'rayam


宇宙の起原 創造神 <行為なさん>と意図さるや
即座に両手 生じたり
そして偉大な力 持つ インドラ神(腕.2-1-29参照)と両の手の
その両方に依存ることで 
つか(捕捉する操作器官)行為が生まれたり



10-25
gatim jigîshatah pâdau
ruruhâte 'bhikâmikâm
padbhyâm yajn'ah svayam havyam
karmabhih kriyate nribhih


宇宙の御主みすが<動かん>と ほっせられたる瞬間に
二本の足が生じたり
斯くて御主おんしゅに捧ぐべき 供物調達くもつちょうたつするための
人々の足 創られり



10-26
nirabhidyata s'is'no vai
prajânandâmritârthinah
upastha âsît kâmânâm
priyam tad-ubhayâs'rayam


連綿れんめんとしてせいぐ <子孫を得ん>と意図されし
まさにその時 創始者に 男性性器 生じたり
斯くて御主おんしゅしゅ(男性)たい(女性)の 目合まぐわ(性交)ことで双方に
甘露(アムリタ)のごとき喜びが 得られることになされたり






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十章 神譚詩が語る十種の主題

10-27
utsisrikshor dhâtu-malam
nirabhidyata vai gudam
tatah pâyus tato mitra
utsarga ubhayâs'rayah


たいまりし不浄物 <放棄したき>と意図さるや
それらの物を出すために まさに肛門 穿うがたれり
しこうしてのち人間は 放棄したしの感覚(感覚器官)
排泄(行為)器官の両方に 依りて生命いのち(プラーナ)たすくなり



10-28
âsisripsoh purah puryâ
nâbhi-dvâram apânatah
tatrâpânas tato mrityuh
prithaktvam ubhayâs'rayam


宇宙に在りし創始者が より良きほかの乗り物(器)
<移動したき>と望まるや ほぞのくぼみが生じたり
斯くてほぞにはアパーナ(出息.吸気)と 
そを絶つ神が生まれけり
この両方が相俟あいまちて 生と死界を分つなり


10-29
âditsor anna-pânânâm
âsan kukshy-antra-nâdayah
nadyah samudrâs' ca tayos
tushthih pushthis tad-âs'raye


宇宙の始原 創造神 <食物うけと飲み物 欲する>や
腹腔ふくこう(胃.腸.肝臓.膵臓.腎臓.脾臓.膀胱など)と腸 
脈管みゃくかん(体液を通す管の総称)
瞬時に形作かたちづくられて 海(腹腔と腸)と河(脈管)との両方に
依りて豊かな飲食いんしょくを 受け取る幸を与えらる




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十章 神譚詩が語る十種の主題

10-30

nididhyâsor âtma-mâyâm
hridayam nirabhidyata
tato manas' candra iti
sankalpah kâma eva ca



しゅが御自身のマーヤーを <熟慮じゅくりょしたし>と意図いとさるや
主の胸奥きょうおうにフリダヤ(未顕現なる御主の座)が  忽然こつぜんとして顕われり
マナス(インドリヤの司令塔)の意志(サンカルパ)と欲望(カーマ)
そして情緒じょうちょげつりんが しゅ御胸みむね(フリダヤ)より出現す


10-31
tvak-carma-mâmsa-rudhira-
medo-majjâsthi-dhâtavah
bhûmy-ap-tejomayâh sapta
prâno vyomâmbu-vâyubhih



五大元素の〔〕〔すい〕〔〕が
表皮ひょうひ 真皮しんぴと肉や血と そして脂肪とずいや骨
七つの要素 生み出して その身体しんたいを構成し
生命力なるプラーナは 〔くう〕〔すい〕〔ふう〕で生ずなり


10-32
gunâtmakânîndriyâni
bhûtâdi-prabhavâ gunâh
manah sarva-vikârâtmâ
buddhir vijn'âna-rûpinî



全能の主が転変てんぺんし 創りだされしマハトから
創造されしかく(ブッディ)自我じが(アハンカーラ)
自我(アハンカーラ)より生まるトリグナ(サットヴァ・ラジャス・タマス)
タマスさがなるインドリヤ(感覚器官と行為器官)
それを制すはブッディの 理知より生まるマナスなり




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十章 神譚詩が語る十種の主題

10-33
etad bhagavato rûpam
sthûlam te vyâhritam mayâ
mahy-âdibhis' câvaranair
ashthabhir bahir âvritam




壮大にして偉大なる 主の御姿みすがた(宇宙卵)をこの吾は
御身おんみにすべて語りたり
その外側をおおうのは 地 水 火 風とエーテル(空)
アハンカーラ(自我意識)とマハットヴァ(大=覚=ブッディ) 
プラクリティ(根本原質)の八層ぞ

10-34
atah param sûkshmatamam
avyaktam nirvis'eshanam
anâdi-madhya-nidhanam
nityam vân-manasah param



この御姿みすがたの内にある 非具象ひぐしょうにして 無属性むぞくせい
始めが無くて終わりなく その中間ちゅうかんもさらに無く
マナスや言葉(具象)届き得ぬ 遠き常世とこよにおすのは
幽玄ゆうげんにして微細びさいなる 原初げんしょの神であらせらる


10-35
amunî bhagavad-rûpe
mayâ te hy anuvarnite
ubhe api na grihnanti
mâyâ-srishthe vipas'citah



斯くのごとくに吾は今 壮大にして微細なる
主の御姿みすがたを国王に 事 こまやかに述べしなり
しかれどもこの両方(壮大.微細)
主がマーヤーを駆使くしされて 創造されしものゆえに
そを熟知じゅくちする賢者らは 姿(具象)を主とは認めざり


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十章 神譚詩が語る十種の主題

10-36
sa vâcya-vâcakatayâ
bhagavân brahma-rûpa-dhrik
nâma-rûpa-kriyâ dhatte
sakarmâkarmakah parah



非具象ひぐしょう不滅ふめつの至上主が 言うべきことを話すべく
ブラフマー神の姿り 名前と姿 行動を 
具象の界に示されり
ああ然れども国王よ 超絶的な至上主は
これらのものにいささかも 影響受けることはなし


10-37・38・39・40
prajâ-patîn manûn devân
rishîn pitri-ganân prithak
siddha-cârana-gandharvân
vidyâdhrâsura-guhyakân

kinnarâpsaraso nâgân
sarpân kimpurushân narân
mâtri rakshah-pis'âcâms' ca
preta-bhûta-vinâyakân

kûsmândonmâda-vetâlân
yâtudhânân grahân api
khagân mrigân pas'ûn vrikshân
girîn nripa sarîsripân

dvi-vidhâs' catur-vidhâ ye 'nye
jala-sthala-nabhaukasah
kus'alâkus'alâ mishrâh
karmanâm gatayas tv imâh











プラジャパティ(造物主)や マヌ(人類の始祖)そして
天上界の神々や 聖仙たちや祖霊群
シッダ(魔術者)チャーラナ(天上の役者) ガンダルヴァ(天界の音楽士)
ヴィディーヤーダ(半神の一種)や アスラ(悪魔)たち
グヒヤカ(ヤクシャ) キンナラ(楽人) アプサラス(天女・妖精)
ナーガ(蛇族)や 蛇や キンプルシャ(妖精)
ナラ(人類) マートリ(女神たち)や ラクシャス(魔物)
死霊しりょう(プレータ) 亡霊ぼうれい(ブータ・ヴィナーヤカ) 悪魔族(ピシャーチャ)




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十章 神譚詩が語る十種の主題
悪魔(クースマーンダ) 狂人きょうじん(ウンマーダ) ヴェーターラ(悪魔)
ヤートゥダーナ(悪霊) グラハ(魔物)など
鳥類 野獣 家畜 樹木きぎ 山々そして爬虫類
動かざるもの 動くもの この二種類の生き物や
胎生たいしょう 卵生らんしょう 湿生しっしょうや 化生けしょうと言わる生れ(四生ししょう)でも
そして水中 地の上や そらのいずれに住もうとも
善と悪またその混合 いずれの場所に生きようと
それら全ては ああ王よ 個我(ジーヴァ)辿たどりし過去世での
行為(カルマ)香菓かく(結果)の顕れぞ

10-41
sattvam rajas tama iti
tisrah sura-nri-nârakâh
tatrâpy ekaikas'o râjan
bhidyante gatayas tridhâ
yadaikaikataro 'nyâbhyâm
sva-bhâva upahanyate





パリークシット国王よ 輪廻転生する個我(ジーヴァ)
その本来の特質が 三つのグナの属性ぞくせい(善.激.暗)
如何に影響されたかで 神々かまた人類か
はたまた地獄の住人か その出生しゅっしょうが決まるなり


10-42
sa evedam jagad-dhâtâ
bhagavân dharma-rûpa-dhrik
pushnâti sthâpayan vis'vam
tiryan-nara-surâdibhih



根本原主クリシュナは 全ての界を維持せんと
動物 人間 神々の 姿をりて化身さる
しかしてダルマ(法則)制定し 種々の御事績ごじせき 顕わさる
斯くて御主おんしゅは意のままに 宇宙を保持し把捉はそくさる

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十章 神譚詩が語る十種の主題

10-43
tatah kâlâgni-rudrâtmâ
yat srishtham idam âtmanah
sanniyacchati tat kâle
ghanânîkam ivânilah



御自おんみずからが意図されて 創造されしこの宇宙
〔時〕至りなば始原主は
厚き黒雲くろくも 吹き払う 嵐の神(ヴァーユ神)のさまのごと
破壊の神(ルドラ=シヴァ神)の姿とり 宇宙絶滅なさるらん  


10-44

ittham-bhâvena kathito
bhagavân bhagavattamah
nettham-bhâvena hi param
drashthum arhanti sûrayah



斯くの如くに至上主の 卓越したる御姿みすがた
御身おみ熟々つらつら語りしが
主を心眼しんがんで拝観す まこと優れし聖者らは
かる御主おんしゅ御事績ごじせきに る事は無かりけり


10-45
nâsya karmani janmâdau
parasyânuvidhîyate
kartritva-pratishedhârtham
mâyayâropitam hi tat



かかるすぐれし聖者等は 宇宙うちゅう創始そうし具象化ぐしょうか
根原主なる至上主の 所為しょい(行為)に非ずと熟知じゅくちせり
故に御主おんしゅの本質を 秘してまどわすマーヤーを
賢者は常に否定する





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十章 神譚詩が語る十種の主題

10-46
ayam tu brahmanah kalpah
savikalpa udâhritah
vidhih sâdhârano yatra
sargâh prâkrita-vaikritâh



吾がそなたに語りたる 宇宙創始と絶滅は
ブラフマー神の1日(昼日=1カルパ)と
マハーカルパ(ブラフマー神の一生)のことなりき
プラクリティが転変てんぺんし 創りだされし〔サルガ〕でも
その創造と絶滅の 手法はすべて同じなり


10-47
parimânam ca kâlasya
kalpa-lakshana-vigraham
yathâ purastâd vyâkhyâsye
pâdmam kalpam atho s'rinu



〔時〕の長さやそしてまた 〔カルパ〕(劫)の個々の形態を
すべて語りて聴かすらん はてさて先ずは国王に 
パードマカルパ(紅蓮華カルパ)に関してを
つぶさにお話しいたすべし」


10-48

s'aunaka uvâca
yad âha no bhavân sûta
kshattâ bhâgavatottamah
cacâra tîrthâni bhuvas
tyaktvâ bandhûn sudustyajân




シャウナカは斯く申したり 「おおスータ師よ 吾たちに
主の最高の帰依者なる ヴィドゥラにつきて語られよ
捨て去りがた親族しんぞくの 愛のきずなを打ち払い
ひとり故郷を旅立ちて 何故なぜに聖地を巡りしや





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十章 神譚詩が語る十種の主題

10-49・50
kshattuh kaus'âraves tasya
samvâdo 'dhyâtma-sams'ritah
yad vâ sa bhagavâms tasmai
prishthas tattvam uvâca ha
brûhi nas tad idam saumya
vidurasya viceshthitam
bandhu-tyâga-nimittam ca
yathaivâgatavân punah






マイトレーヤ(クシャールの息子)は その彼に
至高の御主みすの本質を 問われて如何に説きたるや
親族うからえにし 絶ち切りて 故郷ふるさと 捨てしその理由りゆう
そして再び帰郷かえりしは 如何なる理由わけがありたるや
おおスータ師よ 我々に ヴィドゥラにつきて語られよ」


10-51
sûta uvâca
râjn'â parîkshitâ prishtho
yad avocan mahâ-munih
tad vo 'bhidhâsye s'rinuta
râjn'ah pras'nânusâratah




≪聖仙スータ語られる≫
パリークシット国王も かつて聖なる シュカ仙に
斯くの如くに問われたり
それにこたえて説かれたる 聖仙シュカの応答おうとう
吾 今 まさに伝えなん とくと聴聞なさるべし



第十章 終了


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